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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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京都御所が通年公開されるという報道、今年度中にも実現?





京都御所


 今年も春の一般公開

 今年(2016年)も、4月6日から10日まで、京都御所が一般公開を行っています。
 私も気が向いた年には行くのですが、今春はパスということに。

 京都市上京区にある、あのインペリアルな公園スペースは国が管理していて、正式には「京都御苑」と呼んでいます。そのなかの一画を特に「京都御所」と言っていますが、ここはかつての内裏(だいり)で、紫宸殿(ししいでん)や清涼殿(せいりょうでん)などがあるところ。ふだんは塀に囲まれていて入れませんが、申し込んで見学することが出来、春秋には予約なしで見られる一般公開があります。

 京都御所
  一般公開時の紫宸殿


 ついに通年公開?
 
 この京都御所が、一年を通して予約なしで見られるようになる! というニュースが、先月報じられました。
 3月25日(2016年)の政府の発表で、15の国の施設や行事の一般開放が拡大されるというものです。

 15の施設と行事は、次の通りです。

 ・京都御所
 ・京都迎賓館
 ・仙洞御所・桂離宮・修学院離宮(以上、京都市)
 ・造幣局(大阪市)
 ・皇居
 ・皇居・東御苑
 ・迎賓館赤坂離宮
 ・首相官邸
 ・日本銀行
 ・大本営地下壕跡(以上、東京都)
 ・御料牧場(栃木県)
 ・鴨場(千葉県・埼玉県)
 ・首都圏外郭放水路(埼玉県)
 ・スーパーカミオカンデ(岐阜県)
 ・信任状奉呈式の馬車列(皇居など)

 京都御所、仙洞御所、京都迎賓館は、いずれも京都御苑内にあります。

 御所については、土日も含む通年公開を前提に、まず試験的に公開を行い、2016年度中に一般公開をめざすと言います。
 また、迎賓館は大型連休中(4月28日~5月9日)にテストして、7月下旬から一般公開を始める予定だそうです。

 京都御所

 このプランは、政府が推進する「明日の日本を支える観光ビジョン構想」の一環なのだそうです。
 そんなビジョン聞いたことないよね、という方がほとんどでしょう。

 でも、2015年11月から会議が開催されていて、メンバーは安倍首相を議長、菅官房長官と石井国交大臣を副議長とし、財務、地方創生、一億総活躍、総務、法務、外務、厚労、経産の各大臣が含まれます。
 それに加えて、有識者として、著名な宿泊施設である加賀屋女将・小田真弓氏や鶴雅グループ代表・大西雅之氏、交通事業者からJR九州会長・唐池恒二氏、ピーチアビエーション代表取締役CEO・井上慎一氏、石井兄弟社(旅行出版社)社長・石井至氏、文化財公開について発言が多い小西美術工藝社長・デービット・アトキンソン氏、そして大阪で旅行会社を経営する李容淑氏(関西国際大学客員教授)が入っています。
 注意すべきは、次に述べるように、文化財行政にもかかわる会議であるのに、文部科学大臣あるいは文化庁長官が入っておらず、その関係の専門家も加わっていないことです。

 関係資料や議論の内容は、政府ウェブサイトに公開されています。
 今回の京都御所等の公開拡大は、公的施設を「観光資源として最大限活用」して、観光産業の振興をはかるという施策です。

 日本の文化財は素材等の関係から、光などに弱いものも多く、公開には慎重さが必要です。現在の京都御所は、江戸後期の安政年間(1855年)に再建されたものですが、見学すれば分かるように、彩色の障壁画などデリケートな文化財も含まれています。毎日、公開して光や風にさらすということが適切かどうか、注意深く考えねばなりません。

 会議の資料には、「『文化財』を、『保存優先』から観光客目線での『理解促進』、そして『活用』へ」という文言があります。会議メンバーの持論を反映しているようです。
 残念なことに、保存優先から活用促進へシフトするような考え方は、目先のもうけのために後世に伝えるべき国民的財産を食いつぶすことにつながりかねません。オーバーユースの問題は、常に留意すべきです。
 もちろん、文化財を分かりやすく解説することは大切ですが、そのことと保存の問題は分けて考えねばなりません。

 また、「文化財修理・整備の拡充と美装化」を進めるとしています。
 「観光資源としての価値を高める美装化」って、なんでしょうか?
 文化財は、適切に修復する過程で、作られた当時の形に復元することがあります。その結果、建物や仏像などで、失われていた彩色が復元され、見た目が美しくなることがあります。会議で言う「美装化」とは、このことなのでしょうか。同じことなら、美装化という言葉は不適切である気がします。また、経年による文化財の変化も、そこに “風格が出てきた” “味わいがある” と捉える感性もあります。
 さらに、「投資リターンを見据えた」修復等である旨も記されています。これは、修復等にかけた経費を観光収入などで取り戻すという考え方で、文化財保護において正当な考え方であるか疑問が残ります。

 現在、修理等を必要としている文化財は、全国津々浦々たくさんあります。基本的には、修理等が促進されることは、ありがたいことと言えます。
 けれども、観光資源になる文化財を優先的に修理する(そこにお金を使う)ということになれば、少々話は違います。
 世の中には、観光客は来ないけれども、傷んでいる文化財を所有されている寺社等はたくさんあります。そういうところの文化財保存は後回し、あるいは置去りになる、という心配はないのでしょうか。

 京都御所
  京都御所 建礼門を望む

 この「明日の日本を支える観光ビジョン構想」、いろいろ考えさせられます。
 国で行われる施策は、いずれ地方自治体にもおりてきます。地方で観光資源となる文化財の公開・利用促進が検討されていくことになるでしょう。地方は国ほどお金もないし、人材もありません。さて、どうするのか?

 “京都御所の通年公開”は、御所や桂離宮、修学院離宮がいつでも見られていいなぁ、と思う話に聞こえますが、その実、問題をはらんでいそうで手放しで喜べません。
 

  御所の桜




 京都御所

 所在  京都市上京区京都御苑
 見学  御苑は自由(御所は要申込み)
 交通  地下鉄「今出川」下車、徒歩約5分



 【参考文献】
 「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(首相官邸ウェブサイト)


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