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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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本堂は修復中でも、知恩院は経蔵がおもしろそう!

洛東




知恩院経蔵


 重要文化財の経蔵

 知恩院の経蔵の柱を支えている<礎盤>です。

 知恩院には、本堂の右手に重要文化財の経蔵があります。はっとするような、整った建物です。
 屋根は宝形造で、一重裳階付き。禅宗様のスタイルで、四方を吹放しにしているところが珍しく感じます。
 じっくり見ても、あきません。特に吹放しのあたりの佇まいが、何とも言えないのです。

知恩院経蔵

 重要文化財の経蔵は全国に10棟以上ありますが、知恩院のは裳階の付いた大規模なもので(幅約14m)、元和7年(1621)頃の建築です。寛永10年(1633)の火災も免れ、山内では三門などと並び古い建物のひとつです。
 内部には、八角輪蔵があるうえ、天井や壁が極彩色の画で彩られています。2000年に修理も終えて、竣工時の鮮やかさが蘇えったといいます。
 けれども、ふだんは内部非公開。ところが先日、たまたま中を見る機会に恵まれました!

 知恩院経蔵


 お経を収納する「輪蔵」

 正面の扉を開けると、すぐ内側に、輪蔵(りんぞう)を発明したと伝えられる傅大士(ふだいし)像があります。
 傅大士は、なぜ輪蔵を作ったのか?
 もちろん、回転した方が経典を取り出しやすいということなのですが、違った理由もあるそうです。
 輪蔵を回すと、万巻の経典を読んだのと同じ功徳があるといいます。世の中には文字が読めない人が大勢います。その人達にも、経典の功徳を与えるために、回せる輪蔵を作ったと伝えられているのです。
 傅大士は、さぞかし思いやりの深い人だったのでしょう。

 仏教の聖典を集成した大蔵経(一切経)を収納する棚、輪蔵。八角形や六角形をしているものが多く、ほとんどが回転します。いわば“回転ラック”。
 今回見た知恩院の輪蔵は、やはり八角形で、全体が漆塗り。一部に彩色画もみられます。上部には屋根があって、それを支える組物は四手先の立派なもの。逆に収納部の下には、四天王などの小さな彫像が配置されています。
 肝心のお経を収納する引出し(経櫃=きょうびつ)は、1面につき、タテ12段×ヨコ5列=60函ありますが、実はその後ろの見えない部分にも12×3=36函あるそうで、計96函あります。これが8面あるので、全部で768函になります。経典は6000帖近くあり、1函あたり8帖程度入っている勘定になります(実際は不明ですが)。

 興味深いのは、この経櫃に書いてある漢字です。ふつう、「壱番」「弐番」と数字で番号を付けそうですが、そうではなかったのです。よく見ると「事」「善」「傳」「念」「悲」「資」「福」「空」「賢」「量」など、仏教っぽい漢字が書いてあります。つないで読むようでもなく、アトランダムにふっている気もするのですが、調べようがなくて、とりあえず謎です。
 でも、768の漢字があるのですから、文字選びも大変だったことでしょう。

 廻している様子も拝見しましたが、やはり軽そうでした。小さな取っ手を持ち、廻すようになっています。

 この輪蔵については、こちらもご参照ください(写真もあります) ⇒ 「佛大通信」表紙


 宋版一切経

 この輪蔵に納められているのは、宋版一切経(大蔵経)です。
 中国で印刷された一切経には、蜀版(北宋版)・宋版(南宋版)・元版・高麗版・明版など、各種あります。清凉寺釈迦如来像を中国から持ち帰った奝然が将来したのは蜀版、宇治の萬福寺で鉄眼禅師が開版した際、もとにしたのは明版でした。
 知恩院には、宋版一切経が5,969帖納められており、重要文化財に指定されています。江戸時代のはじめ、徳川家から寄進されたものですが、専門家の研究によって、もとは宗像大社(福岡県)に所蔵されていたものだとわかっています。
 どのようなものかは、こちらをご覧ください。 ⇒ 知恩院ホームページ

 私たち参詣者は、お寺が蔵する経典のことまで、なかなか気が回りませんが、お寺にとって経典は大事なもの。それを収納する経蔵は、大切な建物のひとつなのです。

 なお、清凉寺の経蔵・輪蔵については、こちら ⇒ <嵯峨の清凉寺で“回せる”ものは?> *輪蔵の写真があります


知恩院経蔵




 知恩院

 *所在 京都市東山区林下町
 *拝観 境内自由  庭園(友禅苑)拝観は大人300円など
 *交通 地下鉄東西線東山駅より、徒歩8分



 【参考文献】
 是澤恭三「知恩院蔵宋版一切経の伝来に就いて」(「南都佛教」35号、1975年)
 『重要文化財 知恩院経蔵保存修理工事報告書』総本山知恩院、2000年
 山田孝道『禅宗辞典』国書刊行会、1974年(原著1915年)
 「佛大通信」517号(2008年10月)


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