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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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かつて盛んに行われた土用の虫干し、真如堂の虫払会もそのひとつ

洛東




真如堂


 真如堂の宝物虫払会

 暑い盛りの7月25日の土曜日、真如堂へ行ってきました。

 真如堂
  真如堂

 天台宗の古刹、正しくは真正極楽寺(しんしょうごくらくじ)と言うのですが、そう呼ぶ人は誰もおらず、みな「真如堂」(しんにょどう)と呼びならわしています。
 そういえば、お隣の金戒光明寺も、「黒谷さん」と通称されています。

 真如堂

 本堂に近付くと、テントの受付があります。大きな荷物やペットボトルは持ち込み出来ないとか。
 なぜなら、今日は宝物の虫払い(むしはらい)を行っているからです。

 広い本堂の中に、200点ばかりの書画の掛軸や書状の巻物などをズラッと並べています。
 写真でご紹介できないのが残念ですが、なかなか壮観です。

 お堂の長押(なげし)にフック状の金具が取り付けられていて、そこに掛軸が掛けられています。数が多いので、重なっているところも。
 真如堂縁起絵巻(写本)などは、台に置かれていて拝見でき、お坊さんが解説してくれます。小野篁のお軸の前でも、ちょっと絵解き風にお話をしてくださいました。

 額や聯の元の書も掛けられていました。

 真如堂
  「真如堂」の額

 本堂の扁額の書も、額の下の堂内にありました。

 京都新聞によると、約600人の方が拝観に訪れたそうです。

 真如堂

 ひと通り拝見してから、薬湯の接待を受けました。枇杷(びわ)湯だそうで、ハッカのようなスッとする味わいでした。

 真如堂
  薬湯の接待


 梅雨明けに土用干し

 この虫払い、衣類や書画などを風に当てて虫害などを防ぐものです。
 虫干し(むしぼし)とか、曝涼(ばくりょう)という表現もよく用います。

 真如堂の虫払いは、ちょうど鰻を食べた「土用の丑の日」の翌日でした。

 土用は、立春、立夏、立秋、立冬の前の時期を言います。なかでも立秋前の夏の土用は、鰻を食べるので有名ですね。
 夏の土用は、7月下旬から8月上旬。梅雨明けに当たります。じめじめした梅雨の後は、虫干しを行う絶好の時期。そのため、この虫干しを土用干しと呼びました。俳句の季語にもなっています。
 
 多くの宝物を持つ寺社でも、この時期に好んで土用干しを行ったのです。


 江戸時代の“虫払いブーム”

 江戸時代に著された「日次紀事」(ひなみきじ、黒川道祐、1676年)には、「此月、土用中、諸神社・諸仏寺、霊宝虫払」と記し、またの呼び名を「土用乾(ほし)」と言っています。

 「日次紀事」には、土用干しを行う京都の各寺を載せています。
 それによると、

  ・東寺
  ・大徳寺
  ・南禅寺ほか五山寺院
  ・仁和寺
  ・大雲院

 をあげています。
 大雲院は、かつては四条通寺町下ルにあった浄土宗の寺院で、現在では円山公園の南側に移転しています。祇園閣のあるお寺ですね。

 このことは、他の書物にも見られます。
 「都林泉名勝図会」(1799年)では、実に熱心に土用干しを紹介しています。
 
  ・大徳寺
  ・建仁寺
  ・南禅寺
  ・東福寺
  ・妙心寺
  ・天竜寺

 こちらは禅寺ばかりですね。
 
 「都林泉名勝図会」より東福寺虫払 東福寺

 「東福寺什宝(じゅうほう)」として、虫払いに出される什物をリストアップしています。
 例えば、「兆殿司筆 百三十幅/雪舟筆 二十幅」などと記されています。
 兆殿司(ちょうでんす)は、「瓢鮎図」で知られる東福寺の画僧・明兆(みんちょう)のことです。130幅すべてが虫干しに登場するのか分かりませんが、ものすごい量ですね。雪舟もぜひ見てみたいです!

 他の寺院では、お堂のどの部屋にどんな什物が出されるのか、図示しています。

 「都林泉名勝図会」より妙心寺虫払 妙心寺

 「妙心寺方丈虫払体(むしはらいのてい)」とあって、花園・妙心寺の方丈で行われた虫払いの様子を図示しています。
 右の部屋を見ると、やたらと綸旨(りんじ。天皇が出す文書の一種)が多いですね。図の感じでは、たぶん掛軸になっていて、壁に掛けているのでしょう。リアルな配置図です。

 「都林泉名勝図会」のように、一般に手に取ることができる書物に、ここまで詳しく虫干しが紹介されているとは! 当時の人たちが、いかに寺社の宝物に感心を持っており、それを見られる虫払いに期待していたか、よく分かります。
 一種の“虫払いブーム”だったと言えるでしょう。

 現在では、土用に限らず、春や秋にも寺院の虫払いが行われています。
 日程をリサーチして、いろいろ見に行くのもおもしろいかも知れません。

 


 真如堂(真正極楽寺)

 所在 京都市左京区浄土寺真如町
 拝観 宝物虫払い会は年に一度(有料)
 交通 市バス「真如堂前」下車、徒歩約10分



 【参考文献】
 「都林泉名勝図会」1799年
 「日次紀事」(『新撰京都叢書』所収)


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