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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

ARCHIVE

【大学の窓】夏休み、職場に大学生を迎えて

大学の窓




フィルム



 博物館実習で映像フィルムを語る

 世間は、お盆、夏休みというのに、ここのところそれなりに忙しくしています。
 ちょっとした仕事が入ったせいもありますが、盆明けには例年、職場の博物館で、大学生の実習を受け入れるためです。
 教員実習の博物館版と思っていただければよいでしょう。
 学芸員の資格を取るためには、大学で所定の単位を取得し、この博物館実習(館園実習)を行わなければならないのです。

 もっとも、なかなか本物の仕事をやってもらうわけにもいかないので、博物館資料を触ってもらったり、展示作業のまねごとをやってもらったり、保存処理の現場を見に行ったり、まぁ、1週間、博物館でお勉強してもらう、というものです。

 私は、自分の授業も担当するのですが、今年は全体のお世話役もやっているので、毎日学生に「○○してくださ~い」みたいな感じですね。出席を取ったり、引率したり。

 それで、今日は自分の授業がある日です。
 昨日、配布資料も作りました。内容は何かというと、私は近現代史担当なので≪博物館の近代資料≫がテーマになりますが、今回は<映像フィルム>に絞ったお話です。
 いわゆる8ミリフィルムとか16ミリフィルムとかいう、懐かしいやつですね。いまふうに言うと、動画です。

 フィルム缶

 博物館で扱う昔の映像フィルムというと、およそ昭和初期から高度成長期頃のものでしょうか。大正より古いものが出てきたら、これはちょっと貴重。なぜなら、その時期には一般市民に映像フィルムが普及していなかった時期ですから、そのフィルムは撮影所でキチンと撮った映画作品である可能性が高いからです。

 ところが、昭和に入ると、一般市民もカメラを手にすることが可能になり、動画を撮影するようになります。

 映像フィルムのサイズは、主に、8mm、9.5mm、16mm、35mm、70mmがあります。
 映画館で見る映画のフィルムは、35mmです(特殊なケースで70mm)。
 学校でかつて使った教育映画などは、少し落ちて、16mmです。
 戦後、お父さんたちが盛んに撮った一般用が、8mmです。8mmは、昭和初期からあり、コダックなどはカラーフィルムも出していました。また、16mmを一般の人が撮るケースもあったのです。


 変わったサイズ、9.5mmフィルム

 みなさんご存知ないのは、9.5mmでしょうか。
 フランスのパテ社が主に流通させていたサイズです(ちなみに「パテ」は人名です)。

 日本でお馴染みのパテといえば、家庭用の存在で、出来合いの娯楽フィルム(いわば映像ソフト)を買ってきて、小型映写機で家のふすまに映写する、みたいなイメージです。もちろん、生フィルムを買って自分で撮影することもできました。カメラも小さくて、だいたい15cm角ほどのボックス型のカメラですね。「パテ・ベビー」という商品です。

 9.5mmフィルムの見た目の特徴は、フィルムをコマ送りする穴(パーフォレーション)がフィルム中央にドーンと開いている、というもの(他のサイズのパーフォレーションはフィルムの端にあります)。
 あと、パテ社のマークはニワトリ(雄鶏)なので、フィルムの缶などにニワトリマークが付いていたら、9.5mmですね。もしかすると、ルコック社かも知れませんが(笑)

 そんな感じで、私の職場のフィルムにも、8mm、9.5mm、16mmがあり、一般の人が撮影した映像が記録されています。
 旅行とか家族とかを撮ったものが多くて、事件事故を扱ったニュース映画とは趣を異にします。当たり前のように、プライベートな映像が多いのですね。旅館で仲居さんを侍らせてお酒を飲んでいる映像とか…(笑)

 フィルム

 こんな私的映像が、どういう価値を持つのか? 実のところ私もまだ考え中なのです。
 一昨年(平成26年度)、記録映画保存センターが行った調査によると、全国341の博物館、美術館、公文書館、視聴覚ライブラリー等に、約16万本の映像フィルムが所蔵されていることが分かりました。

 16万本!

 その中心は、戦後の高度成長期に撮影されたフィルムのようですが、この数は想像を超えています。
 これは博物館やアーカイブ的な公的施設に残されている数ですから、他の官公庁や民間の会社、さらには放送局などに残っているものを調べたら、どんな数になるのか? そして、個人の家庭には!

