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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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絵馬堂が意外におもしろい!(5) - 鳥辺山妙見堂 -

洛東




鳥辺山妙見堂絵馬堂


 懸造の特異な絵馬堂

 清水寺にほど近い鳥辺山妙見堂は、前回紹介したように、清水寺と同じような懸造(舞台造)の絵馬堂があります。

 鳥辺野妙見堂

 花洛名勝図会より妙見堂
 「花洛名勝図会」(1862年)に見える絵馬堂
 
鳥辺山妙見堂絵馬堂

 絵馬堂は、入母屋造、桁行三間、梁間二間という小ぶりのものです。ただ、懸造になっているところが絵馬堂としては珍しいですね。
 
 この絵馬堂と、隣接する本堂には、多数の絵馬が奉納されています。


 妙見堂本堂の絵馬

 まず、本堂から。

鳥辺山妙見堂絵馬堂

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 “絵馬”らしく、馬の2題。上の絵馬は、うっすら「癸亥」の干支がうかがえ、どうも寛保3年(1743)のもののようです。駈ける2頭の馬を浮き彫りにした作品です。本堂正面に奉献されています。
 下は、貴人騎馬図、文政7年(1824)の奉納で、本堂の左側面に掲げられています。

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 本堂の裏側にも、いくつかの絵馬があります。
 こちらは中国の文人らしく描かれ、李白のように思えます。

 また、明治天皇の和歌(「御製(ぎょせい)」)も。昭和13年(1938)奉納。「支那事変漢口陥落之日」「祈願東亜平定」とあり、当時国中を沸かせた中国・漢口への侵攻(武漢三鎮占領、1938年10月)を記念した額です。
 「敷島の大和心のををしさは 事ある時ぞ現はれにける」「いつくしみあまねかりせばもろこしの 野に伏す虎もなつかざらめや」の2首が記されています。前者は日露戦争時に明治天皇が詠んだ歌で、“非常時”に具現する大和心の強さを示したもの。後者は「もろこし(唐土)」の野の虎も慈悲の心でなつく、という意です。
 明治天皇の御製集は、戦前では広く流布していたので、これらの歌も多くの人が知っているものでした。

 鳥辺山妙見堂絵馬堂


 絵馬堂の絵馬

鳥辺山妙見堂絵馬堂


 続いて絵馬堂に掲げられた絵馬です。

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 唐子遊戯図。天保13年(1842)奉納。囲碁、書、絵画などで戯れる唐子たちを描いています。

鳥辺山妙見堂絵馬堂

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 次も同じ天保13年に奉納された絵馬です。馬ですが、立体の細工になっています。細工人は柳熊治。
 このような馬像は各所の絵馬堂で見掛けますが、朽ちている作も多く、こちらも顔が欠落しています。願主は、万寿寺通のかもじや・さの。

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 もうひとつ馬です。

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 少しさかのぼって天保5年(1834)のもので、「一世一代 岡田種」と奉納者の名があります。ただし、連名で18名の名前が列記されています。その名は「○角」「登龍」「鬼王」など通常の人名ではありません。岡田種が女性名であることからしても、これらは花街の人達の名前ではないでしょうか。


 祇園新地の信仰を集める

鳥辺山妙見堂絵馬堂

 こちらの絵馬は、ずっとくだって大正6年(1917)奉献ですが、「願主 祇園新地 阪口かの子」となっています。祇園の、今でいうお茶屋さんの女将が奉納したものでしょう。
 この妙見さんが花街の信仰を集めていたことは、本堂前の古札箱からもうかがえます。

鳥辺野妙見堂

 祇園のお茶屋と芸妓の名前が連記されています。

鳥辺山妙見堂
  古札箱。右端に「祇園新地」とあり、茶屋名と芸妓名が記される

鳥辺山妙見堂
  側面

 側面には、お茶屋の名前が。四条花見小路角にある著名な一力(万亭)をはじめ、三枡屋、京井筒や、萬屋、井津や、祇井筒とあがっています。花街の人たちに信仰されていた証です。
 近世以降になると、現世利益を祈願する対象として、妙見さんなどの流行神(仏)が信心を集めました。例えば、以前取り上げた建仁寺の塔頭・禅居庵の摩利支天も、そのひとつで、花街の女性たちに崇拝されていました。 詳しくは、⇒ <イノシシの摩利支天堂は、ずっと篤い信仰を集めている>

 絵馬のひとつひとつから、人々の信仰のさまが読み取れます。


  鳥辺野妙見堂




 鳥辺山妙見堂

 所在 京都市東山区清水
 拝観 境内自由
 交通 市バス五条坂から、徒歩約10分



 【参考文献】
 「花洛名勝図会」1862年



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