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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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京都府庁のそばにある今話題の建物とは?





京都府警本部


 一躍脚光を浴びるこの建物は?

 突然ですが、上の写真の建物、ご存知でしょうか?

 京都市民でも、あまり記憶にないような……
 見るからに、戦前の建築と思われるのですが、いったいどこにあるのか。

 ヒントは、こちらです。

  京都府庁

 先月(2016年3月)、文化庁の京都への移転が決定しました。
 数年内に、京都市内へやってくるのです。


 文化庁移転の場所は…

 受け入れへの課題はいろいろあるようですが、そのひとつは移転場所。
 当初、京都側は、交通至便のJR京都駅近辺(小学校跡地など4か所)を候補地にあげていました。それに対し、国は冷たい反応で、2015年12月に京都を訪れた馳浩文科相は「文化庁の立地と何の関係があるのか」(京都新聞)と言ったとか。「がっかり」「熱意が全く伝わってこない」(毎日新聞)と評したとも言われます。

 それをうけて、京都御所の付近など7か所を追加候補に選びました。

 全11か所は、次の通りです。

 【御所付近】
 1 府警本部本館
 2 旧府婦人相談所など
 3 府軽量検査所

 【二条城付近】
 4 市上下水道局旧丸太町営業所など

 【五条通付近】
 5 旧堀川署
 6 府中小企業会館
 
 【京都駅付近】
 7 旧植柳小学校
 8 旧安寧小学校
 9 旧陶化小学校
 10 崇仁地域

 【東山方面】
  11 市上下水道局東山営業所

 たくさんあげましたね。
 馳大臣によると「文化と歴史の伝統ある場所」(京都新聞)がよかったのだそうです。まぁ、歴史や文化はどこにでもあるわけですから、ほんとうはどこを選んでもよいのですが、 “言葉の綾” ということにしておきましょう。

 数多出た候補地のなかで、いま有力視されているのが、この建物なのです。

 京都府警本部
  京都府警本部本館

 京都府警本部です。
 いま、ここに行ってみると、現役の庁舎として使用されています。しかし、この庁舎を使うのも、あと数年。
 この北側、かつて同本部中立売庁舎があった場所(下長者町通新町西入ル)に新築されるのです。2019年度に完成予定と言います。
 そんなわけで、この建物は空き家なるはず。文化庁が入っても、支障がないわけです。


 昭和初期の瀟洒なモダン建築

 府警本部本館は、新聞などによると、都道府県警の本部庁舎としては現存最古のものだそうです。
 昭和2年(1927)に起工され、昭和4年(1929)8月に竣工しました。築87年ということになります。
 設計は京都府営繕課、施工は清水組(現・清水建設)。
 鉄筋コンクリート造3階建ですが、地下も1階あるそうです。

 私の好みからすると、美しく思える建物に属するのですが、世間的には取り上げられることが少ないようです。
 大通りに面しているわけでもなく、そんなに知られていないせいでしょうか。それとも、名のある建築家の設計でもないため、忘れられているのでしょうか。

 京都府警本部

 新町通(東)側の正面。
 壁面には、クリーム色っぽい細めのタイルが貼り詰められています。
 この時代(昭和ヒトケタ)だと、スクラッチタイルを貼るという方法もあります。すると、色目も茶褐色などになり、もっと暗い印象になります。
 ここでは明るく軽快に仕上げたわけですね。

 3階の窓は、すべてアーチ窓になっています。

京都府警本部

 中央の上部。
 一番上の部分は、ノコギリ状の帯・ロンバルディアバンドの装飾です。
 三連のアーチ窓にも飾りを付け、華やかさを演出しています。
 全体にロマネスクの意匠で、南欧的な雰囲気を醸し出していますね。

 ロンバルディアバンドは、城郭のイメージを想起させます。警察本部なのですから、端から端まで通して付けてもよいところです。ところが、そうせずに中央部だけに付けたところに、設計者の品のよさが感じられます。

 京都府警本部


 府庁側にも見どころが

 この庁舎の西には、京都府庁があります。

 京都府庁
  京都府庁(旧本館)