 古い映像フィルムについて、どのように調査し、保存し、活用するかは、私たち博物館関係者にとっては、今後の大きな課題です。
 おそらく、私たちの次の世代、つまり今日来ている大学生たちの世代が真剣に取り組むことになるだろう。そんな予感がしています。

 授業が終わって。
 やはり、いまの大学生は、ほとんど8mmフィルムの存在を知らないようでした。
 昭和は遠くなりにけり、ですね。




 【参考文献】
 「全国文化施設・映画フィルム所蔵調査」(記録映画保存センター ウェブサイト)


【大学の窓】恩師の退職記念パーティーで、久しぶりに旧友と

大学の窓




記念パーティー


 30年ぶりの先輩たちとも

 日曜日、パーティーに出席してきました。

 大学でお世話になった恩師が、この3月末で退職されたので、先生とかつてのゼミ生が集う会が催されたからです。

 「催された」と受け身で書くよりも、「催した」とする方がいいかも知れません。というのも、私は幹事の一人だったからです。
 うちの先生は、古代・中世の宗教文化史が専門で、大学では37年間教鞭を執っておられました。その間、お世話になったゼミ生は二百数十名にのぼります。
 今日は、全国各地から50余名の先輩後輩が集まってくれました。

  記念パーティー

 私は大学院を出てからでも四半世紀くらい経過していますから、学部時代の先輩などでは30年ぶりに会う人もいました。やっぱりテレビの効果は大きいようで、「ブラタモリ」の出演を見てくれていたりしました(笑)
 久々の再会もあり、また年代の離れている人同士は初対面も多く、それでも同窓生のよしみで話に花が咲いていました。

 日本史の専攻という、やや特殊な? ジャンルのせいか、みなさんの仕事も、大学の先生や文化財行政に関する仕事、学芸員、そして作家など、専門性を生かして仕事をしている人が多いようです。
 先生は包容力があるので、ご自身の専門以外のテーマも許容してくださり、いろんな勉強をした学生が多いですね。私もまったく場違いな近代史だったのです。

 もちろん、まだまだお元気な先生、一層充実した研究を行われることを楽しみにしています。

 一次会、二次会、そして三次会と、幹事としては長丁場でしたが、みなさんに喜んでいただいて、ほっとしています。
 たまには、旧交を温める会もいいものですね。次は5年後かな?



【大学の窓】京田辺で史跡見学、古刹・観音寺へ

大学の窓




観音寺


 南山城の古刹へ

 非常勤で出講している(仮称)上京大学の授業では、年に2度ほど史跡見学を行っています。
 今年も、60名ほどの学生たちと、京田辺市にある観音寺を訪ねてきました。

 観音寺

 観音寺は、古代からこの地に続く名刹で、かつては大きな伽藍を持ち、大御堂という別称もあります。
 立地は、JR・近鉄の三山木駅から2.5kmほど離れ、周囲は田んぼです。ちょうど田起こしをされていました。

 観音寺
  観音寺 本堂

 観音寺

 本堂の前には蓮池が造られ、来月頃はハスの見頃のよう。
 戦後建築された本堂には、天平年間に造立された十一面観音立像(国宝)が! いつ拝しても素晴らしい尊像です。

 
 近代的な建造物も

 このような古刹なのですが、当然、現在に至るまでの歴史を持っています。
 寺院は地域のつながりの中心にもなるため、明治以降に造られた構築物もありました。

 慰霊塔

 近代の慰霊塔。
 「慰霊塔」という表現が、戦後的な響きを感じさせます。

 背面に廻ってみると、

  慰霊塔

 「忠魂碑」の文字が。
 こちらは戦前の言葉ですが、文字は埋められており、戦後「慰霊塔」として再生されたことが分かります。

 こんなプロセスを学生に質問を重ねながら考えてもらいます。

 慰霊塔

 台座上には、もともとは鎖をつないだ柵があったのですが、いま鎖はありません。
 なぜなくなったのか? 、こういう点も考えてもらったりするのです。


 日露戦争の記念碑

 この慰霊塔の脇に、少し小ぶりの石碑が立っています。

 記念碑

 苔むした、年月を感じさせる記念碑。

  記念碑
 
 碑面には、このように刻まれています。
 毎年、まずこの6字を読ませるのですが、案外読めないのがこの文字。

  記念碑

 どうでしょう?
 読めるでしょうか。

 毎年、質問してみると、ほとんどの学生が、

 「戦後」

 と読みます。
 
 でも正しくは「戦役(せんえき)」なのです。
 「役(えき)」って、日本史の授業で「前九年の役とか後三年の役とか習ったやろ」と、「役」が戦争を意味することを話します。

