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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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ノーベル賞の季節に、ノーベル賞受賞者のこの1冊

京都本




  『「大発見」の思考法』 『「大発見」の思考法』文春新書


 いまだに山中ファン !?

 今年も、ノーベル賞の季節になりました。

 昨日、医学生理学賞と思いきや、今日は物理学賞。もはや、日本人がノーベル賞を受賞したからといって、驚く人もいないでしょう。
 去年、青色LED、今年はニュートリノ。ニュースで説明を聞いても、なかなかよく分かりませんね。

 そんな受賞の報が飛び込む中で、私が手に取った本は、『「大発見」の思考法』。
 ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授と益川敏英教授の対談集です。

 実は、私は山中先生のファン。
 あの爽やかな風貌や語り口を尊敬しているのですが、自ら「人間万事塞翁が馬」と言われる波乱万丈の人生にも惹き付けられます。
 残念ながら実際にお目に掛かる機会はないのですが、講演録やインタビューはかなり読んでいます。

 今日改めて旧著を手に取ってみた次第です。

 京都大学
  お二人が勤める/勤めた京都大学


 研究の推進力は、驚き!

 この対談集、2011年の刊行なのです。

 2011年?

 山中先生がノーベル賞を受賞されたのは、2012年ですよね。
 つまり、受賞以前からこんな対談が出るほど注目されていました。インターネット上でも、2010年くらいになると、かなりのインタビュー記事を見ることが出来ます。2009年に、米・ラスカー賞を受賞されてマスコミ等にもクローズアップされ始めたのです。

 山中先生は、最初、整形外科の臨床医になるべく某国立病院に勤務しますが、手術が下手くそで「ジャマナカ」と呼ばれ、医者になることを断念。大阪市立大学大学院に入学します。
 院に入って最初の実験で、研究の道にのめり込むようになった驚きの出来事に遭遇するのです。

 指導教授の仮説のもと、犬を使って実験を行っていたのですが、仮説がはずれて、実験に使っていた犬の血圧が急降下。瀕死の状態に陥ります。この予想だにしない結果に、山中先生は「すごいことが起こった!」と、大興奮したのでした。

 そうなんです。後から考えると、本当にささやかな実験だったんですが、あの時の興奮は今でも忘れられません。もしも、あの実験で予想通りの結果だったり、何も起こらなかったりしたら、私は今ほど研究の虜になっていなかったかも知れません。あの興奮が忘れられないから、私はずっといまだに研究を続けているんじゃないかと思いますね。その意味で私は非常にラッキーだったと思います。(93ページ)

 やはり、研究には “知的な興奮” が大切ですね。驚きや喜びは、研究活動にとって、最も大きな推進力です。


 直線的な人生なんて

 山中先生が重視する言葉に、米・グラッドストーン研究所への留学中、上司から言われた “V W" があります。
 Vision & Hard Work.

 ビジョンとハードワーク。

これは、その方の愛車がフォルクスワーゲン(V W)だったという、洒落っぽいモットーなのだそう(笑)

 山中先生曰く、日本の研究者はハードワークは得意だけれど、ついついビジョンを忘れる、と。
 努力するのはよいけれど、何のために努力をしているのかを忘れてはダメ、ということなのです。

 本書でおもしろいなと思ったのは、人生のふたつのタイプ論。
 
 目標に向かってまっすぐに突き進む「直線型」の人生と、くるくる回転する「回旋型」の人生。
 回旋型の人生は、「ダメだ」と思ったら違うことをやり、もっと面白そうなことがあればそちらに方向転換するフレキシブルな人生です。

 益川先生曰く、日本人に尋ねたら、たぶん十人中九人が「直線型のほうがいい」と答えるだろう、と。
 山中先生は、日本では直線型でないと、人生の落伍者! のように見なされるが、米国では回旋型の人生を送っている人がたくさんいると言います。
 同じくノーベル医学生理学賞受賞者の利根川進氏の講演を聴いた際、こんな質問をしたのだそうです。
 利根川先生は、免疫分野の研究から脳科学に移った経歴がありました。

 はい。私、そのことを知って、講演会場で勇気を振り絞って手を上げ、利根川先生に質問させていただいたんです。
 「日本では研究の継続性が非常に重視されますが、それについて先生は、どのようにお考えですか」と。
 すると利根川先生は、「いったい誰がそんなことを言ってるんだ。重要で面白い研究であれば何でもいいじゃないか」という趣旨のお話をしてくださいました。私は、その答えにとても勇気づけられました。(81ページ)


 「研究の継続性」。
 これはよく分かりますね。直線的な考え方です。日本人らしいといえばそれまでなんですが、一方で「君子は豹変す」的な側面も必要だと思います。


 意外な感じの “プレゼン重視”

 本書で、最も意外で興味深かったのは、山中先生のプレゼン重視の姿勢でした。
 先生の講演は、講演録を読む限り、聴衆をあきさせず、ユーモアたっぷりに話をされていて感心させられます。
 その蔭には、米国仕込みのプレゼン力がありました。

 科学者が成功するためには、良い実験をすることだけでなく、いかにしてその実験データをきちんと伝えるかという「プレゼンテーション力」にかかっている、というのが私の持論です。自分の持っているデータや研究成果を、いかにして発信するかということが大切なのです。(132ページ)

 そして、少し衝撃的な発言が、これでした。
 益川先生に、米国でプレゼンの授業を受講して、自分がどのように変わったのか? と質問された答えです。

 研究のあり方や思考方法自体が変わったと思います。人にわかりやすく伝えるためには、聴衆に見せるスライドは、一枚目と二枚目にわかりやすいつながりがないといけない。同じように実験にもストーリーがあって、「実験Aでこういうことがわかったから、次の実験Bではこういうことをやった」という他者から見ても明確な関係が必要です。
 だから、単にプレゼン力がついたというだけでなく、実験の組み立てそのものが変わりましたし、論文の書き方も変わりました。言い過ぎかもしれないけれど、人生も変わったと思います。本当にプレゼンテーションは大切だと思います。(135-136ページ)


 確かに、アウトプットを意識することで、インプットやプロセスは変わりますね。
 山中先生のお話には、何度も、人生を変えたプレゼンが登場しますけれど、こういう深い考えのもとにプレゼンテーションされていたわけです。

 なかなか山中先生の講演に接する機会がないのですが、いつか生で先生のプレゼンを聴きたいものです。

 と、ここまで、ファンぶりを露呈しつつ書いてきたのですが……
 山中伸弥氏と私、実はほとんど年齢が変わらないんです!(ちょっとだけ山中氏が上)

 なんというか、自分も頑張らんとあかんなぁ、と思いつつ、本を閉じたのでした。




 書 名  『「大発見」の思考法 iPS細胞vs.素粒子』
 著 者  益川敏英、山中伸弥
 出版社  文藝春秋(文春新書789)
 刊行年  2011年


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コメント

私もファンです。

私も山中伸弥先生のファンです。
素晴らしい研究や実績は勿論のこと、やはり、お人柄がでる「話し方」が第一の魅力ですね。船越ファンとしては、リンクできて(勝手に)喜んでおります。

ありがとうございます

山中伸弥先生は、講演録を拝見すると、ご自身の失敗を数多く話しておられますね。そして、その失敗が成功につながっていくことも。
謙虚なお人柄が、今後のiPS細胞研究を推し進めることでしょう。

これからも、ご愛読よろしくお願い申し上げます。

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