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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【新聞から】インキュベーション施設になった岩元禄の電話局舎





旧西陣電話局


 「西陣産業創造會舘」になった電話局

 京都新聞や烏丸経済新聞などによると、上京区の西陣IT路地が、2016年10月、西陣産業創造會舘としてリニューアルオープンしたそうです。

 同館のウェブサイトによると、この施設は「NPO法人京都西陣町家スタジオが、京都府、NTT西日本と連携して運営する」もので、「起業を目指す人や創業間もないベンチャー企業、フリーランスで働く小規模事業主」らを支援するインキュベーションセンターだということです。

 スモールオフィスやコワーキングスペース、ミーティングルームなどを提供するほか、ビジネスマッチングや専門家による相談、イベントなどを実施します。

 なぜこの記事が目に留まったかというと、その建物に関心があるからでした。

 旧京都中央電話局西陣分局。

 かつての電話局がインキュベーションセンターになった--ということなのですが、この旧電話局の建物がふつうじゃないんですね。

 トルソ

 電話局の壁面とは思えない、女性のトルソ。踊り子?

 そして、

  ライオン

 あんな上には、ライオンの顔も!

 これが、中立売通堀川東入ルの静かな一画にあるのですから、少し驚きでしょう。


 夭折の建築家・岩元禄の名作

 この建物は、大正10年(1921)に建築されました。いまから100年近く前です。
 造ったのは、岩元禄(1893-1922)という建築家ですが、彼は30歳を前にして亡くなりました。最初に設計したのが、この建物。ついで東京・青山電話局、そして箱根の旅館を設計。その3つだけが実作で、現存するのはこの建物のみです。

  旧西陣電話局 ファサード(北側)

 細部も素晴らしいですが、全体のフォルムも印象的です。いわゆる表現派ですね。ファサードに、放物線を大胆に取り入れています。

 旧西陣電話局 

 側面も、楕円の付け柱が並んでいて、迫力があります。

  旧西陣電話局 東側面

 私が好きなのは、ここを見上げたところ。

 見上げ

 これ、女性なんですよ、よく見ると。

 どういうポーズなのか、文化庁の説明には「東面2階庇(ひさし)下を踊り子のレリーフ・パネルで飾る」(国指定文化財等データベース)と書いているのですけれど、そんな言葉では済まないような、ヘンな体勢です。

 でも、すごいですね、これは!

 中川理氏は、「裸婦が全面に描かれた正面のデザインは、当時としては驚くべきものであった。この建物は、西洋の様式に則って設計するのではなく、個人の自由な表現として初めてわが国に現れた建築だったと評価されるものである」と述べています。

 戦前、郵便や電信電話を所管した官庁が、逓信(ていしん)省です。
 逓信建築には、デザイン的にすぐれたもの、前衛的なものが、たくさんありました。京都にも、西陣の電話局と兄弟分にあたる京都中央電話局上分局や、中央電話局(旧新風館)が現存しています。いずれも、逓信建築の雄・吉田鉄郎の設計です。
 多くの都市で、すぐれた逓信建築が取り壊される中、これだけ残されている京都は幸せと言うべきでしょう。

 この西陣の旧電話局は、10年前に重要文化財に指定されたので、取り壊される心配はありません。
 百年の時を刻んだ建築は、おそらく若い起業家たちのセンスに受け入れられるのではないでしょうか。真新しいビルよりも、むしろ歴史のある建物の方が創造力を刺激するものです。

 また、施設名にもあるように、この場所は「西陣」の一画です。西陣の中心部からみると、東の方になりますが、京都の産業界を牽引した伝統ある機業地なのです。
 そこに、新たな産業を生み出す施設がリニューアルオープンするのは、とてもよいことですね。
 私も、近年個人的に西陣への思いが強くなっているので、まことに慶賀すべきことだと思います。

 京都における歴史的建造物の生かし方として、よいケースになるといいですね。




 西陣産業創造會舘

 所在  京都市上京区油小路通中立売下ル甲斐守町
 見学  インキュベーション施設として利用可
 交通  市バス「堀川中立売」下車、徒歩約3分
 


 【参考文献】
 京都建築倶楽部編『モダンシティー KYOTO』淡交社、1989年
 石田潤一郎ほか『近代建築史』昭和堂、1998年
 中川理『京都 近代の記憶』思文閣出版、2015年


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