 そのあと、日露戦争は何年に起こった? と質問すると、学生は1904年と答えます(たいてい答えられます)。
 ところが、いじわるに「じゃあ、明治何年?」というと、だいたい答えられません(笑)

 実は、碑の下部には「明治三十七八年役」と書かれています。
 私たちは、教科書でこの戦争のことを「日露戦争」と学習したけれど、当時の人たちの多くは、明治三十七八年戦役などという表現を取っていたのです。

 でも、学生たちの受験日本史では、日露戦争であり、1904年~05年の戦争。

 明治の人たちは、たいがいは元号で年を考えていたのですから(昭和でも、そうでしたものね)、西暦は意識になかったでしょう。
 こういうズレを敏感に感じ取っていくことが、過去を考える際には重要です。
 今日のように、実際に史跡を訪ねてみると、教科書にある “翻訳” された知識ではない、生の現実が分かっていいですよね。 




 観音寺

 所在  京都府京田辺市普賢寺下大門
 拝観  400円
 交通  近鉄・JR「三山木」下車、徒歩約30分


【大学の窓】京都で歴史を学ぶ大学生の出身地 2016

大学の窓




京都御所の桜


 2016年の傾向をさぐる

 新学期が始まり、キャンパスに学生があふれる(仮称)上京大学。

 毎週1回、ここに非常勤講師として出講しています。
 日本史専攻の1回生を担当しているので、毎年学生の自己紹介を聞きながら、その出身地をリサーチしています。
 今年は、集計4年目。

 果たして、どんな傾向が ! ?

 左が今年、その右が2015年、2014年とつづき、右端が2013年の人数です。

 【北海道・東北】 4名-2名-3名-3名
  北海道 2-2-2-1
  岩手  0-0-0-1
  山形  0-0-1-0
  宮城  1-0-0-0
  福島  1-0-0-1
 【関東・甲信越】 15名-7名-7名-11名
  群馬  1-1-0-1
  栃木  0-1-1-0
  茨城  1-0-0-1
  埼玉  1-1-0-0
  千葉  2-0-0-1
  東京  1-1-1-1
  神奈川 4-0-1-1
  山梨  0-0-0-1
  新潟  0-0-1-1
  長野  1-1-2-2
  富山  0-1-0-0
  石川  1-0-0-0
  福井  3-1-1-0
 【東海】 5名-6名-9名-11名
  静岡  2-0-5-2
  岐阜  2-0-1-2
  愛知  1-5-2-6
  三重  0-1-1-1
 【関西】 23名-42名-31名-28名
  滋賀  5-2-3-2
  京都  6-7-6-6
  大阪  7-14-13-10
  奈良  1-6-1-2
  兵庫  4-11-8-8
  和歌山 0-2-0-0
 【中国・四国】 9名-9名-8名-8名
  岡山  2-0-1-2
  広島  5-4-3-2
  鳥取  0-1-1-0
  山口  0-0-1-1
  香川  1-0-0-1
  愛媛  1-1-1-1
  高知  0-3-1-1
 【九州】 9名-3名-7名-10名
  福岡  7-1-3-6
  佐賀  1-0-0-0
  大分  0-1-1-2
  長崎  0-0-0-1
  熊本  0-0-2-1
  鹿児島 0-1-1-0
  沖縄  1-0-0-0
 【海外】 1名-4名-2名-2名
  中国  0-4-2-1
  香港  1-0-0-0
  フランス 0-0-0-1

 総数は、今年が66名、昨年が73名、一昨年が67名、4年前が73名。
 西洋史専攻が多かったせいで、日本史は少なめになりました。


 初登場の県も!

 今年は、やや傾向が変わりましたね。
 増えてきていた大阪、兵庫勢が激減し、かわって関東・甲信越が増加しました。
 初めて沖縄出身の学生が誕生 ! 自己紹介によると、小さな島の生まれのようです。

 福岡勢や広島勢も多くなりました。
 広島、福岡は、活気のある個性的な街ですし、個人的にもよく行っています。夜の街で一杯、なんていうのも素敵なところで、うれしい限りですね。

 わずか4年間の統計? ですが、お分かりのように、青森、秋田、島根、徳島、宮崎が未だ0です。
 逆に今年は、宮城、石川、佐賀、沖縄、そして香港が初登場 ! !
 これで42都道府県までたどりついた勘定になります。

 今年も、合計10の研究テーマに分かれ、学生たちはグループ学習してくれます。
 ご一緒している先生も言っていましたが、やはり学生がいい発表をしてくれるのが一番うれしいもの。
 大いに期待しています! 



