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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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国立文楽劇場で「三十三間堂棟由来」を見る

洛東




国立文楽劇場


 社会人のための夜の公演

 6月の国立文楽劇場(大阪)は、文楽鑑賞教室。
 主には、生徒さん向けの公演だとは思うのですが、そのなかに2回ばかり大人向けの夜の公演が組み込まれています。その名も、「社会人のための文楽入門」。

 開演が午後6時30分という仕事帰りに行ける時間。6月18日に、のぞいて来ました。
 この夜の来場者は約700人ということで、800席ほどある文楽劇場では、なかなかよい入りということになります。

 今回の演目は、京都関係のもの。私の好きな三十三間堂に関する物語、「卅三間堂棟由来」(さんじゅうさんげんどう むなぎのゆらい)で、とても楽しみです。

 国立文楽劇場


 三十三間堂建立の由来を語る

 まずは、太夫さんたちによる文楽の見方ガイドです。
 三業(太夫、三味線、人形)のそれぞれについて説明があります。
 人形の遣い方では、実際に3人のお客さんが舞台に上がって“実演”!
 なかなかうまくいかず、笑いを誘って、ほほえましかったです。

 そして、「卅三間堂棟由来」。
 あらすじは、以前書きましたので、こちらをどうぞ! ⇒ <「三十三間堂棟由来」、国立文楽劇場で6月に上演>

 まずは、鷹狩りの場面からスタートです。

 熊野山中で、武将・季仲が狙った獲物は白鷺。サギの人形は、長い竿の先に取り付けられているのですが、竿を微妙に震わせているのか、羽根がはばたいて不思議な感じです。それを追うタカも同じ動きです。
 そのあとが、柳の枝に引っ掛かったタカを平太郎が射落とす場面。
 ストーリーを読むのと違い、実際に平太郎が弓に矢をつがえると、その手もとに観客の視線が集まります。
 射た矢は、枝に掛かったタカに見事命中!--と思いきや、柳の根元あたりにまでしか飛びませんでした……
 まぁ、人形が射る弓矢ですから、そんなに飛ばないのです。でも、意味は分かりますよ、タカに命中したという……

 このシーンは、平太郎が弓矢の名手ということを示しています。後段で、その手腕を息子にも伝えてほしいとお柳が言う場面もあります。
 遅ればせながら気付くのは、このエピソードが三十三間堂の「通し矢」から想を得ているということ。
 江戸時代の観客も、三十三間堂といえば通し矢、と思っていたでしょうから、その連想を巧みに利用した作劇になっているのですね。

  国立文楽劇場 お柳のポスター


 平太郎とお柳の恋

 柳のそばにある茶屋の娘・お柳は、その名の通り、柳の精です。だから、鮮やかな緑の着物を着ています(分かりやすいですね)。
 平太郎とお柳は結婚して、みどり丸! という息子をもうけることになるのですが、とても意外だったのが、プロポーズ。
 なんと、お柳が平太郎に、いきなり「私を奥さんにしてください」と言い寄るのです!
 平太郎は、こんな美しい人が……と、すぐには信じられません。当たり前ですよね。江戸時代ですし。

 でも、この場面を見て、確信したのです。“この女性(=柳)は、ずっとこの男性(=ナギの木)をここで待っていたんだ”と。

 お柳と平太郎は、前世では柳とナギで、絡み合って生えている「連理の樹」でした。
 その仲を蓮華王坊に引き裂かれたのです。
 どんなに待ったことでしょう。来世で再びめぐり逢った二人。

 しかし物語は、悲劇へと進んでいきます。

 柳は、おそらく何百年と生えている大木だったせいで目を付けられ、都の法皇が発願した三十三間堂の材木にされることになります。
 法皇の使者が、お柳と老母にそれを告げたあと、ひとり独白するお柳(いわゆるクドキという心情吐露です)。
 すると、家の中なのに、上から柳の葉が降ってくるのです!

 どうやら、すでに柳の伐採が始まっているらしい……

 ひらひら、ひらひらと、緑の葉が降ってきます。
 このあたりの感慨も一入です。

 そして、夫・平太郎、息子・みどり丸、老いた義母の前で、お柳は忽然と姿を消すのです。
 あぁ、柳が伐られた……と、悲しむ観客。
 ところが、すぐに再び姿を現すのです、お柳が!

 幽霊のような復活、いつもながらのご都合主義? なのですが、一応お柳の心残りが強かったので復活、という説明を付けています(ちょっと苦しい)。

 本当のサヨナラシーンは、彼女の装束も、柳文様の白い帷子となり、ふわふわと宙に浮いて家の玄関を出ていきます。 
 そして、どう消えるのかと思っていたら、なんと、壁がドンデン返しになって消えたのです!

 歌舞伎の影響 !? と思わせる、文楽では余り見掛けない仕掛けでした。

 こんな感じで、文章で読むのとはまた違った、リアルで楽しいお芝居でした。
 江戸時代の人たちは、これを見て、“そうかぁ、三十三間堂はこういうふうにして建てられたのか”と思ったのでしょうか? それとも、“あんなのいつもの作り話や”と、眉に唾して見ていたのでしょうか?
 ちょっと分かりかねますが、いつもながら楽しい“江戸の想像力”でした。


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