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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【大学の窓】嘘か真か「三十三間堂棟由来」!? 学生にきいてみた!

大学の窓




 キャンパス


 「あの問題」をきいてみよう!

 担当している演習では、年に一度、指定された研究書を読んで意見交換する日があります。
 私の指定書は、田中優子さんの『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫、原著1986年)。
 金唐革、平賀源内から、世界全図、“手長足長”まで、江戸人のはばたく想像力を縦横に紹介した書物です。

 1時間以上、意見交換をして、そろそろ終わりというところ。
 少し時間が余りそうなので、“あの問題”を学生に尋ねてみました。

 “問題”とは、前回ふれた文楽「卅三間堂棟由来」(さんじゅうさんげんどう むなぎのゆらい)の物語を、江戸時代の人たちは本当と思って聞いていたのか、それとも眉に唾して聞いていたのか、ということです。


 なるほどの卓見も

 文楽鑑賞教室パンフレット

 この物語、熊野山中に夫婦として生えていたナギと柳が、来世に人間と柳の精となって再会し契りを交わしますが、柳が伐り倒されて再び別離するという哀話です。
 三十三間堂の建立由来譚なのですが、現代人からすると、荒唐無稽に思えます。

 学生に聞いてみました。
 この物語、江戸時代の人たちは、本当と信じて聞いていたのか、作り話と思って聞いていたのか?

 13名のうち、「本当」派は2人のみ。残りは「作り話」に挙手しました。

 理由を聞いてみると……
 本当派は、『江戸の想像力』にもあるように、異国には手長足長が住んでいると信じる人たちもいるのだから、この話も信じたのではないか、などというものです。
 確かに、限られた情報の中では、それが正しいか誤っているか容易に判断できず、鵜呑みにしてしまうかも知れません。

 一方、大多数の作り話派は、どんな理由なのでしょうか?
 ある学生は、こう言います。
 今でも、心霊写真などを見たとき、作り事だとは思うけど、もしかすると……みたいな感覚がある。当時の人も、疑いつつも信じる部分もあったのでは……
 これは、全面的な「作り話」説ではなくて、「半信半疑」説とでもいうべきでしょうか。

 別の意見は、こうです。
 現在にたとえれば、テレドラマを見るように、ひとつの娯楽と割り切って人形浄瑠璃を見ていたのではないか。
 なるほど。
 言い換えると、「作品」として受け取っていたというわけです。作品世界の中のお話として見ていたという解釈ですね。

 作り話派も、当時の人が完全な嘘と思って聞いていたというのではなく、虚実半々に聞いていたと考える学生が多かったようです。

 確かに、わざわざ芝居小屋に見に来ているわけですから(それもいつも見ているのですから)、娯楽作品として物語を受け止め、その枠内で楽しんでいたという解釈は納得できます。
 
 国立文楽劇場

 もう一歩だけ踏み込んで考えておきましょう。
 江戸時代の人たちにとって、人形浄瑠璃は単なる娯楽作品だったのでしょうか?

 例えば、のちの時代、絵葉書は観光土産であるとともに、報道メディアでもありました。報道としての絵葉書で最も多い例は、災害絵葉書です。これは新聞に写真が使いづらかった明治時代、流行します。
 また、明治維新当初には、浮世絵(錦絵)の技法を用いた「新聞錦絵」というものもありました。浮世絵が報道メディアとして活用されたケースです。

 そんな例から想像していくと、お芝居も情報伝達メディアとして受け取られていた可能性はないのか? という疑問がわきます。
 例えば、実際に起こった心中事件や仇討事件を、少しだけ設定を変えて芝居にすることは盛んに行われています。それは、今でいう報道とイコールではないにせよ、ある種の情報伝達です。
 そんな中で、「卅三間堂棟由来」を見たら、“この話は、かなりの部分真実なんだろうな”と受け取る観客もいたのでは? と推測されます。

 この問題、奥が深そうですね。
 学生の意見を聞いて、いろいろと勉強になり、さらに考えるきっかけになりました。


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