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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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きょうの散歩 - 鞍馬寺に虎とムカデを探して - 2014.9.27 -





鞍馬寺


 にぎわう京都北郊の鞍馬

 京都盆地の北に位置する鞍馬(くらま)。
 ここは、かつては愛宕(おたぎ)郡鞍馬村で、山里ではありますが鞍馬寺の門前町でした。

 クルマの場合、京都市内から「鞍馬街道」を北上するのですが、電車なら叡山電鉄(叡電)を利用し、終点の「鞍馬」まで向います。京阪電鉄と連絡する「出町柳」から30分です。
 ちなみに、「鞍馬」の1つ手前は「貴船口」駅。
 大阪からも、意外に交通至便のため、日帰り行楽には最適の場所。シーズンの週末には、にぎわいをみせます。

 叡電鞍馬駅
  叡電・鞍馬駅

 先日から、七福神めぐりをしているので、今日は毘沙門天の“本家”、鞍馬寺に行ってみることにしました。
 

 トラにゆかりの名物

 駅の前には数軒の土産物店や食堂があり、山菜の漬物などを売っています。ある店では、木の芽煮(きのめだき)、ちりめん山椒、蕗(ふき)しぐれ、木くらげ、しば漬けなどが並んでいました。

 毘沙門天(多聞天)と縁のある動物といえば、トラ。
 寅の年、寅の日、寅の刻に出現したという伝えの多い毘沙門天。そのため、毘沙門さんを祀る寺には、虎の姿が多く見られます。

 鞍馬駅を出てすぐあった、この店。

 多聞堂

 看板を見ると、「鞍馬山名物 神虎餅多聞堂」とあります。
 これ、これ、という感じで引き寄せられます。

 多聞堂

 ケースを見てみると、ありました「神虎餅」。「しんこもち」と読ませています。
 なるほど、いわゆる「しんこ餅」に「神虎」の字を当てているわけですね。うまいです。

 多聞堂

 砂糖味(白)とニッキ味(茶)があって、1個120円。
 白い方をいただいてみると、確かに、しんこ餅でした。
 これがお店の名物だなと、店の方に聞いてみると、名物は横に売っていた「牛若餅」のようでした(苦笑)
 まあ、鞍馬山は牛若丸(源義経)が修行した場所だから、それも仕方ないですか……


 鞍馬寺へ

 お餅を食べたあとは、鞍馬寺へ。

 鞍馬寺

 石灯籠に、「毘沙門天王」と刻んであります。いいですねぇ。
 この灯籠も、江戸後期の文政年間のものです。

 鞍馬寺  仁王門

 仁王門は、標高250mにあります(標高、距離は鞍馬寺パンフレットによる)。
 ここから少し上がると、ケーブル乗り場があるのですが、今日は歩いて、1000m余り距離のある本堂へ行くつもり。

 この門の脇にも、また虎が。

 鞍馬寺 鞍馬寺

 もちろん、阿吽(あうん)になっていて、右の虎は口を開いています。

 ここで拝観料200円を払って(まもなく値上げらしい)上って行くと、途中、“鞍馬の火祭り”で知られる由岐(ゆき)神社があります。
 この神社は、桃山時代に建てられた拝殿がとても美しいですね。

 由岐神社
  由岐神社拝殿(重要文化財)

 清水の舞台のような懸造(かけづくり)になっており、中央に通路がある割(わり)拝殿です。通路が石段になっていて、珍しいですね。

 由岐神社
 
 上側から見たところ。桁行は六間なので通路はセンターではなく、左右非対称になっています。通路の上は唐破風になっており華やかです。
 二軒疎垂木、組物も舟肘木。蟇股の装飾も簡素ですが、桃山時代の建築で、慶長12年(1607)築です。
 美しいですね。


 喜捨で築かれた参詣道

 鞍馬寺の本堂は、鞍馬山の標高410mの地点にあります。仁王門から高さでいうと160mも上ですから、参道も九十九(つづら)折れになっていて、九折坂と呼ばれます。

  鞍馬寺参詣道

 「枕草子」に、「近うて遠きもの、宮のまへの祭思はぬ。はらから・親族の中。鞍馬のつづらをりといふ道」などと出てきて、近くて遠いもののひとつに、この坂道が数えられています。確かに、見上げると上の方は近く見えるのに、歩いてみると意外に距離があるわけです。

