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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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かつて公家が出入りした京都御所・宜秋門は、キッチュな彫刻に満ちている





京都御所


 京都御所は春季の公開

 2014年・春の京都御所の一般公開は、4月9日(水)~13日(日)の5日間行われます。
 桜には少し遅いような感じですが、ぜひ訪れたいと思います。

 現在の御所の建物は、幕末、安政2年(1855)に造営されたものです。
 また、それを取り巻く京都御苑は、明治維新後の整備(とりわけ明治10年代の大内保存事業)によって形作られたものです。昔は、御所のまわりに公家邸が立ち並んでおり、現在とは全く異なる景観でした。

 このあたりについては、次の記事もご参照ください。 ⇒ <京都御所にある隠れた公家邸跡-摂家・九条邸->


 一般公開の入口・宜秋門

 平常の参観時(申込制)は、御所の西側に開かれた清所門(せいしょもん)から入ります。
 春秋の一般公開の際には、その南にある宜秋門(ぎしゅうもん)になります。

 宜秋門
  一般公開時の宜秋門

 この門の位置は、模型で見ると、この位置(左が北)。

 京都御苑模型
  赤丸の位置が宜秋門(左が北。中立売休憩所の模型)

 この門は、別名、公卿門とか公家門と呼ばれていました。江戸時代、宮中に参内するお公家さんが通る門だったのです。
 そのため、それを見物する人々がここに集まってきたのでした。
 門前には、ちょっとした茶店が設けられていたといいます。

 宜秋門
   往時のおもかげはない宜秋門付近


 彫刻にあふれる宜秋門の細部

 宜秋門
   宜秋門

 
 公開時は、すっと通り過ぎてしまう宜秋門を、今回はじっくり見てみましょう。

 全体のフォルムは、桧皮葺の切妻屋根を持った四脚門です。

 御所には6つの門が穿たれていますが、この宜秋門や建礼門などはシンプルな切妻の門です。
 一方、東側に開く建春門は、唐門になっています。

 建春門
   建春門

 ところが、宜秋門も近寄って見ると、なかなかおもしろいのです。

 宜秋門

 これは大瓶束(たいへいづか)の写真です。
 左右に張り出している笈形(おいがた)が、とても装飾的に発達していて、唐獅子牡丹になっています。
 桃山時代くらいになると、笈形にこのような派手な彫物が見られるようになります。

 宜秋門

 こちらは、蟇股(かえるまた)です。
 とにかく、これが蟇股だとは分からないくらい、彫物で埋め尽くされています。
 梅の木を背景に、貴人が座っており、脇にその侍童がいて、鶴が何かをついばんでいる。そんな光景です。
 
 宜秋門

 これは、鯉? に乗って波の上を進む貴人です!

 こんなモチーフもあるのかと調べてみると、天沼俊一博士が唐招提寺の戒壇南門の蟇股を紹介されていました(写真は不鮮明なため省略し、報告文だけ引用します)。

 84は支那人らしいのが、水上を滑走してゐる(?)魚の上に乗り、巻物か何かをひろげて見てゐるところがほってある。
 どうも乗物は魚らしいが、余程波が固いと見え、恰[あたか]も蝸牛が小砂利の上を前進してゐる様に、腹の波が反て波形をしてゐる。
 これは先づ悪口として、魚は鯉だとすると、のってゐる人物は琴高位のところかも知れない。江戸時代だから人物があっても差支はない。(『日本建築細部変遷小図録』320ページ)

 
 確かに、宜秋門の人も何やら広げているようにも見えます。
 天沼博士が、<のっている人物は「琴高[きんこう]」くらいかも知れない>といっている「琴高」とは、辞書によると、琴高仙人という中国人らしいのです。
 『日本国語大辞典』によると、

 琴高仙人
 仙人。中国周代趙の人。琴の名手で宋の康王の舎人(とねり)となって仕え、鯉を巧みに乗りこなしたという。「琴高乗鯉」の画題で知られ、狩野元信、尾形光琳などの作がある。


 と説明されています。

 なるほど。
 鯉といったら、鯉の滝登りくらいしか知らない私ですが、さすが天沼博士は学識が深いと感心。
 中国の故事に則った彫刻だったわけですが、この御所のものも幕末の作とあって、もし博士に言わせたら“波しぶきが植物のようになっている”なんて悪口を言われそうですね。

 唐獅子牡丹とか龍でしたら判別も簡単ですが、中国の故事ともなれば、見る側にも知識がないと理解できません。
 彫刻の腕前がヘタウマだと笑っていたら、おまえこそ古典の知識がないではないかと、逆に笑われそうです。




 京都御所 宜秋門

 所在 京都市上京区京都御苑
 見学 門外からは自由 ※御所内は申込み・一般公開時
 交通 地下鉄「今出川」下車、徒歩約10分



 【参考文献】
 天沼俊一『日本建築細部変遷小図録』星野書店、1944年
 高木博志『近代天皇制と古都』岩波書店、2006年
 『日本国語大辞典』小学館、1976年


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