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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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瀟洒な禅宗様の仏殿 - 普済寺 -






普済寺


 丹波国船井郡の古寺

 丹波国の南の方、「南丹」と呼ばれる地域は、かつては亀山藩と園部藩が主に支配していました。亀山は現在の亀岡のこと。園部は、いまは南丹市になっています。
 今回訪れたのは船井郡に属する地域で、この郡の多くは園部藩領でしたが、普済寺のある若森村は亀山藩領でした。普済寺が曹洞宗になったのは、寛永11年(1634)、近江の膳所から転封された菅沼定芳により改宗されたためといいます。

 私の祖父は船井郡の出身で、わが家は曹洞宗です。南丹の地は足利氏ゆかりの武家の土地柄ですので禅宗が多かったのですが、特に園部藩は曹洞宗を普及させたので、園部藩領では圧倒的に曹洞宗が大勢を占めています。
 京都市内では曹洞宗の寺院は少数ですが、このあたりの歴史を知ると、わが家が曹洞宗になっていることもうなずけます。


 反った屋根

普済寺

 南丹市園部町の若森集落。稲穂の海。
 国道372号から離れて、村の旧道を進むと、府立農芸高校へ上がる道があります。そこを折れると、すぐに小さな門が見えてきます。

普済寺

 普済寺の本堂はこの門の向かい側の石段を登って行くのですが、重要文化財の仏殿は門内の低くなったところに建っており、おおむね東を向いています。
 桁行三間、梁間三間で、実長は5.75m四方といいますから、写真で見る通りのこぢんまりとした建物です。なんともいえない全体の姿に心を奪われるのですが、入母屋造の屋根の反りにも目が向きます。

普済寺

 軒裏にのぞく垂木も、端に向かって放射状に広がる扇垂木です。これは禅宗様独特の美しさを醸し出します。

 いまひとつの反りが、棟の反り。棟瓦が弓型にかなり反っています。

普済寺

 これについて、かつて天沼俊一博士は、「『大棟』は反りの過ぎてゐるといふよりは、寧ろ反らし過ぎてゐる様で」と述べており(『日本建築』)、昭和7年(1932)の修理による影響と推測されています。そのあたりのことは調べてみないとよくわかりませんが、天沼博士の感覚では行き過ぎと感じたのでしょう。
 ちなみに、大正時代中頃のこの建物の写真をあげておきます。

大正時代の普済寺仏殿

 大正11年(1922)刊『日本古建築菁華』下冊に掲載された写真です。
 当時は、茅葺で棟にも瓦は置かれていません。やはり屋根は、修理の際、当初の形に戻すという意味で、かなり変更されたということでしょう。


 禅宗様の仏殿

普済寺

 近寄って眺めてみると、まず軒下の組物がぎっしりと詰まっています。これを詰組といい、禅宗様の特徴です。和様ですと、組物と組物の間に蟇股とか間斗束などが入るのですが、これは異なります。
 さらに、その下には波形の連子がはまっています。これを弓欄間などと呼びます。その下には、尖った花頭窓。正面と背面、両側面に1か所ずつ付いた扉は桟唐戸です。いずれも禅宗様らしい形になっていますね。

普済寺 側面(妻側)

普済寺 組物の詳細(二手先)

 この仏殿は観音堂とも呼ばれ、南北朝時代の延文2年(1357)に建てられています。
 典型的な禅宗様の仏殿として、大正4年(1915)に国宝(旧国宝)に指定され、昭和7年(1932)に解体修理されました。
 この地域の文化の高さを思わせる瀟洒な建物で、とても好感が持てます。ぜひ一度、ご覧になってみてください。



 普済寺仏殿(重要文化財)

 *所在:京都府南丹市園部町若森庄気谷
 *拝観:自由(堂内不可)
 *駐車場:あり(無料)



 【参考文献】
 『京都の社寺建築(乙訓・北桑・南丹編)』京都府文化財保護基金、1980年
 天沼俊一『日本建築』弘文堂書房、1942年
 岩井武俊『日本古建築菁華 下冊』便利堂コロタイプ印刷所、1922年
 山岸常人『塔と仏堂の旅 寺院建築から歴史を読む』朝日選書772、2005年



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