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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【新聞から】建て替えられる? 京都市庁舎





「約10年間で段階的に耐震改修・建て替え・新設」
市民しんぶん 2013年5月1日付


京都市庁舎


 京都市の広報誌「市民しんぶん」。

 大阪市の場合、「市政だより」といって<上から下へ>を表すタイトルですが、革新的伝統が強い京都は<自らの手で作る>新聞という位置付けで、同じ大都市でもネーミングが全然違います(内実はともかく…)。

 その「市民しんぶん」2013年5月号に、「市庁舎整備基本構想を策定」というお知らせが載りました。
 京都市役所といえば、長い間、市南部(京都駅より南側)への移転が議論されてきたわけですが、結局、現在地での整備に落ち着いたわけです。

 いったい、どう整備するのか? 図を見てください。

京都市庁舎の建替図
  「市民しんぶん」2013年5月号より

(1)昭和2年~6年(1927~31)に建築された本庁舎は、耐震補強して保存・活用する。
(2)昭和6年(1931)に建てられた西庁舎と昭和36年~49年(1961~74)に建設された北庁舎は、取り壊して建て替える。
(3)押小路通をはさんで北側の敷地に、分庁舎を新築する。

 大きくはこのような内容で、2022年までに整備を完了するということです。

 本庁舎とは、御池通に面した重々しい近代建築ですね。

京都市庁舎

 この庁舎は、昭和2年(1927)4月に建物の東側部分が完成し、続いて昭和6年(1931)8月に全館完成しました。

昭和初期の京都市庁舎(『京都名勝誌』)

 昭和3年(1928)刊の『京都名勝誌』(京都市役所)に掲載された市庁舎の写真です。
 当然、中央部と東半分しか建設されておらず、あたかも河原町通に面した東側面が正面のような趣を呈しています。

 竣工した庁舎は、鉄筋コンクリート造4階建(地下1階)で、「東洋趣味を加へたる近世式様式」(『京都名勝誌』)という、当時好まれたデザインでした。
 いわゆる“ネオ・ゴチック”ですが、細部は必ずしも西洋建築の約束事に捉われていません。

京都市庁舎

 塔屋のある中央部を見ても、アーチ窓の意匠や、筆のようなタレット、肘木に似た支えを持つ露台など、独特の意匠です。
 
 平面プランは、いわゆる「山」の字形です。
 役所のプランの変遷は、明治後期に「ロ」の字から「日」の字へと発展し、「日」の一部を省略した「山」の字形が生まれます。「山」の頂点には、議場が設けられています。

 設計は、京都市営繕課(中野進一)。武田五一が顧問として携わったといいます。

 昔から、なんだか重たい建物だなぁ、という印象を持っていました。装飾もくどい感じがしないでもありません。けれども、耐震補強をしてでも保存されるということは、喜ぶべきことでしょう。

 その一方で残念なのが、西庁舎の建て替えです。
 こちらも、竣工は昭和6年(1931)。4階部分は、戦後の増築になります。

京都市庁舎

 いわば本庁舎の附けたり建物なので、取り壊しということに決めたのでしょう。
 しかし、デザインや色彩は、右側の本庁舎に較べて、素軽く明るく、昭和初期らしい軽快な建物です。
 窓の上下に取り付けられた水平ラインが、時代の息吹きを感じさせます。

京都市庁舎

 壁面は、もちろんスクラッチ・タイル。昭和初期らしいです。茶褐色の濃い色ではなく、少し明るい色合いのもの。
 そして、その下部には、龍山石という黄色っぽく柔らかい素材を用いています。

京都市庁舎

 少し角ばった印象が玉にキズですけれど、とても好感が持てます。

 こんな建物を壊すことこそ、惜しいのです。

 本庁舎を「歴史的・文化的価値を有する」と評価するのなら、こちらも同じ。
 きっちり整備して、ちゃんと見せれば、実にいい味のある建物です。

 いつの時代も「日陰ものは割を食うのね」と思わせる話で、やるせない。
 建物に対する≪愛≫の欠如。

 さよならの時間まで、みんなで壁を撫でて、別れを惜しむべし、です。


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