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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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高塀の家を訪ねて - 京のしもたや(その1)-





富小路の家


 意外に多かった高塀の家

 前々回、京都には塀をめぐらした家が少ないのでは? という記事を書きました。

 記事は、こちら! ⇒ <塀のある家は、京都の感覚では余り見掛けない家?>

 大阪で “塀のある長屋” を見たことに端を発し、京都でも塀付き住宅があるのか関心がわいてきたのです。
 気になると確認せずにはおられず、先日、御池あたりに買物にいくついでに、丸太町通-四条通間の塀付き住宅について、調べてみました。買物と言いながら、2、3時間も住宅巡りしてしまいました(笑)

 結果から言うと、京都の中心部(今回は中京区)には、意外に高い塀をめぐらした “しもたや” が多いことが分かりました。
 「しもたや」とは、「仕舞屋」とも書き、商売を辞めた(仕舞った)家という原義です。
 京都や大阪では、商売をやっている家は、街路に面して店を構えています。ところが、商売を辞めて引っ込むとなると、ちょっとした塀を立てて、道路から遮断されたところに住まったりするわけです。

 綾小路の家
  大塀造(高塀造)の例

 このような塀のある造りを大塀造(だいべいづくり)とか高塀造(たかべいづくり)とか言っています。
 古いたとえですが、“粋な黒塀 見越しの松に” という流行歌謡「お富さん」のような家なわけで、別宅風なイメージもあります。

 実際に家を見る前に、辞典の定義を引用しておきましょう。

 大塀造り
 主として京阪地方の町屋において、主屋は表通りより引っ込めて建て、表通り沿いには塀を建て回したもの。塀の高さ、構造には関係ないが、普通は人間の背より高い板塀とする。塀には、しばしば覗きのために釣り出格子を設ける。明治以後行われる。(『建築大辞典 第2版』)


 文中の「釣り出格子(つりでごうし)」は、上の写真に見える塀に付けられた出窓のことを指しています。

 今回は、中京区の大塀造の家レポート第1回です!


 共通するスタイル

 丸太町あたりから歩き始め、もちろん隈なく東へ西へと歩いたわけではないのですが、まず出くわしたお邸がこちらです。

 二条の家
  二条の家

 典型的な大塀造の家。
 古くから二条通でご商売をしている方のお宅のようで、お店のビルの裏手に建っています。

 南寄りに門を設け、北に7間の塀が続きます。
 塀からは、2本の見越しの松がのぞいています。

 二条の家

 門は格子戸で、塀より切り下げた瓦葺の庇(ひさし)が付いています。
 格子戸の前には、立派な踏石を置いています。これはなんでしょうか、鞍馬石ですかね?

 二条の家

 また、格子戸の右方は、板壁のように見える隠し扉が付いています。これはよく考えられていますね。

 北側に続く高塀。

 二条の家

 一番下の立ち上がりは石(花崗岩)を置き、その上が杉板。黒塀らしい雰囲気を出しています。
 板塀の上は聚楽壁になっていて、その上に瓦を乗せます。

 つまり、石、板、土壁という3段構成になっています。これが高塀の基本スタイル。3つの比率は変化するのですが、だいたいこのバリエーションが多いのです。
 もっとも例外もありますので、それは次に見てみましょう。


 犬矢来のある黒塀

 二条通から御池通を南へ渡り、姉小路通にやってきました。
 目立った黒塀のお邸が。

 姉小路の家
  姉小路の家

 塀の内には、東隣にある美術商さんの茶室「好日庵」があるのだそうです。写真で拝見すると、お庭も素敵そうですね。
 昭和16年(1941)の建築というので、約70年前ということになります。

 姉小路の家

 東端に門を開け、塀は5間あります。
 こちらの塀は、板塀で、土壁の部分はありません。
 ただ、下部には犬矢来(いぬやらい)を置き、塀の上には目隠しを付けています。
 このような上部の目隠しは、しばしば使われるようです。

 姉小路の家


 町家に付随する塀

 三条通を過ぎ、六角通まで歩いてきました。
 通りの南に、こんな家があります。

 六角南側の家
  六角南の家

 よく見ると、道路に面した左の町家と、塀のある右側の家とは、同じお宅のようです。
 このような<町家+大塀造>のパターンもあることが分かってきました。
 おそらく、最初は全部町家だったのを、のちに一部だけ大塀造の仕舞屋に改造したのでしょう。

