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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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二条城の釘隠と “のし” の関係は?





花熨斗形釘隠


 二の丸御殿で飾り金具を見る

 前回は、久々に二条城を訪問し、ソテツについて考えた話を紹介しました。

 今回は、二の丸御殿を彩る飾り金具についての話です。

 東大手門
  二条城 東大手門

 ところで、建築を見るときに一番頭を悩ませるのは、意匠なんですよね。
 例えば、お寺などでも、建物の各所にいろんな彫刻がしてあるでしょう。浮彫りとか透かし彫りとか。
 で、それが植物、お花だったとして、何の植物、何の花なのか、なかなか分からないのですね。
 
 まぁ、ボタン(牡丹)くらいだったら、すぐわかるんです、桃山時代の人は好きですし。
 でも、例えば、ブドウみたいに見えるけど、実はオモト(万年青)だった、といったケースがあるんです。こういうものになると、よほど慎重に調べないといけないし、知識の積み重ねも必要になってきます。
 
 私は、天沼俊一先生の『日本建築細部変遷小図録』などを参照して勉強させてもらうのですが、何でも網羅されているわけではありません。
 特に、今回問題にする金物(金具)については、ほとんど取り上げられていないんですね。困ったものです(笑)


 豪華すぎる釘隠

 建築の金物というと、釘や鎹(かすがい)といった実用的なものと、飾り金具に大別されます。
 飾り金具には、扉に付けられる八双(はっそう)金物や、長押や扉に付けられる釘隠(くぎかくし)などがあります。

 特に釘隠は、六葉(ろくよう)といった六角形のものや、門扉でよく見る丸っこい饅頭(まんじゅう)金物などが著名です。
 ところが、二条城の二の丸御殿で見た釘隠は、そのレベルをはるかに超えたものだったのです。

 二の丸御殿
  二の丸御殿(国宝)

 二の丸御殿の最初の建物、遠侍(とおざむらい)の長押に打たれていた釘隠は、三つ葉葵の入った饅頭金物を基本にしたものでした。これでも、よく見る六葉の釘隠などに比べると凝っています。
 ところが、先に進んで、大広間や黒書院に入ると、さらに独特の形をした大型の釘隠が登場したのです。それは驚きの豪華な釘隠でした。

 二の丸御殿は撮影禁止ですが、特別公開の東大手門内(撮影OK)で、同じ釘隠が陳列されていたので、それを撮影させてもらいました。ガラスが反射して見づらいですが、こんなものです。

 花熨斗形釘隠

 花熨斗形釘隠

 細部意匠が微妙に違うのですが、大きな形は同じです。

 こういった意匠こそ、どういうものなのか分からない、困りものなのです。

 しかし、ありがたいことに、二条城ではこの金物について「花熨斗形釘隠」と説明してくれています。
 別のものを調べると、花熨斗桐鳳凰文釘隠とあります。

 桐鳳凰文(きりほうおうもん)は、いいんです。植物の桐(きり)と架空の鳥・鳳凰(ほうおう)を組み合わせた図柄ということです。
 写真では見づらいですが、中央下部に、鳳凰と桐を取り合わせた意匠があるのです。

 問題は、花熨斗(はなのし)です。
 花熨斗って何だ?


 花熨斗とは?

 まず、花は分かりますよね。
 釘隠の左右の端に、花の意匠がありますね。たぶん、牡丹でしょう。
 
 問題は、熨斗(のし)。

 そもそも、熨斗とは?

  熨斗袋 熨斗袋

 みなさんもお使いになる熨斗袋。祝儀を入れるものですね。この右上に付いているのが、熨斗なのです。

   熨斗 熨斗(折り熨斗)

 熨斗は、もともとは縁起のよいアワビが用いられていましたが、現在では上のような紅白の紙を折った折り熨斗が一般的です。

 とすると、花熨斗とは、これと関係があるのか……

 もう一度、先ほどの釘隠を見てみましょう。

 花熨斗形釘隠

 分かりますか?

 そう、熨斗の形が隠れていますよね、横向きに。

 花熨斗形釘隠

 ちょっと落書きしてみました。
 実は、牡丹の花が熨斗紙に包まれているデザインだったのですね!

 ほんとうに、忠実に熨斗で花を包んだ意匠になっていて、それを横倒しにして左右に配するという、得も言われぬ発想です。
 もっとも、着物の世界では、この花熨斗の柄が用いられることがあるので、江戸時代の人にはお馴染みの意匠だったのかも知れません。


 紋の世界にも

 ほかにも、熨斗がないかなと思って見回してみると、書棚にある紋帳『紋之泉』に多数発見できました!

 紋の泉 『紋之泉』

 なんと、熨斗を用いた紋が56種類も収録されています。

 例えば、こんなもの。

 熨斗輪桔梗 熨斗輪桔梗

 熨斗輪桔梗(のしわききょう)。
 熨斗で作った輪の中に、桔梗を入れたものです。
 実は、熨斗紋では、この熨斗輪を使ったものが大多数。『紋之泉』では、56種中、45種類が熨斗輪かそれに類するもの(結熨斗)です。

 ほかには……

 違い折熨斗 違い折熨斗

 違い折熨斗。
 2つの折り熨斗をクロスさせた、わかりやすい図様ですね。

 違い熨斗 違い熨斗

 違い熨斗。
 輪にせずにクロスにしています。

 熨斗桐 熨斗桐

 これは、カッコいい!
 桐紋を熨斗で作っているんですね。まったく見たことない、超珍しそうな紋ですが、ステキですね。

 それにしても、奥深いですねぇ。
 私は、二の丸御殿で、この花熨斗の意味を理解するのに、随分長い時間をかけてしまいました……

 江戸時代の武士たちは、御殿でこの飾り金具を見て、果たしてその意匠を理解できたのでしょうか?




 二条城 二の丸御殿(国宝)
 
 所在  京都市中京区二条通堀川西入
 見学  有料 大人600円ほか
 交通  地下鉄「二条城前」下車、すぐ



 【参考文献】
 濱島正士『寺社建築の鑑賞基礎知識』至文堂、1992年
 吉野竹次郎『紋之泉』洛東書院、1926年


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二条城の金物修復

 ブログお読みいただき、ありがとうございます。
 
 二条城は、東大手門や唐門など修復により、金物も綺麗によみがえりました。
 金物の修復は、おおむね次のような手順をとるようです。

 まず、洗浄作業。これには、酢の一種である梅酢などを使い、汚れを落とすそうです。
 次に、金物に漆を塗ります。そして、その上に金箔を張り付けていきます。この作業で、輝きを取り戻した金物になります。
 黒く見える部分には、墨を差し、これで完成です。

 伝統的な手法で、丁寧に修復が施されます。
 そう思えば、二条城の見学もいっそうありがたみが増しますね。

 今後とも、ご愛読お願い申し上げます。
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