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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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東寺小子房の勅使門から「近代和風」が見えてくる





東寺小子房勅使門


 勅使門はいつ出来たか?

 先に東寺小子房(こしぼう)について書きました。今回は、その勅使門を見てみたいと思います。

 東寺小子房は、昭和9年(1934)の建築で、東寺の中では新しい建築といえます。

 その東に建つ勅使門ですが、『東寺の建造物』によると、小子房が建築された際に、かつてあった場所から「南方に移動」したと記されています。とすれば、明治16年(1883)の客殿などの建設時に一緒に建てられたか、大正4年(1915)の同修理の際に出来たものの可能性があります。ただ、明治28年(1895)の「東寺境内一覧図」には、当所の門は切妻造の簡素な門に描かれています。
 ただ、『京都府の近代和風建築』では、形状、装飾などから、小子房と同時期に新築された可能性があると説いています(昭和9年築となります)。

 勅使門は、あとに述べる細部の意匠からみても、大正時代に造られたか、昭和9年頃に完成したか、いずれかと捉えることができそうです。


 華麗な装飾をまとう門

東寺小子房勅使門

 小子房勅使門は、檜皮葺の唐門で、東に向いて建てられています。
 全景写真では、この門の特徴はよく分かりませんが、近寄って見ると少し驚かされます。

東寺小子房勅使門

 扉です。
 皇族方が通られる時などに限り開く門らしく、大きな菊が透かし彫りされています。

東寺小子房勅使門

 近寄ってみると、大きな菊のまわりには、吹寄せの菱格子に、中心に菊らしき文様を付けています。
 切り絵のような細密さに瞠目です。

 また、扉の左右の柱にも彫刻があります。

 東寺小子房勅使門

 葡萄(ぶどう)唐草文。少しエキゾチックな趣きです。
 
東寺小子房勅使門

 こちらは扉の下部。若葉のような唐草文ですね。
 

 大瓶束と蟇股

 見上げると、上部も装飾に満ちています。
 大瓶束(たいへいづか)と蟇股(かえるまた)。

東寺小子房勅使門

 下の方が蟇股。菊の彫物ですが、花びらなどが細かく彫られていてリアルです。一方、唐草状になった茎と葉は図様化された趣きです。

 上が大瓶束。寸が短く、虹梁(水平の材)を噛んでいる部分(結綿)に、ハート形の猪目(いのめ)など細かな飾りが施されています。左右には唐草になったヒレがあり、ここにも猪目が見えますね。

 いずれも華美な装飾なのですが、大瓶束の短小なフォルムが目を引きます。

 実は、このような装飾はこの門の専売特許ではありません。
 少しさかのぼって、明治32年(1899)に竣工した旧武徳殿(京都市武道センター内)も似たような特徴を備えています。

武徳殿
 武徳殿(重文)の大瓶束と蟇股

 大瓶束の形、結綿の装飾、ヒレ、そして蟇股の植物文様。細かい意匠は異なっているのですが、濃厚に同じ雰囲気が漂っています。

 武徳殿
 旧武徳殿(重文、設計・松室重光)


 「近代和風建築」を見る

 武徳殿は、京都出身の建築家・松室重光が大日本武徳会から依頼され、その演武場として設計しました。明治32年当時、松室は京都府技師でした。
 上の全景写真は松室が設計した部分ですが、実は、クローズアップ写真の蟇股と大瓶束は背後の車寄に付いていて、その部分は、玉座とあわせて、大正2年(1913)に増築されたものです。

武徳殿
 武徳殿の増築部(背面、大正2年増築)

 松室は、すでに明治37年(1904)に京都を去っています。
 増築部は、当時の京都府技師だった亀岡末吉と同技手・安井楢次郎が手掛けたと考えられています。
 亀岡と安井は、京都府の社寺課に勤務し、寺社の修復などに当たっていた技術者でした。二人とも明治40年(1907)に府に入っています。大正2年時点で、同課の技術職の責任者は亀岡で、安井はその部下でした。

