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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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塀のある家は、京都の感覚では余り見掛けない家?





丸太町の家


 塀に囲まれた家

 最近、大阪・阿倍野区で建物見学会をやりました。
 そこで私の心に引っ掛かったのは、“塀のある長屋” でした。

 私も子供の頃から長屋暮らしでしたが、京都の長屋で塀があるものを見た記憶がありません。
 ところが、大阪では割合にそういうタイプがあるようで、研究者の中には「塀型」長屋と言っている方さえあります。

 その長屋は、木造2階建、1階の表に玄関と台所が並んでおり、奥に居室がある、2階も2間ある、という私が育った家と同じ形なのです。
 ところが、道路に面して高い塀があり、そこに門が穿たれている。塀と家の間には、小さな坪庭がある ーー この、塀がある、というところが異なっていて、少し珍しく感じたのでした。

 半世紀を越えた私の人生の中で(ちょっと大袈裟ですね)、「塀のある家」は、余り見掛けないものでした。
 ところが、テレビで「サザエさん」や「ドラえもん」、「ちびまる子ちゃん」などを見ていると、どれも家の周りに塀がめぐっているのです。ご近所も同じで、道路は塀と塀に挟まれています。その中を、カツオやのび太やまるちゃんが歩いて行くわけです。これは、私の感覚からすると、随分違っている、あるいは新しく思われる雰囲気でした。


 道路に面する京都の町家

 京都の街中では、家は基本的に道路に面して建っています。

 長江家住宅
  長江家住宅 (中京区)

 このように、道路ぎわに家が建っています。
 京都だけでなく、大阪もこのスタイルでした。

 京阪の街中では、古くは、家の表で商売をやり、奥が住まいになっているという住宅が多かったのです。
 このうち、商いスペースと住宅スペースが別棟になっているものを表家造(おもてやづくり)と言いました。この場合、庭は道路側ではなく、一番奥にあるのでした。

 このような商売と住まいが一体化しているものを併用住宅と呼んでいます。
 昔は、この併用住宅が多かったのです。

 併用住宅の逆、つまり住まいだけの家を専用住宅と言います。
 時代が新しくなるにつれて、専用住宅が増えてきました。

 長屋は、庶民的な専用住宅というわけです。
 一方、お医者さんの家とか、お金持ちの別宅とか、そういう専用住宅を俗に「しもたや」と言ったわけです。漢字で書くと仕舞屋、商売を仕舞った(やめた)家という原義です。


 京の仕舞屋

 そう思うと、京都の街中でも結構仕舞屋を見掛けます。

 例えば、こんなお宅。

 綾小路の家
  綾小路の家

 高い塀があり、門が設けられている家。
 烏丸綾小路あたりのお宅ですが、このあたりとしては異彩を放っていて、通るたびに目に留まります。

 綾小路の家

 塀の右手(東)に、塀より切り下げた庇(ひさし)付きの門があります。また、塀の中ほどには格子を嵌めた出窓が設けられており、“なかはどうなっているのか?”と考えさせられます。
 塀自体は、下部は板張りですが、上の方には壁を塗っています。
 そして、見越しの松。

 私は、古い人間なので、こういうお宅を見ると必ず「お富さん」を思い出してしまうのです。春日八郎さんの歌ですね。
 「粋な黒塀 見越しの松に 仇(あだ)な姿の洗い髪」という歌い出し。昭和29年(1954)に発表されたという、芝居の玄冶店(げんやだな、源氏店)をモチーフにした流行歌。
 このイメージなんですね、高い塀のある家は。

 丸太町の家
  丸太町の家

 こちらは、少し小ぶりの家。
 丸太町あたりにあります。ここは三本木という場所。かつては花街でもあり、幕末の志士たちが行き交ったこともあるのでしょう。
 そういう土地柄にふさわしいお宅です。

 丸太町の家

 こちらも、右端に1間だけ塀があり、塀より切り下げた門を穿ち、左側に2間分の塀を建てています。塀からは背の高い見越しの松がのぞき、前栽(せんざい)の存在をうかがわせます。そして、北端には2階建の洋館を造ります。
 このような洋館を付けるパターンもよく見掛けます。
 隣が医院でしたが、この洋館も元は医院棟だったのでしょうか?


 郊外の家

 少し郊外、といっても下鴨ですが、こんなお宅もあります。

 下鴨の家
  下鴨の家

 下鴨神社の南あたり。
 こちらは、北側に蔵を置いています。

 下鴨の家

 塀の下に、犬矢来(いぬやらい)を付けています。これも京都らしいと言いましょうか。
 門のところには、白い軒灯が見えますね。この感じも、らしいですね。

 今回見てきたような、高い塀を持つ住宅を大塀造(だいべいづくり)とか高塀造(たかべいづくり)とか言うそうです。
 代表的な仕舞屋のスタイルですね。

 思うに、サザエさん的な塀に囲まれた家は、武家住宅の流れをくんでいるのでしょう。少し関東的という感じもします。一方、京都の塀のある家は、同じ塀でも高塀で、サザエさんとは随分異なった印象です。
 家と塀について考えるのも、ちょっとおもしろそうです。




 丸太町の家

 所在  京都市上京区俵屋町
 見学  個人宅ですので、ご配慮ください
 交通  京阪電車「神宮丸太町」下車、徒歩約5分



 【参考文献】
 寺内信『大阪の長屋』INAXアルバム、1996年
 西山卯三『すまい考今学』彰国社、1989年


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