 そんな中で、残りの距離が分かる町石(丁石)は、ありがたい存在です。ケーブル乗り場のあたりから、いくつか見受けられます。
 ケーブル乗り場の横の町石には「七町」とありますから、本堂まで約760mという勘定です。
 ちなみに、鞍馬寺パンフレット掲載の距離では、仁王門-本堂は1058mなので、少し短めでしょうか。

  町石  町石

 写真は、「五町」のもの。
 ずいぶん背が高く、トップの部分(写真右)は五輪塔の形になっており、梵字も刻まれています。
 元禄2年(1689)のもので、かなり古く、年輪を感じます。

 敷石や石段も、多くの人たちの寄進で築造されています。

 鞍馬寺参詣道 鞍馬寺参詣道

 中門からの石段は、京都の明光組という人たちの寄進のようで、そばの記念碑によると大正14年(1925)に修築されています。
 石段も、よく観察すると何度も改築されているようです。崩れることもあったでしょうし、参詣者の便をはかって拡幅したこともあったように見受けられます。このような先人たちの信心によって、今日私たちもこの道を上ることが出来るのです。


 ムカデは、いずこ……

 標高410mにある本堂まで上ってきました。仁王門からは、1000m以上の距離があります。

 鞍馬寺

 お堂の左右には、また虎がいますが、毘沙門天の使いといわれる“ムカデ”はどこにいるのでしょうか?

 ところが、鞍馬山というと、やはり「鞍馬天狗」が有名です。

 叡電鞍馬駅
  叡電・鞍馬駅の天狗面

 そのため、寺の紋もやはり……

  鞍馬寺

 それでもあきらめずに、本堂の中を見回していると、ついにいたのです、ムカデが!
 なんと、お守りの図柄に登場していました。

  鞍馬寺お守り

 中央に「福」の文字、上下に宝珠、宝鑰(ほうやく)、打出の小槌、蓑(みの)などの宝尽くしの意匠。そして左右に2匹のムカデがいます。
 さすが財福の神でもある毘沙門天。お金の貯まりそうなお守りですねぇ。600円也。蓄財には余り関心がないけれど、買ってしまいました。

 このあと霊宝殿にいくと、そちらにも江戸時代の宝札が展示されており、リアルなムカデが描かれていました。

 黒川道祐の「日次紀事」(1676年)には、1月の初寅の日、鞍馬寺に参詣すると、付近の人々が“生きたムカデ”を「御福」と称して売っているという話が掲載されています。

 この月[正月]初寅の日、獅子頭山鞍馬寺詣りをこれを「初寅詣り」といふ。
 鞍馬の土民[地元の人]福等の木を以て鑰[かぎ]を作り、以てこれを売る。これを「福掻き」といふ。福徳を掻き取るの謂なり。また生る蜈蚣[むかで]を売る。これを「御福」といふ。蜈蚣は多門天の使令するところのものなり。
 およそ鞍馬山中、鶏を養はずといふは、鶏は好みて蜈蚣を食するの故なり。(「日次紀事」巻1)


 生きたムカデを売る奇習。
 ほんとうに、それを買って、どうしたのでしょうか?

 飼うわけもないし、食べる! のも変だし、逃がすのか?

 仏教には「放生」、つまり捕まえた生き物を逃がしてやると功徳がある、という考え方があります。
 実際に江戸で、生きたカメを買って、川や池に放してやる“放し亀”という放生が行われていたのは、知られた話です。
 そう思うと、このムカデも、たぶん逃がしてやったのでしょう。毘沙門さんのお使いなのですから。それで正月から功徳が積め、福が舞い込んでくるというわけです。だからこそ、「御福」という名前なのでしょう。

 ということで、なかなか愉しい鞍馬山。
 次回は、霊宝殿で見付けたおもしろい情報と、木の根道を歩く、です。

(この項、つづく)




 鞍馬寺

 所在 京都市左京区鞍馬本町
 拝観 大人300円(2014年10月~)ほか
 交通 叡山電鉄「鞍馬」下車、徒歩約5分(仁王門まで)
    山門-多宝塔間はケーブルカーあり(片道100円)



 【参考文献】
 『枕草子』岩波文庫、1962年
 「日次紀事」1676年(『新修京都叢書』所収)


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