【新聞から】卒業式の式辞に思う
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京都大学の卒業式
京都を代表する大学と言えば、やはり京都大学。
そのため、京大の卒業式は新聞記事やテレビニュースになります。今年(2017年)も、3月24日に行われた卒業式は、京都新聞に報道されていました。
記事やニュースの内容は、毎年似通っていて、奇妙な扮装をした卒業生がいること! と、総長がどういう式辞を述べたかということです。
今年は、朴槿恵前大統領や安倍総理に扮した学生がいたそうです。トランプ大統領はいなかったのですかね(笑)
京大の現在の総長は、山極寿一氏です。専門は霊長類学。京大の伝統ある学問分野のひとつですね。
新聞には、山極総長が、英国のブレグジットやトランプ大統領誕生など、激動する世界情勢について触れ、オルテガ・イ・ガセットの「生はすべて、いやでも応でも自分自身を弁明しなければならない」という言葉を引いて、生きる力を養うことの重要性を述べた、と書かれています。
また、式辞の最後は、「京都大学は「地球社会の調和ある共存」を達成すべき大きなテーマに掲げているが、現代はその調和が崩れ、多様な考えを持つ人々の共存が危うい時代だ。世界のあちこちでこの課題に出合うと思うが、大学での経験を生かし、果敢に向き合ってほしい」と締めくくったそうです。
実は、このくだりは昨年度の卒業式でも述べられていたようで、山極総長にとっては学生にぜひ伝えたいことなのでしょう。
激動する世界のなかで
京大の卒業式が行われた前々夜も、英国の国会議事堂前でテロリストによる凶行があり、数名の犠牲者が出たばかりでした。
山極総長の言う「地球社会の調和ある共存」をどうすれば実現できるのか、私たちは日々重い課題を突き付けられています。
昨年の式辞で、山極総長は、自分の学生時代は1970年代で、大阪で日本万国博覧会が開催されたと述べられています。
その万博のテーマが、「人類の進歩と調和」でした。
私は、15年ほど前、つまり万博から30年後に、万博を振り返る展覧会を開催しました。
そのとき感じたのは、人類は確かに「進歩」したけれど、その「調和」は達成されたのだろうか? という思いでした。
万博で夢見た未来社会は、多くの面で実際のものとなりましたが、世界の国家、民族、宗教などの対立は止むことを知りません。いまからすると、三波春夫が唄った「世界の国からこんにちは」という歌が、牧歌的にさえ聞こえます。
関西で歴史学を学んでいる私にとって、今日世界に拡がっている貧困や移民といった問題は、これまで、そして現在も、私たちが暮らす地域が抱えている課題です。
一昨日、英国でテロを起こした男性は、いわゆるホーム・グロウン・テロリスト(自国内で生まれ育ってテロリストになった人)だと言われています。欧州における異なる宗教や民族の対立、社会の分断というテーマは、私たちが従前から取り組み続けてきたものであり、現在も考えなければならない課題です。
最近、自分のなかで、それらのことがひとつに結び付いて来て、欧州や米国で起こっていることは “対岸の火事” とは片付けられないものになっています。
私自身も日々勉強ですが、若い学生や社会人たちにも、過去に経験されて来たさまざまなことと、現在起っているさまざまなことを伝えていかなければならないという思いを強くしています。
3月から、4月へ。
この世界のなかで「調和ある共存」へ向けての模索と格闘が続きそうです。
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