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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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知っていますか? 京都市の 「無形文化遺産」- 第2弾は、京の花街文化を選定へ -

その他




 都をどり(『京都』より)


 京都の五花街

 2014年3月11日の京都市の審査会を経て、「京・花街の文化」が、京都市の無形文化遺産に選定されます。

 京都の花街は「五花街」といって、祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町、上七軒の5つの花街があります。
 お茶屋さんがあって、舞妓さんや芸妓さんがおられるところで、春に「都をどり」などの総おどりが行われる町といえば、分かりやすいと思います。
 観光スポットになっているのは、祇園・花見小路だと思いますが、これは四条通の南側にある祇園甲部で、歌舞練場で「都をどり」を行います。また、鴨川西岸に細い通りが続いているのが先斗町で、飲食店が並ぶ中に格子をはめたお茶屋さんが何軒もあります。5月の「鴨川をどり」で知られていますね。

 祇園・一力
  祇園・花見小路

 花街については、このブログでも何度か書いていますので、そちらもご覧ください。

 ⇒ <花街・先斗町、鴨川をどりと歌舞練場>
 ⇒ <先斗町歌舞練場、狭斜の巷にそびえるアジア的な造形に見惚れる>
 ⇒ <屋根のラインが美しい祇園の弥栄会館は、名手・木村得三郎の力作>


「無形文化遺産」とは? -なぜ、この制度を導入したのか

 京都市には「無形文化遺産」制度というものがあります。
 全国の方はもちろん、市民にもまだほとんど知られていないと思います。というのも、昨年(平成25年度=2013年)から始まった制度だからです。正しくは「京都をつなぐ無形文化遺産」という制度です。

 文化財保護の中で<無形文化財>というジャンルがあります。これは、祭礼や行事、伝統芸能・技術といった、モノでない文化財です。指定の区分はいろいろありますが、平たく言えば、お祭りとか人間国宝などがこれに当たります。
 この考え方を採用すると、職人さんの技みたいなものも指定できるし、落語家の名人芸も指定できるわけです。
 ところが、これでもまだ指定しづらいものがあると、京都市は思ったのです。

 その代表が「地蔵盆」。
 
 なぜ、地蔵盆が無形文化財として指定づらいのか?
 それは、無形文化財には、その行事や技の<保持者>がいなければならないからです。
 人間国宝だと、漠然と「落語」といって認定するのではなく、例えば「桂米朝」さんを保持者として認定します。あるいは「祇園祭」であれば、「祇園祭山鉾連合会」が保持団体として認定されます。

 こんな感じで、特定の個人や団体が必要なのですが、地蔵盆は誰を<保持者・団体>に認定すればいいんでしょうか?
 もしかして、全市民? 全町内? --だったら、私も保持者ですが(笑)、そんなわけもなく、認定すべき人や組織が分からないですよね。
 でも、京都市民にとって、地蔵盆はとても大事な行事です。町内々々に根づいて長く受け継がれています。
 そんな地蔵盆をどうやって<無形文化財>として認めていくのか? そんな課題があったわけです。


「無形文化遺産」-どんな制度か?
 
 では、どんな制度か見ていきましょう。
 実施要綱の第1条(目的)には、次のように記されています。
 
第1条 この要綱は,京都に伝わる大切な無形文化遺産を“京都をつなぐ無形文化遺産”(以下,「選定遺産」という。)として選定することにより,選定遺産の価値を再発見,再認識し,内外にその魅力を発信するとともに,未来に引き継いでいこうという市民的気運の醸成を図るため,市民が残したい“京都をつなぐ無形文化遺産”制度を創設し,その実施に関し必要な事項を定める。

 まあ、ちょっと分かりにくいです(笑)

 そして選ばれる対象は、

第2条 選定遺産の対象は,世代を越えて継承されている無形文化遺産等京都に特徴的な文化遺産で,市民が大切に引き継いでいきたいと思うものとする。

 となっています。
 まぁ、「市民が大切に引き継いでいきたいと思うもの」が対象という、かなりユルーい感じですね。
 たぶん、“お上”が決める文化財ではなくて、“みんな”で選んでいきましょうという、現代的なスタンスともいえます。

  祇園祭くじ改め
  祇園祭 くじ改め(左は門川市長)

 この制度の分かりやすい説明は、導入前の昨年(2013年)2月5日の門川大作市長の記者会見でのコメントです。
 少し長いですが、引用してみましょう。

 [25年度予算で重点をおきたい]2点目が、京都市独自の無形文化遺産制度の創設であります。
 例えば、京都では、「五山の送り火」は市の、「六斎念仏」は国の無形民俗文化財になっております。しかし、「京都市民にとって、最も大切な無形文化遺産は地蔵盆ではないか。」という声もあります。あるいは花街の伝統的な行事や「京料理」もすばらしい無形文化遺産です。

 しかし、これらは現在の国の文化財保護制度のもとで、文化財に指定・登録するためには非常に難しい問題があります。例えば、一つは、固定的な保護団体がない。「地蔵盆」と言いますと、町内会であったり、マンションの自治会であったり、様々な団体が継承しています。あるいは、概念がきちっと固定化されていない。時代と共に変化していきます。ただ、この変化も非常にいいことであります。不易流行。変えるべきは変える、変えないところは変えない。こうした市民の知恵で守られてまいりました。
 
