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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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京都の西国三十三所(4) - 三室戸寺 その1 -

宇治




三室戸寺本堂


 巡礼道を歩いて

 西国三十三所の第九番札所は、大和の興福寺南円堂ですが、続く十番は山城に入り、宇治の三室戸寺になります。
 三室戸寺は、美しい花の寺としても知られ、また景勝地・宇治にある古寺としても多くの参拝者を集めています。

三室戸寺への道

 黄檗山萬福寺のある北の方から三室戸寺へ向かって歩くと、今でも古い巡礼道の名残が感じられます。
 上の写真は、旧大鳳寺村あたりの道。ゆるく曲がりくねった道の脇に、宇治茶を製する茶師の家が並んでいます。幕末の史料によると、大鳳寺村には梅林・宮林・森江などの茶師があり、御通茶師の家柄でした。このあたりは宇治の中心(宇治橋西詰あたり)からすると「郊外」だったのですが、それでも茶師の家が何軒かあったのです。
 路傍には古い道しるべも立てられ、いにしえの旅を知るよすがともなっています。

三室戸寺への道標
「右 ミむろみち」と刻まれた道標

 三室戸寺を訪れる際、クルマを使えば便利なのですが、少しだけ歩いてみてはどうでしょうか?
 たとえば、JR・京阪電車「黄檗」駅で降り、萬福寺などを拝観してから、巡礼道を歩きます。およそ30分~40分の道のりで三室戸寺に到着。のどかな旅を満喫できることでしょう。



 昔は“三十三番”だった? 三室戸寺

 西国三十三所巡礼がいつ始まったかを考えてみると、確実なところでは、三井寺(園城寺)の僧・覚忠(1118-1177)による巡拝があげられます。
 覚忠は、関白・藤原忠通の子で、天台座主と三井寺長吏を務め、公卿の九条兼実や天台座主の慈円の兄弟(異母兄)でした。つまり、家柄も僧侶としても極めて格の高い人物でした。
 三井寺の高僧伝である「寺門高僧記」巻6に載せられた彼の伝記には、その末尾に「応保元年(1161)正月、三十三所巡礼、すなわちこれを記す」として、巡礼した寺々が記載されています。
 その順序は、このシリーズ(1)に掲載しておきましたが、一番の那智山から始めて、三十三番の三室戸山で終わるという順序です。
 現在の順序は、のちに盛んになった東国の人達に便利なルートになっています。それ以前、畿内の人々は別の順番で回っていたのでした。

 覚忠は、応保元年に加え、もう一度巡礼したという考え方もあるのですが(岡田希雄氏)、ここでは勅撰集の「千載集」にとられた彼の和歌を紹介しておきましょう。2首あります。


  三十三所観音、拝み奉らんとて、ところどころ詣りける時、美濃の谷汲にて油の出づるを見て、詠み侍りける

    世を照らす仏のしるしありければ まだともし火も消えぬなりけり

  あなう観音を見奉りて

    見るままに涙ぞ落つる限りなき 命にかはる姿と思へば

 
 前者は、谷汲観音(現在の岐阜県・華厳寺)に覚忠が訪れていたことを示しています。「あなう観音」は「穴太観音」かも知れませんが、いずれにせよ彼が広範に観音霊場を巡って、修行し、仏に感得したさまがうかがえます。
  

 次に、「寺門高僧記」覚忠伝に、三室戸寺がどのように記載されているかをみておきましょう。


  卅三番。山城国御室戸山。御堂七間南向。本尊一尺千手。願主宝道聖人。羅惹院僧正。三井寺末寺。


 ここには「羅惹院僧正。三井寺末寺」とあります。「羅惹院」は三井寺にあった院で、その住持を務めた僧は隆明(りゅうみょう)でした。隆明は、学識も験力も優れた僧で、のち三室戸に入り、三室戸寺を中興したとされています。11世紀後半から12世紀初頭にかけての人物で、覚忠の先輩にあたります。
 隆明にひかれて、三室戸寺には多くの僧たちが集まったようで、覚忠も康治2年(1143)頃には三室戸にいたようです。
 このように、三室戸寺と三井寺(寺門)とは強いつながりを持っており、僧の行き来もありました。覚忠が三室戸寺を三十三所巡礼の結願所に選んだのも、もっともだと思われます。

 次回は、この寺を参詣した人々について考えてみましょう。


三室戸寺へ




 三室戸寺

 *所在 宇治市菟道滋賀谷
 *拝観 大人500円ほか (宝物殿は毎月17日公開、300円)
 *交通 京阪宇治線三室戸駅より、徒歩約15分



 【参考文献】
 岡田希雄「西国三十三所観音巡拝攷続貂」1~6(「歴史と地理」21-4,5,6、22-3,4,6 所収)
 速水侑『観音信仰』塙選書、1970年
 「寺門高僧記」(『続群書類従』28上 釈家部 所収)
 「尊卑分脈」(『国史大系』58 所収)
 『国歌大観』1 角川書店、1983年



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