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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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明治末・大正時代の建築「京都府立図書館」「京都商業会議所」の平たいフォルムをどう評価する?

建築




京都府立図書館


 写真帖『京都』で見つけた1枚

 先日、『京都』と題する写真帖を購入しました。

 『京都』扉
  『京都』扉

 昭和4年(1929)2月に京都市役所が刊行したもので、京都の官公署、社寺、名所など90枚の写真と解説で構成されています。
 そもそも、なぜ昭和4年に発行したのかは、よく分かりません。前年の秋には昭和天皇即位礼が挙行され、それに合わせて出すというのなら理解できるのですが、何らかの事情で遅れたのでしょうか。それとも、この年の4月に京都市の区の再編成が行われましたから、その“記念”なのでしょうか。

 収録された写真の多くは、京都写真聯盟に属する写真家たちが撮影したもので、よくある「公」の写真帖に比べてソフトなカットが数多く見られます。ただ、そんなに珍しい写真は含まれていない感じです。

 その中で、気になったのがこの1枚。

京都商工会議所(『京都』より)
  『京都』(1929)より

 見慣れないこの建物は、いったい何なのか。


 京都商工会議所の沿革と事務所の新築

 もちろんキャプションが付いていて「京都商工会議所」と記されています。現在も烏丸通夷川上ルにありますね。
 京都商工会議所は、明治15年(1882)10月、旧「京都商工会議所」として設立されました。初代会頭は、実業家の高木文平が就き、役員には実業家で衆議院議員をも務める浜岡光哲や、会津出身で新島八重の兄としても知られる山本覚馬らがいました。
 明治24年(1891)に京都商業会議所と改称したあと、昭和3年(1928)に京都商工会議所と称し、現在に至っています。

 写真の建物は、大正3年(1914)に建築された京都商業会議所の建物です(大正4年ともいわれる)。商業会議所の事務所が置かれたほか、商品見本陳列室や図書室なども設置していたといいます。

 この写真を見た時、すぐに「武田五一やな」と直観しました。
 こういう“平べったい”フォルムは、武田五一らしいのですね。

 調べてみると、やはり設計者は彼でした。当時、京都高等工芸学校(現在の京都工芸繊維大学)の教授。のちに京都帝大教授になり、京都の建築界に大きな影響を与えます。


 武田五一のセセッション

 武田五一の建築は数多いのですが、京都で親しまれたものといえば、私も昔からよく利用している京都府立図書館があります。明治42年(1909)の竣工で、現在はファサード保存となっています。

京都府立図書館

京都府立図書館

 セセッション(ゼツェッション、分離派)の影響を受けていて、意匠が幾何学的になっています。とりわけ、平たく、薄っぺらい印象が付きまといます。ファサード保存のせいもあるのでしょうが、ぺったりとしていますね。
 アーチの用い方や屋根の雰囲気など、京都商業会議所と似通った部分がありますが、やはり平面的な印象が共通しています。

 府立図書館と同時期のものとして、岐阜市の名和昆虫研究所記念昆虫館(特別昆虫標本室、明治40年=1907)があります。切妻の屋根を架けていますが、窓の処理なども含めて、フラットな印象は否めません。

名和昆虫記念館

 こちらは、隣接する名和昆虫博物館(大正8年=1919)。

名和昆虫記念館

 昆虫碑も武田の設計です。

 名和昆虫記念館

 時代は下って昭和3年(1928)、「御大典」の年、三条通に建てられた大阪毎日新聞京都支局。
 現在の1928ビル。

大阪毎日新聞京都支局

 そして、最晩年の京都電燈の本社ビル(現・関西電力京都支店)。昭和12年(1937)です。

旧京都電燈本社

 昭和のものはさすがに違いますけれど、明治から大正のものはセセッションらしい平たい面構えを見せています。この平面的な造形を、さてどう評価するのか?

 私には少し物足りないところがあって、武田五一の図案家的なセンスが建物を平面的(図案的)にしてしまっているのでは、という印象論を持ったりします。

 武田五一は、京都の近代建築にとっては重要な建築家ですので、改めてじっくり考えてみたいと思います。




 京都府立図書館

 所在 京都市左京区岡崎成勝寺町
 見学 外観自由 内部は図書館となっています。ご留意ください
 交通 地下鉄東山駅から徒歩約10分



 【参考文献】
 『京都』京都市役所、1929年
 石田潤一郎「生き続ける建築3 武田五一」INAX REPORT NO.169 所収



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