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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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社会学について考える本 - 古市憲寿『古市くん、社会学を学び直しなさい !!』-

京都本




  古市くん表紙 古市憲寿『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』光文社新書


 テレビでよく見る古市くんの本

 今年は、精を出して通勤電車中で読書をしています。
 一番困ることは、読むための本がないこと!
 正確に言うと、読んでおもしろそうな本がなかなか見付からないことです。

 とは言え、最近はインターネットで本探しが出来、実際に読んだ人のレビューも見られます。そのため、以前に比べて、おもしろい本が見付けやすくなりました。これは思ってもみなかった事実で、いきなり書店に行って本探しをするより、インターネットで下調べしてから本屋さんで選ぶ方が、当りの確率は高まっています。

 それでも、下調べが出来ないまま書店に行ってしまうことも多く、そんなときは買う本が決まらず呻吟することになります。

 今週も、準備なしに本屋さんに行き、困ったなぁ~、となってしまいました。
 そのとき目に飛び込んできた本が、

  古市憲寿『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』 

 でした。

 タイトルだけ見ると、キワモノっぽい。
 そして、著者が古市憲寿という、テレビなどでよく見掛ける若い人です。印象としても、毀誉褒貶があるような論者ですよね。
 それでも、なかみをペラペラ繰ってみて、これ買うか、と思いました。


 社会学って、なんだ ! ? 

 私は知らなかったのですが、この古市憲寿という人は、社会学が専攻で、なおかつ東大の大学院生だったのです! 年齢も31歳のようで、お若いですね。
 その古市くんが、12人の著名な社会学者と対談したのが本書です。2人ほどの例外を除いて、みんな東大出身か東大の先生という、なんともいえない顔ぶれなんですが……

 ご愛嬌はさておくとして、結構おもしろいんですね、この本が。
 古市くんは、12人の社会学者に、まず「社会学って、なんですか」と問い掛けます。
 その答えがさまざまで、楽しいんですね。

*小熊英二先生(本書では、みんな「○○先生」と書いてある)
「現在の日本社会の文脈では『評論家』でしょうね」

*上野千鶴子先生
「ふつうは『社会と個人についての学問』だと言われているけど、もう少し厳密に定義するなら、『人と人とのあいだに起きる現象について研究する学問』ですね」

*宮台真司先生
「いちばん短く答えれば、『僕たちのコミュニケーションを浸している、非自然的な--自然的ではない--前提の、総体を研究する学問』ということになります」

*大澤真幸先生
「うんと抽象的に定義すれば、社会学は『社会の自己意識』です」

*橋爪大三郎先生
「社会学はフワフワしている、とよく言われる。どうしてフワフワしているかと言うと、「社会学とは何ですか」という問いよりも、もっと本質的な「社会とは何ですか」という問いを、飛ばしているから」

 分かったような、分からないような……という感じですね(笑)
 本書の対談は、月刊誌に連載されたものでした。
 それで、10番目に登場した吉川徹先生は、それまでの対談を読んで「びっくりするぐらい、皆さん同じポイントを押さえていますね」と言って、こうまとめています。

 大きく言うと二つあって、まずは社会学は、政治学や法学、経済学など他の社会科学がカバーしていない残余の領域を研究する学問だということ。
 もう一つは、誰もが日常的に知っている「世の中」を研究対象として、そこに生活者の目線で見えているのとは違う事実が隠れていることを説明するのが社会学者の仕事だということです。(235ページ)


 こういうふうにまとめるところが、学者らしくていいですねぇ。吉川先生は、大阪大学の先生ですね。私も『学歴分断社会』(ちくま新書)、読みました。

「社会学って、なんですか?」という単純でズバリな質問は、概説書や事典には出て来るけれど、個々の学者の答えは、案外聞けません。教室では、よくあるQ&Aかも知れないけれど。

 こういうところを読むだけでも、本書は楽しめます。

 古市くん中身
  先生の肖像も、イラストです。


 パブリック社会学とは?

 どの先生との問答も、それなりにおもしろいのですが、興味という点では「パブリック社会学」ですかね。
 これは、鈴木謙介先生との対話に出て来ます。
 
 私は、寡聞にして「パブリック社会学」という言葉を聞いたことがありませんでした。過去に「パブリック考古学」というのは聞いたことがあるのですが。
 では、これはどういったものなのでしょうか。

 そのパブリック社会学とはどういうものかというと、[米国の社会学者マイケル・ブラウォイは]一般の人々に認知される実践であるというんです。現実の社会をうまく説明できる理論や経験的な研究を用いて、それを講義やメディア露出という形でアウトプットするわけですね。 
 アウトプットの受け手になるのは、学生や地域社会、宗教教団を含む「パブリック」な領域だと言います。(192ページ) 

 
 乱暴にまとめると、社会学の実社会への還元ということです。それ自体は誰も反対しないのですが、問題は<誰がパブリック社会学を担うのか>という問題でした。
 
 社会学の研究者自身がその役割を担うべきなのか、それとも「パブリック社会学の専門家」が担うべきなのか?
 後者は、自分では研究せずに他人の研究結果の社会還元だけをする人、ということになります。それっていいのかな、という意見もありそうですね。
 しかし、鈴木先生は、それは必要、と明言します。
 その3つの理由は……

(1)もともと社会学は、社会に自分たちの知識を投げ返すことが求められる学問だということ。

(2)厳密な研究をするためには、大きな時間とお金が必要。大規模な調査を行ったりするためには、予算配分の潤沢な大学(東大、京大など)に属さないと無理。
「多くの予算を必要とする厳密な研究をしなければ社会学とはいえない、というのは、あまりに権威主義的な発想だし、学生と一緒に近隣を調査して、地域の課題を発見・解決したり、学生や地元の人々に自分たちへの理解が深まるような知識を提供する、まさに「パブリック社会学」と言うべき活動をしたりしている人がたくさんいる。社会学の価値は、海外のジャーナルに何本論文が掲載されたかといった指標だけで測られるようなものではないと思う」(194ページ)。

(3)現在は、研究の幅はどんどん広がっているので、自分の研究分野を追究しながら、あらゆる分野を平均的に知っているというのは無理だということ。おおざっぱでもよいから、社会学全体の研究成果を把握しないと、細分化、タコツボ化は収まらない。

 古市くんが「社会学の全体像を見渡したうえで、世の中に説明するような仕事が必要になってくるわけですね」とまとめます。

 この部分は、本書の中では異質感があるんですよね。
 特に(2)の部分です。
 私のように博物館に勤務して、いつも市民の方々と接していると、地元の人たちが地域について学習したりするのは当然だと思うのですけれど。

 あぁ、そうか! 鈴木先生、東大出身でもなく東大の先生でもないんですよ ! ! (関学こと、関西学院大学の先生です)

 私は、こういった発想、賛成です。
 よく考えると、このブログも、パブリック歴史学? なんですよね!

 いやいや、「よく考えると」というのは照れ隠しで(笑)、最初からパブリック歴史学なんです。
 学問が社会とどのように接点を持つのか、というのは私にとっては大きな課題。
 特に、歴史的に物事を考えるというのはどういうことか、を多くの方に伝えたいと考えています。

 もちろん、これ以外にもいろいろな話題満載の本書。
『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』、読みやすい対談形式のうえ、なかなか興味深い本なので、ご一読を。




 書 名 『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』
 著 者  古市憲寿
 刊行者  光文社(光文社新書844)
 刊行年  2016年


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