 こうした時代と共に変容しながらも、世代を超えて京都に伝わる、市民の生活の中に伝わる身近な文化を守る京都市独自の制度を創設していく必要があると考えます。

 時あたかも和食のユネスコ無形文化遺産への登録が審査される年であります。日本の食文化を象徴する「京料理」、これをまず一番に、同時に「地蔵盆」や「花街の文化」、これらを取り上げていきたいと思っています。
 また、幅広く市民の方々から、「これを残したい。」、「これを残さなければ、京都が京都でなくなっていく。」、こうしたことも提案をいただきながら、同時に将来的には、そうしたことも国の制度として保存するよう、国への政策提言も行っていきたいと思っています。


 要約すると、

 1 現在の国の文化財保護制度では守れない<無形文化財>について、京都市独自の制度を作って守っていく。
 2 その<無形文化財>は、時代とともに変化しているが、それは文化を守っていく「市民の知恵」である。
 3 このような世代を超え、市民の中に伝わる身近な文化を守っていく制度を作る。
 4 その例として、「京料理」「地蔵盆」「花街の文化」などがあげられる。
 5 市民からも提案を受けて選んでいきたい。
 6 将来的には、国にも新たな制度導入の提言を行いたい。

 ということになります。
 個人的には、第2の点がおもしろいと思います。形を変えずに(墨守して)継承していくのではなく、時代に合わせて変容しながら守っていくというスタイルを肯定している点です。ここに着目したところは大いに評価すべきだし、建築の分野で普及した登録有形文化財(国の制度)と似た雰囲気を感じます。
 

 「京・花街の文化」が無形文化遺産・第2号!

  都をどりポスター

 選定の第1号は、2013年10月、「京の食文化-大切にしたい心、受け継ぎたい知恵と味」でした。
 そして第2号は、「京・花街の文化-いまも息づく伝統伎芸とおもてなし」。
 いわゆる五花街と島原が対象となります。

 少し注意しておきたいのは、「花街の文化」は「食文化」や将来選定されるだろう「地蔵盆」とは、ちょっと性格が違うことです。
 「食文化」や「地蔵盆」は、ひろく市民が伝え育ててきた文化です。それは、母が作って来た毎日の料理であったり、子供の頃から楽しみにしていた年中行事のひとつであったりするわけです。
 一方、「花街の文化」は、舞妓さん、芸妓さんといった“プロ”が培ってきた文化です。それを楽しむのも一部の檀那さんたちで、私たち一般人にお茶屋遊びなんてできません。先日取り上げた<文楽>と似通った感じもします。つまり、<伝統芸能>に近い存在で、従来の文化財保護の枠組みで敢えていえば“人間国宝”などに近い領域に感じられます。

 実際、京都市では、これまでも花街文化に補助を行ってきました。ここのところは毎年度、「花街伝統伎芸保存・育成」として、京都伝統伎芸振興財団へ200万円を助成しています。助成の目的は、「花街の伝統芸能の担い手である舞妓・芸妓・地方(ぢかた)等の存立基盤の充実を図る」というものです。
 京都伝統伎芸振興財団は、五花街の合同公演「都の賑い」の開催や、弥栄会館内のギオンコーナーの運営などを行っているほか、温習会など秋の踊りの会への助成や、65歳以上の芸妓に対する奨励金の支給なども行っています。
 最近では、芸妓さんの衣装代を補助する制度を始めるというニュース(3月7日付各紙)がありましたね。

 こんな具合に、花街の文化は、すでに<伝統芸能>化していて、保護の対象となっている印象です。今回の「無形文化遺産」への登録は、その流れに沿ったものといえるでしょう。

  先斗町提灯

 前回の「京の食文化」の場合、おそらく、よくイメージされる一流の料亭や料理人を念頭におきつつも、むしろ「おばんざい」に代表される家庭の味というものが強調されていたと思います。
 今回の「花街の文化」は、ふつうの庶民とは縁のない“一見(いちげん)さんお断り”のイメージが強い花街が対象です。花街文化は、確かに市民にとって誇らしいとは思うけれど、正直言って、食文化や地蔵盆とは異なるという違和感もあるのではないでしょうか?
 「市民の中に伝わる身近な文化」とは、ちょっとズレる感じがします。

 けれども、よく考えてみると、このたびの選定は、そういった“一見さんお断り”の花街文化を、市民へ、そして国内外の人々(観光客など)へ広く“開放”するという意味が込められているとも受け取れます。
 おそらく新年度からは、舞踊をはじめとする花街の伎芸を普及する事業(誰でも気軽に参加できる舞踊会、花街文化を考えるシンポジウム、舞妓さん芸妓さんとのふれあい行事など)が行われることでしょう。
 これまで、限られたパトロンに支えられてきた花街の姿が変わっていくことにもつながります。これを是とするか否とするか、なかなか難しい問題だとは思いますが、「都をどり」や「鴨川をどり」などに加えて、舞妓さん、芸妓さんの芸にふれる機会が増えることは、うれしいことです。
 注目して見守っていきましょう。


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