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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【新聞から】新風館の再開発計画が報道される - 逓信技師・吉田鉄郎の名建築を生かす再生を!-





新風館


 新風館、建て替えへ
 NTT都市開発、高級ホテル誘致へ
 京都 2015年1月31日付



 少しばかり驚くニュースですね、新風館が建て替えとは。
 京都新聞によると、要点は次のような感じです。

 1.新風館の所有・運営者は、NTT都市開発。
 2.高級ホテルを誘致して、複合商業施設に建て替える。
 3.2016年春に着工し、2019年中の開業を予定。
 4.旧京都中央電話局の建物は、デザイン的な価値が高いため大半を残す方向で検討中。

 新風館
  新風館

 新風館の中核をなす旧京都中央電話局の建物は、逓信省の建築技師・吉田鉄郎の設計によって、大正15年(1926)に建築され、昭和6年(1931)に増築されました。
 現在、その建物はL字形に残っていて、烏丸通(西)側が南北に長く連なり、姉小路(北)側が短辺となっています。

  新風館
  姉小路(北)側ファサード

 昭和58年(1983)に、京都市の登録有形文化財(建築)の第1号になっていて、早くから価値が認められています。

 吉田鉄郎(1894-1956)という建築家は、数多くの逓信省の建築を手掛けました。逓信省は、郵便や電信電話を所管しましたから、のちの郵政省→日本郵便や電電公社→NTTにつながる役所です。
 彼の代表作・東京中央郵便局(1931年)は、鳩山邦夫郵政相のとき、壊すか保存するかで大モメになり、はからずも有名になりました。
 大阪駅前の大阪中央郵便局(1936年)も、それに続く作品で、彼の、そして逓信建築の機能主義的な思想をとてもよく体現した名作でした(すでに取り壊されたのですが)。

 大阪中央郵便局
  吉田鉄郎の代表作・大阪中央郵便局

 京都にも、逓信建築、ならびに吉田の作品は残されています。
 夭折の建築家・岩元禄が設計した京都中央電話局西陣分局(1922年、現・NTT西陣別館)は、すでに国の重要文化財に指定されています。
 吉田の作品でも、京都中央電話局に先立って建築された、京都中央電話局上分局(1923年、現・フレスコ=スーパーマーケットです)があります。 

 京都中央電話局上分局
  旧京都中央電話局 上分局

 鴨川に架かる丸太町橋の西詰に建っていて、とても目立ちます。
 新風館に比べると、屋根の形など、まだ牧歌的なイメージがしますね。ドイツの表現派の影響を受けているということです。

 大阪中央郵便局が取り壊される前までは、上分局 → 新風館 → 大阪中郵と並べて、京阪で吉田鉄郎の作風の変化を観察できました。わずか10年余りの間に作風は劇的に変っています。

 新風館

 新風館の外観は、この連続するアーチ窓が特徴です。
 南北に11連も続いているのですが、北の2連と南の2連は、壁面自体が少し突出していることもあって、わずかに意匠を変えています。
 壁面のタイルは暖か味があって、のちの大阪中央郵便局の無機的なものとは対照的です。こういった手触り感も、この建物の美点でしょう。

 新風館

 なかに入ると、広い中庭が拡がっています。
 上階の回廊です。

 新風館

 この壁は付け足し部分でしょうか。こんな形で各ショップにアプローチできるようになっています。

 新風館

 3階あたりの壁面が間近に見られるのも醍醐味です。

 この建物について、『モダン・シティー・KYOTO』の石田潤一郎氏の解説を引いておきましょう。

 上分局から3年しかたっていないが、意匠の雰囲気は大きく変わった。屋根はフラット・ルーフ、彫りの浅い壁面という手法によって、かつての一種暗い情緒性から、明快で都会的な秩序感へと一変するのだ。この変化は、1923年に完成して世界を魅了したR・エストベリのストックホルム市庁舎に吉田もまた感奮した結果である。

 中央電話局の外観は現代のオフィスビルに近いが、3階の半円アーチの連続が優しい印象を与える。さらに、2、3階のスパンドレル(上下に並んだ窓で挟まれた部分)だけタイルの張りかたが変わるのがほのかに遊戯的な気分をかもしだしている。 (167-168ページ)

 
 「都会的」「遊戯的」、キーワードですね。

 今後、新風館の再生にあたっては、次のような点が重要になるのではと考えています。

 1.三条通の近代建築群と一体のものと位置付けて再生する。
 2.京都の近代オフィス街の遺産として尊重する。
 3.祇園祭の鉾町への配慮。
 4.逓信建築の伝統をもつ建物として後世に引き継ぐ。

 この建物のすぐ南は、近代建築が数多く残る三条通です。重文の京都文化博物館(旧日銀京都支店)や、ファサード保存の先駆けである中京郵便局をはじめ、大小の西洋建築が彩を添えています。
 新風館も、その一角に位置するものと考えて、優れた建築が生きる形で再生されればと思います。

 また、全国の大都市同様、「古都」京都でも、近代化の中でオフィス街が形成されてきました。
 新風館が面する烏丸通は、その代表です。
 かつて四条烏丸の交差点にあった銀行群は、いまは姿を消し、烏丸通の銀行なども徐々に建て替えられています。
 新風館は、その中で残った大規模なオフィスビルとして貴重なものです。モダンな時代の息吹を伝える存在です。

 新風館
  オフィス街のモダンな面影を伝える

 やや異なった観点では、このビルの西側は、祇園祭の山鉾を出す鉾町です。7月になると、真向いにも鈴鹿山が建てられます。こういった地域性との共存も必要です。

 最後に、逓信建築のよき伝統を今に伝える建物として、大切に残してほしいと感じています。
 私が、逓信技師の流れをくむ郵政の建築家の心意気を知ったのは、中央郵便局のファサード保存について学んだときでした。
 *記事は、こちら! ⇒ <ファサード保存の先駆けとなった中京郵便局に、先人たちの思いと知恵をみる> 
 機能主義にかける彼らの苦悩と工夫がうかがえる先駆的な取り組みでした。
 吉田鉄郎は、その大先輩。大正から昭和初期の建築界をリードした建築家の一人です。その遺産をうまく残して再生が行われることを期待しています。

 再開発では、おそらく旧中央電話局の3階建の背後に、高層のホテル・商業複合ビルが建つのでしょう。“木に竹を継ぐ”再生にならないよう、関係者の皆さんには頑張っていただきたいと思います。

 *NTT都市開発のウェブサイトに、新風館についてのコンセプトが記されています。上記の点も十分踏まえられて当初開発が行われたようですので、ご一読ください。 ⇒ 【新風館のコンセプト】




 新風館(旧京都中央電話局)

 所在 京都市中京区車屋町
 見学 商業施設として営業中
 交通 地下鉄「烏丸御池」下車、すぐ



 【参考文献】
 京都建築倶楽部編『モダン・シティー・KYOTO』淡交社、1989年
 苅谷勇雅『日本の美術 474 京都-古都の近代と景観保存』至文堂、2005年

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