【大学の窓】新学期に提案する2冊の本

大学の窓




キャンパス


 提示してきた「歴史書」

 非常勤講師で行っている上京大学(仮称)の授業も、先週から始まりました。
 今年も、65名の学生たちが日本史コースに入って来て、私たちと1年間、学ぶことになります。

 毎年、2回目の授業では、教員の自己紹介とともに、学生に読んでもらう歴史研究書をリストアップしています(主に文庫、新書による)。この研究書などのことを授業では「歴史書」と呼んでいます。
 5人の教員が1人2冊ずつ、計10冊が推薦され、それをもとに授業で討論したり、レポートを書いたりします。

 私が従来取り上げてきた書物は、例えば、今和次郎『考現学入門』、木下直之『美術という見世物』、田中優子『江戸の想像力』、前田愛『都市空間のなかの文学』といったもの。
 これを見て分かるように、やっぱり私は歴史研究の世界では “アウトサイダー” なんですね(笑)

 どれも、歴史学ではないわけです。
 今和次郎(こん・わじろう)は民俗学だし、木下さんは美術史だし、田中さんや前田さんは国文学だし……。 そのうえ、それらのジャンルの中でも、ちょっとはみ出し気味の方々です(失礼)。
 それをあえて選んで、1回生=初学者に薦めるとは、やはりどうかしているのでしょうか?


 今年の2冊は?

 これらの本は、数年間、変えないことも多かったのです。
 でも、今年は2冊とも変えます。

 1冊目。

 『苦海浄土』 石牟礼道子『苦海浄土』(講談社文庫)

 石牟礼(いしむれ)道子『苦海浄土(くがいじょうど)』。
 水俣病について書いた文学です。

 これはもちろん、研究書ではありません。
 お読みいただくと分かるのですが、体裁はルポルタージュ、聞き書きのようになっています。でも、これがほんとうにルポルタージュなのか、聞き書きなのか、それすら定かに分からない、そのような問い掛けさえ退けてしまう--そんな作品世界がひろがっています。

 著者自身の言葉で言えば、「白状すればこの作品は、誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの、である」ということです。
 この作品は、ひとつの「物語」なのですが、物語と歴史はどう違うのか、どう同じなのか。事実とは何で、真実とはどのようなものなのか。そして、それらはどのような表現、文体によって書かれるのか。
 「歴史」をめぐるさまざまな問題を『苦海浄土』から考えることができます。

 2冊目。

 『超芸術トマソン』 赤瀬川原平『超芸術トマソン』
                      (ちくま文庫)

 赤瀬川原平『超芸術トマソン』。
 我ながら脈略がないですね……

 この本は、私が大学生の頃(1985年)出版されたもので、当時は大判でした。
 タイトルの「トマソン」は、プロ野球・読売巨人軍にいた助っ人外国人選手の名前。大リーグから招いたものの三振の山を築くだけの無用の長物。
 そんなトマソンと同じような、街角にある無用の存在に気付き、超芸術「トマソン」というカテゴリーを発見した著者たちの報告集です。

 記念すべきトマソン第1号として報告されたのは「純粋階段」。
 ただ上って下りるだけの階段が、この世の中に存在したのです。

 当時読んで、いまでも記憶している衝撃的名称の物件は「高田のババ・トライアングル」!
 口では説明できないので、ぜひご一読ください。

 『超芸術トマソン』には、新しい学問、あるいは研究領域が誕生する瞬間が、興奮冷めやらぬ文体で綴られています。
 学問って初めから出来上がっているものなんだ、と思い込んでいる学生たちに、ぜひ読んでみてもらいたいと思います。
 
 あわてて付け加えると、これがなぜ歴史書かと言えば、うつろいゆく都市と止まることのない人間の営みが生み出したアダ花が「トマソン」だからなのです。すなわち、都市の歴史がトマソンを生み出すのだ、と(無理やり)。
 
 蛇足ながら付言すると、「トマソン」は、著者の前歴、すなわちハイレッドセンターなどの前衛芸術活動から自ずと生み出され、その後「路上観察」につながっていく領域と言え、また並行して存在した藤森照信らの「建築探偵」の活動(=近代建築の発見)に刺激を与えたとも言えるでしょう。

 ということで。
 今年は、この2冊を薦めてみましょう。
 歴史書というには余りに変化球な本ですが、あくまでアウトサイダー的なオススメということで、ご勘弁ください。


 【お知らせ】
 まいまい京都で、5月1日に「東寺」ツアーを開催します。
 内容は、以前一度行ったものと同じです。
 詳しくは、<まいまい京都>のウェブサイトをご覧ください。