 というよりも、府警本部が府庁の敷地内に建っているという方が正しいでしょう。

 府庁舎は、明治37年(1904)の建築で、ルネサンス様式。この優美な建物と、府警本部も釣り合いを取ったに違いなく、エレガントな建築です。

 京都府警本部

 西側です。
 真ん中が突出していないので、少々さびしい印象です。しかし、石貼りの玄関アーチが目を引きます。

 京都府警本部

 京都府警本部

 府庁に面した側なので、豪華に造ったのでしょうか。
 上部にも細かい装飾が施してあります。

 京都府警本部

 四連のアーチ窓の間に、コリント式の付け柱が取り付けられ、ひときわ華やかです。
 窓まわりの装飾も、植物文様をアレンジしたものでしょうか、彩りを添えています。
 このあたりは、東側とは違い、府庁を意識したデザイン性が感じられます。

 どうでしょう、ここに文化庁が入るのでしょうか。
 それとも……

 しばらくすると、その答えも聞けそうですね。




 京都府警察本部本館

 所在  京都市上京区下立売通釜座東入ル藪ノ内町
 見学  外観自由
 交通  地下鉄「丸太町」下車、徒歩約8分



 【参考文献】
 『近代建築画譜』同刊行会、1936年(復刻・不二出版、2007年)


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コメント

文化庁のしごと

船越様

花の季節となりましたね。
花粉症など患われて無いことを心からお祈りします。

省庁が東京の一極集中から地方へ分散されることとなりましたが、これは実験的な試みでしょうか・・。「やはり在東京の方が便利だった」となり、元に戻るのでは十分な検討があったとは言えなくなりますね。

馳大臣の求める「文化と歴史の伝統ある場所」とは、具体的には何を注すのでしょうか。
文中の「歴史や文化はどこにでもあるわけですから」は吹き出してしまいました。おっしゃる通りですね。ましてや京都でしたら至る所に存在するのですから。

どこにあるかではなく、どのようなしごとをするかが重要だと思いますが、海外から来られる関係者の方々に「日本の美」を感じて頂ける場所が必要ということでしょうか。

ただ、「歴史と伝統のある場所」は不便もあります。美と快適さは時には相反しますことを、京都人から学んで頂きたいと感じました。

No title

具体的には何を注す ⇒ 誤り 正しくは「指す」ですね。失礼致しました。

いつもありがとうございます

ご愛読ありがとうございます。
幸い花粉症ではないので、この季節も変りなく過ごしています。

それにしても、文化庁が京都に来たらどうなるんでしょうか。いま働いている人たちには、どう変化するか想像できないでしょうね。
京都の人は「お上」に対してはクールというか、さらっと受け流すという感じでしょうから、先の馳大臣みたいな「上から目線」で発言すると、ちょっと大変でしょう。東京とは、その辺の風土が違います。エラそぶる人は嫌われますから。

せっかく初めて移転するのですから、実りある成果をあげてほしいものですね。

日本の為にも良いことでしょう。


省庁の地方移転は、基本的に良いことだと思います。

例えば、昔の京都の日本画壇は東京と肩を並べていたのに、官展が東京中心に開催されるようになり、その後身の日展の本部や、他の美術団体の本部の多くが東京にあるので、地方在住の作家は高い美術品専用の運賃を支払って出品しなければならず、美術団体の会合も東京で開かれるので、「それなら東京に住もう」と思うでしょう。

勿論、文化庁が京都に移転しても、直ぐには日本の文化芸術に地殻変動は生じないでしょうが、時の経過と共にゆっくりと地殻変動が進行すると思います。

しかし、実際に京都が文化芸術の発信基地となり、関東方面に住んでいた作家が京都近辺に移り住むようになれば、現在でも京都の高い地価が更に高くなり、『何時か京都に住みたい』と願っている私の夢が更に遠のいてしまいます(笑)

>京都の人は「お上」に対してはクールというか、さらっと受け流すという感じでしょうから、先の馳大臣みたいな「上から目線」で発言すると、ちょっと大変でしょう。

>東京とは、その辺の風土が違います。エラそぶる人は嫌われますから。

仰る通りで、文化庁の役人も「京都では仕事がやりにくい」と思っているでしょうが、省庁の独断で物事が運ばない方が日本国民の為になる筈です。

ご愛読ありがとうございます

いつもありがとうございます。

文化庁が京都へ移転してどういう効果があるのか、これから期待と不安が入り混じるところですね。
かつて同庁におられた寺脇研氏は、議員などにくどくど説明する無駄な時間が減ってよいのかも、と言われています。
一方で、京都と東京の移動時間などはばかにならないでしょう。
京都という場所に移って、意識変革が起きるのか、しばらくは注視というところでしょう。

移る建物が決まれば、市民の関心も高まるかも知れませんね。


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