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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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西陣の職人仕事と懐かしい日々の暮らしを収めた一冊 - 神山洋一『写真集 西陣 美を織る暮らし』 -

京都本




  『写真集 西陣』 『写真集 西陣 美を織る暮らし』(大月書店)


 久しぶりに三月書房

 ぶらぶらと寺町通を歩いていたら、三月書房の前を通りかかりました。
 せっかくなので、久しぶりに入ってみます。

 三月書房

 ここは学生時代、よく来ていた本屋さん。
 店主は宍戸さんと言い、書店の主でありながら詩集も出しているという方でした。パイプで煙草を吸う姿が堂に入っていました。
 思想書から詩集まで、かなりマイナーな本も含めて、店主が選んだ個性的な本が古い木の棚にぎっしりと並んでいました。フーリエの『四運動の理論』などという難解な本を買ったこともありますが、そのような訳書を置いているのもここだけだったでしょう。
 
 時が経って宍戸さんは亡くなられ、今では奥さんによく似た息子さんが店に座っておられます。当時はお若かったのですが、いま学生が見れば、初老の店主というふうに感じるでしょう。
 
 今日も久しぶりに店内をひと通り見て、足立巻一『やちまた』などという懐かしい本が置かれていて、それもすでに文庫本になっており、そのずっと上の方には『井筒俊彦全集』があったりして、実に面白いのです。
 ヴィクトリア朝の歴史など英国の本があったと思ったら、その横に英語学習法の本が並んでいる……。通常の書店の配列とは全く違った、直感的で合理的な並べ方なのでした。

 そんな中で、私が見付けた本が、神山洋一『写真集 西陣 美を織る暮らし』(大月書店)。
 
 写真集だけれど、相応の解説が加えられており、西陣の理解につながります。


 写真で知る西陣の機業

現在、この地域は3キロ四方におよび、約20万人もの人が細い路地をはさんだ、密集した町家で職住一体の生活を営んでいる。そのうち約半数の人がなんらかのかたちで、織物関係の仕事にかかわっているといわれているが、正確な人数は把握しきれない。織屋をはじめ、賃機[ちんばた]、糸染、整経、図案など、30種にも及ぶ織物関連業者が混在しながら軒を並べ、有機的に結びついている。

「織屋とできものは大きくなるとつぶれる」という諺があるほど、西陣織は零細・家内工業的性格が強い。俗に「うなぎの寝床」と呼ばれている奥深い町家の瓦屋根の下には、紅殻格子でさえぎられた薄暗く湿気を含んだ工場がある。そこには、激しい機音のなかで美しい織物を織りなすため、ただそのために身を粉にして働く多くの人たちがいる。(3-4ページ)


 西陣の町並み 西陣の町並み

 この本の特徴は、西陣織の作業工程を写真で示している点にあります。
 その写真をひと目見て理解できるのは、西陣織の工程が多様な作業から成り立っており、それが分業化されて、熟練した職人によって担われている、ということです。
 長い文章を読まなくても、写真を見るだけでそれが理解できます。

 本書によると、西陣織の工程は30にも及び、大きく分けると、<企画・製紋><原料準備><機準備><製織><仕上げ>の5工程からなるそうです。
 例えば、原料準備とは、糸をより合わせる撚糸(ねんし)や、糸染めのこと。機織りに入るずっと前に、このような作業が不可欠なのでした。

 西陣で織られるものは工程がきわめて多様である。それぞれの工程に精細きわまりない技術が要求される。だから工程の一つ一つが分業化されている。西陣はこの分業によって美しいシンフォニーを奏でる世界なのだと、しみじみと思う。(95-96ページ)

 あたかも織物のような複雑な工程が、この西陣という地域で全て行われているのでした。言ってみれば、西陣全体がひとつの大きな工場のようなものなのです。
 西陣について平易に理解できる本は、実はなかなかないのですが、本書はその一冊と言えるでしょう。

 出版されたのは、すでに20年以上前の1993年です。しかし、収められている写真は、おそらくもっと古い印象を与え、私の子供時代の雰囲気も漂っています。著者によると、1975年から1992年の間に撮影されたものだそうで、納得です。
 それにしても、上半身裸やシャツ一枚で仕事をしている職人さんが、実に多いですね。昔を思い出すとともに、時代を感じさせます。
 懐かしい風俗、習慣、行事を写した写真も数多く収録されており、暖かいまなざしが感じられる書物です。

 著者の神山氏は、西陣の織屋さんの生まれだそうです。
 おじいさんは、滋賀県の「貧農家庭」の出身で、幼くして西陣の丁稚となり、この地で働いてきたと言います。
 そんなルーツへの思いもこもった写真集ですね。



 
 書 名  『写真集 西陣 美を織る暮らし』
 著 者  神山洋一
 出版社  大月書店
 出版年  1993年


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コメント

昔の仕事

京都には古書店が多く、ショーウインドーに陳列されている古書を見るだけでも興味が湧きますが、「お足」が無いので、店内に入る勇気が無く、古書の購入は専らネットに頼っています。

仕事帰りに、大阪梅田の阪急カッパ横丁の古書店街へ脚が向くことがあり、他人事ながら「経営が成り立っているのかな?」と思う程、どの店も閑散としていますが、古書店とはそういうものなのでしょうか?

若い頃、織ネームのデザインをしていて、福井県の工場で原寸大デザインから織ネームが織り上がる迄の工程を見学したことがありますが、西陣織ともなれば、その工程が更に複雑になるようですね。

私の頃は面相筆とポスターカラーでラベルの細かい文字や唐草模様なども描き、織機にセットする紋紙も手動で機械を操作して1枚づつパンチ穴を穿っていましたが、今はそのような職人も居ないでしょう。

懐かしいですね

いつもありがとうございます。

私の子供の頃にも、近所で紋紙を使っているところがあり、あの長いパンチ穴の空いた紙を不思議に眺めていた記憶があります。今ではもうコンピュータで制御したりするのでしょうか。

古書店には、気が向いたら入って、店内をひと通り見て回りますが、ほとんど買いません(笑) 寺町通の其中堂と向いの文栄堂は仏教書専門ですが、10回に1回も買いません(苦笑) ただ、こんな本もあるのかと、見ているだけです。
かっぱ横丁も、最近行ってませんが、どの書店さんも大学・図書館等へ「公用」で納入されていたり、高価な品も買う愛書家がいたりで、結構需要もあるのではないでしょうか。何より、仕入れ値と売り値の差が大きいのがこの世界で、それなりに経営も成り立つのだと思います。

引き続き、ご愛読お願い申し上げます。

    船越



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