 六角南側の家

 こちらのお宅の場合、改造も比較的新しそう。
 塀の前に駐車スペースを設け、低めの塀の上に目隠しを付けて、のぞいている樹木は楓です。他を見ても、松以外に楓というパターンもあるようです。

 そして、振り向くと、北側にも同様のお宅があります。

 六角北側の家
  六角北の家

 左側に町家、右が高塀の家。
 同じスタイルです。

 こちらは、高塀の中が日本料理店になっています。かつて仕舞屋として作った住まいが、いま店舗に改装されるとは面白いですね。

 六角北側の家

 下は、西側(左)から見た写真。

 六角北側の家
 
 左端に格子戸があるのが分かりますか?
 この戸の内には、なにがあるのか ??

 六角北側の家

 実は路地が続いていて、奥に4軒ばかりのお宅があるようなのです。
 今回、ぶらぶら歩いていて、このパターンもよく見掛けました。京都の場合、碁盤目状の町並みですので、各グリッドの内側には空閑地が出来やすいのですね。それを有効活用するために、通りに面したところには商家を建て、裏には貸家などを造るわけです。
 ここは戸が付いていて中に入れないので、どんな住宅が建っているかは不明でした。


 高塀の集中する富小路へ

 今度は、南北の通り、富小路通を進みます。
 旧生祥小学校の前に、こんな家が建っています。

 富小路の家
  富小路の家

 現在は小料理屋さんになっている、この邸。
 左右のお宅はつながっておらず、別々の家のようです。

 富小路の家

 塀の南端に、潜りのような入口があって、塀は4間あります。塀の上部に窓が開けてあるのが特徴です。

 富小路の家

 窓に5本ほど、まばらに格子がありますが、これは竹です。
 このスタイルの窓を付ける例も、結構あります。

 ところで、こちらの家は隣が空地になってしまったので、奥まで見渡せるのです。

 富小路の家

 一番奥に蔵が見えますが、あのラインまでが奥行きです。
 “うなぎの寝床” と言うにも、余りに奥深い京町家ですね。

 建物の背面も見えるのですが、写真は憚られるので、壁の裏側だけ見ておきましょう。

  富小路の家

 こんなわけで、二条通から順々に見てきました。
 もちろん、ご紹介していないもの、見落としているものもありますから、意外に多くの大塀造の家があるわけです。
 そして、富小路通には、この造りのお宅が多数残っています。次回は、そんな建物を見て行きましょう。




 富小路の家

 所在  京都市中京区富小路通六角下る骨屋之町
 見学  飲食店として営業
 交通  阪急電車「河原町」下車、徒歩約10分



 【参考文献】
 『建築大辞典 第2版』彰国社、1993年


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コメント

ストリートビュー

出張仕事が長引き、阪急梅田駅を出て行く嵐山行きの直通特急を見て「京都に行きたいなぁ」と思いつつ、11月中は一度も京都に行かれませんでした。

今日からは自宅で仕事や用事をしていますが、観光気分で外出する余裕が無く、京都散策も先の楽しみに取って置きます。

姉小路通は今年の「京の七夕」開催中に寺町通から堀川通まで歩きましたが途中の風景は撮影せず、別の日に三条通を歩いた時は途中の風景も撮影しましたが、塀のある家は撮っていませんでした。

京都の街並みをストリートビューで見ても、普通の町屋に比べ塀のある家はなかなか見付かりませんが、ご紹介のように富小路通には塀のある家が結構ありますね。

富小路の仕舞屋

お読みいただき、ありがとうございます。

紅葉のシーズンは終わってしまいましたが、冬の京都もまたいいもの。禅寺の森閑とした雰囲気など素敵ですね。「京の冬の旅」の特別公開もあります。
お仕事が一段落つかれたら、京都に遊びに来てください。

富小路通は、なぜか仕舞屋風の家が多いんです。その理由は今のところ不明で、追々考えてゆきたいと思っています。
今日、「その2」をアップしますので、ご覧いただければありがたいです。

    船越

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