 明治後期から大正、そして昭和初期にかけて、京都の寺社建築には府の技師が大きく関与していました。

東寺小子房勅使門
 東寺小子房勅使門

 東寺小子房も、府技師だった安間立雄が設計しました。
 残念ながら勅使門の設計が、彼かどうかは判然としないのですが、その華麗な装飾を見ると、当時の府の技術者がかかわった可能性が濃いといえるでしょう。

 そして彼らこそ、京都の寺社建築に、これまでとは違った華やかな「近代和風」のスタイルを吹き込んでいった立役者でした。
 その中心人物が、亀岡末吉です。

 次回から、数回にわたって、亀岡末吉とその「近代和風建築」について振り返ってみましょう。




 東寺 小子房

 所在 京都市南区九条町
 拝観 境内自由  小子房勅使門は外観見学可
 交通 近鉄電車東寺駅から徒歩約5分

 旧武徳殿(重文)

 所在 京都市左京区聖護院円頓美町 京都市武道センター内
 見学 自由
 交通 京都市バス熊野神社前から徒歩約3分



 【参考文献】
 『東寺の建造物』東寺(教王護国寺)宝物殿、1995年
 『京都府の近代和風建築』京都府教育委員会、2009年
 川島智生『近代奈良の建築家 岩崎平太郎の仕事』淡交社、2011年 



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コメント

まいまいツアーに参加したものです

本日のまいまい京都ツアーに参加したものです。
私は寺社に全く興味がなかったのですが
友達の付き添いで参加しました。
・・・が、二時間お話を聞けば聞くほど
本当に楽しくて、あっという間でした。

私も小子坊勅使門が大好きになりました。
こちらのページを趣味人倶楽部というサイトで
私の日記に引用させていただきました。
お断りもなく、勝手に申し訳ありません。
趣味人倶楽部は、旅をメインにいろいろな方が
交流されています。

私のように、興味がなかったものの
今後、門をじっくり見るようになるかと
思います。

ランチもご一緒したかったのですが
今後また機会がございましたら
是非、またツアーに参加させてください。


Re: まいまいツアーに参加したものです

 hinataさま

 今朝は、暑い中ご参加いただき、ありがとうございました。
 東寺は、仏像と五重塔で有名ですが、それ以外にも魅力的なものがいっぱいあります。
 そんな魅力を伝えようと2時間お話させていただきましたが、伝わったでしょうか。

 ブログの引用もありがとうございます。
 自由にリンクを張っていただいて結構ですので、今後ともご利用ください。

 また、みなさんにお話する機会もあると思います。
 まいまい京都のホームページや、私のブログをご覧いただければ幸いです。
 これからもよろしくお願い致します!

      船越幹央

ありがとうございました

船越さま

ご挨拶もなしに、引用させていただいたのに
温かいお言葉をかけて頂き、感謝しております。

実は、私はこれが「まいまい京都」の初参加で
すごく緊張していたのですが

船越さんの熱意あるご説明に、本当に
心が奪われるといいますか・・・

私にとって、なんの変哲もなかった石や門が
とても興味のあるものに変わっていきました。

歴史には疎いのですが、デザイン等
みているだけで、わくわくします。
船越さんのように、きになるところは【至近距離】で
観察していこうと思っています。

初めてのミニツアーが船越さんガイドのツアーで
本当に良かったです。

今月はあと2つ、申し込んでおります。
知らない方の中に参加するのは、不安でしたが
今日参加してみて、船越さんのおかげで、
とても楽しみになりました。

暑い中、ありがとうございました。
まだまだ残暑も厳しいですが、ご自愛ください。

Re: ありがとうございました

 hinataさま

 まいまい京都は、参加者のみなさんも、とてもアットホームな感じですし、ガイドさんも個性的な方ぞろいです。
 見学を通して共通の話題が出来るので、昼食時にも話が盛り上がっていました。
 残り2つのツアーも楽しんでください!

     船越幹央
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