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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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寺町通にひっそりとたたずむ天性寺の弁天さんは、天河弁財天を勧請したという





天性寺弁天堂


 “弁天さん”について、ちょっと勉強

 前回、東寺の弁天堂を取り上げたので、少し弁天さんについてまとめてみましょう。

 弁才天は、ご存知の通り、七福神のひとつです。七福神のなかでは、大黒天や恵比須さんが早くに信仰を得たようですが、それについで弁才天も信仰を集めるようになりました。
 七福神は室町時代頃には成立したようですが、江戸時代になっても7人の神さまは定まっていませんでした。京の黒川道祐が著した「日次紀事」(1676年)巻1には、

 「およそ本朝、専ら神社を崇む。その中、俗間福を祈る者は、宇賀神ならびに恵美須、および虚空蔵、毘沙門天、弁財天、吉祥天、大黒天を信ず」

 とあって、現在考えられているものとは異なる神仏があげられています。

 しかし弁才天は、いわゆる「夷大黒」に次いで信心され、湖や海に浮かぶ近江の竹生島、相模の江の島、安芸の宮島(厳島)は三弁才天と称されていますし、陸前の金華山と大和の天川を加えて五弁才天という場合もあります(異説あり)。

 京都では、江戸時代に「弁財天二十九ケ所」というものがあり(「京羽二重」)、主に寺院の中にある弁才天が29か所あげられています。
 前回紹介した東寺の弁天さんは、21番として「東寺 築地の内」とあがっています。他にも、伏見稲荷や壬生寺、盧山寺、神泉苑の中などにあって、最終29番の岩本坊(油小路出水下ル町)は、その名からして江の島と関係があるのでしょう。

 弁天さん(十日戎)
  弁才天(中央) 十日戎の山車より

 インドでは川の女神であり、水と関連付けて信仰され、さらに転じて蛇がお使いとされることが多い弁才天。そのため、巳(み)の日にお詣りするのがよいともいわれ、また己巳(つちのとみ)の年に流行したといわれます。
 琵琶を弾く像が多いことからも分かるように、音楽をはじめとする技芸の神であり、「弁才」が「弁財」に転じて財福をもたらす神として崇められてきました。


 繁華街の中にある弁天さん

 今回は、寺町三条という繁華街の真ん中にある弁天さんを紹介しましょう。

 天性寺弁天堂
  寺町三条

 三条通から、アーケードのある寺町通を上がります。このあたりは古書店や古い喫茶店など、落ち着いた雰囲気があるところ。
 矢田地蔵の北側に、浄土宗の天性寺があります。

 天性寺
  天性寺

 お寺の前はいつも通るけれど、なかなかお詣りはしないもの。ずっと入っていくと立派な本堂があり、その奥に弁天堂がありました。

 天性寺弁天

 天性寺弁天

 石の鳥居があり、入母屋造のお堂があります。

 天性寺弁天堂

 ふつう蟇股がある部分には、このような彫り物が。
 どう見ても蟇股ではないけれど、法輪に、水を泳ぐ蛇の図柄でしょうか。弁才天=蛇というイメージが表れているわけです。彫刻としては、新しそう(近代)な印象。

 弁才天は、インド土着の神が仏教に取り入れられて日本に渡来したわけですが、実際には鳥居があったりして神さま扱い。このあたりが面白いですね。

 天性寺弁天 天性寺弁天

 「大弁財天」の額が懸り、祠も神社風に流造の社殿です。


 奉納品の数々

 天性寺弁天堂

 近所の方から信心を集めていて、赤い提灯がたくさん吊られています。
 また、社殿の背後には……

 天性寺弁天堂

 桶ですね。山積みされています。

 天性寺弁天堂

 名前や祈願内容が書かれています。
 ここにある大文字屋という屋号は、寺町三条を東へ入ったところ、つまり天性寺の南側にあった老舗旅館です。近年廃業されたようですね。
 ちなみに、先ほど提灯にあった大西京扇堂は、三条通にあるのですが、地図を見ると、弁天さんの真南に建っています。

 この桶を奉納するというのも、弁天さんと水のかかわりを示しているのでしょう。


 池の水は…

 もちろん、ここにも池があります。

 天性寺弁天堂

 ただ、今は干上がっていて水はありません。
 それでも離れて見ると、柳があって雰囲気十分です。

 天性寺弁天堂

 この弁天さんは、奈良の天河大弁財天を勧請したものといい、もとは火災防けで信仰されたそうですが、現在では子宝祈願も行われているそうです(『京都府の歴史散歩』)。火防けは、やはり水との関係でしょうが、子授けは弁天さんとしては珍しいのでしょうか。

 町中に、ひっそりとたたずむ弁天さん。
 一度お詣りされてはいかがでしょうか。


 天性寺弁天堂




 天性寺

 所在 京都市中京区天性寺前町
 拝観 境内自由
 交通 地下鉄「市役所前」下車、徒歩約5分



 【参考文献】
 「日次紀事」1676年(『新修京都叢書』所収)
 「京羽二重」1685年(『新修京都叢書』所収)
 宮田登「福神信仰の系譜」(『民衆宗教史叢書 20 福神信仰』雄山閣出版、1987年所収)
 宮田登「弁天信仰」(『民衆宗教史叢書 20 福神信仰』雄山閣出版、1987年所収)
 伊藤唯真「七福神もうで」(『七福神信仰事典』戎光祥出版、1998年所収)
 『京都府の歴史散歩(上)』山川出版社、2011年


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