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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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建築の言葉の海は広大なり(3) - 輪薙込、唐居敷、柄振板 -

建築




唐居敷


 「輪薙込」という難読用語

 東福寺の門を調べている中で、「輪薙込」という言葉に出食わしました。
 文字づらも難しい上、読み方も分かりません。
 辞書を調べると、「わなぎごみ」と読むらしいのですが、難解な語です。

 輪薙込
  輪薙込(東福寺六波羅門)

 ずいぶん前に、中村達太郎博士の『日本建築辞彙』から面白い用語を紹介しましたが、また久しぶりに気になった言葉をピックアップしてみましょう。

 その「輪薙込」ですが、中村博士は次のように解説されています(明治40年の訂正3版より。句読点などは適宜補足)。

 わなぎこむ(輪薙込)
 一[ひとつ]ノ木ヲ他木ニ食[は]マスコト。
 図ハ、ニ輪薙込ミタル形ナリ(後略)(71ページ)


 『日本建築辞彙』より「輪薙込」
 「輪薙込」(『日本建築辞彙』より)

 ここでは動詞として掲出されています。
 図でよく分かりますが、タテの材にホゾを作って、そこにヨコの材をはめ込んでいる、という形です。
 上の写真(六波羅門)でいうと、中央の丸柱にホゾが刻まれ、蟇股、男梁、女梁がはめ込まれているわけです。ホゾも随分深いのでしょう。
 <ひとつの木が他の木を食む>という表現は、なかなか味わい深いですね。


 「唐居敷」とは?

 門の解説を読んでいると、さらに難解な言葉が出てきます。

 唐居敷。

 これは、読めないし意味も分かりません……

 調べてみると「からいしき」というそうです。
 再び中村博士の説明です。

 からゐしき(唐居敷)
 薬医門ナドニ在テ、伏図ハ矩形[くけい]ヲナシ、敷石面ヨリハ突起シ居ル石ニテ、門柱ヲ受ケ、且[かつ]扉ノ軸ヲモ支フルモノナリ(後略)(83-84ページ)


 『日本建築辞彙』より「唐居敷」
 「唐居敷」(『日本建築辞彙』より)

 写真で見ると、こんな感じです。

 唐居敷
  唐居敷(東福寺南大門)

 この門の場合、最も下に広い基壇があり、その上にごく薄い敷石が延べられ、そこに長方形をした花崗岩の唐居敷が置かれています。
 ここでは、一枚岩ではなくて、拍子木のような形の石を2つ並べています。
 唐居敷の上には、門の丸柱(本柱)が載せられ、その左には扉の軸が差し込まれています。

 唐居敷
  写真の左が門の内側になる
  
 拡大すると、このようになっています。
 中村博士の解説では、唐居敷は「薬医門」によく用いられているように読めますし、材質も「石」に限られるような書き方です。
 実際には、上の写真にあげた東福寺南大門は四脚門ですから、薬医門ばかりというわけではないようです。
 また、石以外の素材もあって、

 唐居敷
 厚板の唐居敷(東福寺北大門)

 木の板の場合もあります。上の写真では、拍子木状の厚板2枚を横に並べ、その上に板を打ち付けています。
 ちなみに、この門も四脚門です。

 このような例も多いので、復刻版の『日本建築辞彙』では、薬医門を単に「門」に改めるとともに、素材も石に加えて「厚板」をあげています。


 塀に付ける板の名は?
 
 門にまつわる名前でもうひとつ。
 門には、その左右に塀が続いているのが一般的ですね。その塀の末端(門側)に、弓型のカーブを描いた板が付いていることがあります。

 えぶり板
 東福寺南大門

 蟇股にも似た曲線を持つこの板。いったい何という名称なのでしょうか?

 答えは、えぶり板。

 知らなければ、全く推測できない名前です。
 三たび、中村達太郎博士の解説を聞いてみましょう。

 えぶりいた(柄振板)
 絵振板、又ハ恵振板ト書クヲ普通トス、然レドモ予ハ柄振板ノ文字ヲ採用セリ、蓋[けだし]農具中ニ柄振ト称スルモノアリ、竿[さお]ノ端ニ板ヲ附シタルモノニテ、支那ニテ之ヲ朳[はつ]トイフ、サテ建築家ノ所謂柄振板ハ塀、又ハ出桁[ダシゲタ]等ノ端ヲ隠スタメニ取設ケタル化粧板ニシテ、農具ナル柄振ノ竿端ニアル板ノ如シ、故ニ之ヲ斯ク称シタルナラン(後略)(229-230ページ)


 『日本建築辞彙』より「えぶり板」
 「えぶり板」(『日本建築辞彙』より)

 「えぶり」は「柄振」。その語源は、農具の一種に由来するという説明です。
 農具の図を見ると、軒の例の方が塀よりも納得できるような気がします。農具の長い柄のようなものの末端に板が付いている--というものが「えぶり」なわけですね。 
 この語源説、なんだかその通りのようでもあり、違和感があるようでもあり……

 言葉は、なかなか奥深いです。




 【参考文献】
 中村達太郎『日本建築辞彙』丸善、1906年
 中村達太郎『日本建築辞彙[新訂]』中央公論美術出版、2011年


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