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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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京都の近代建築を見る視点 - 『モダンシティーKYOTO-建築文化のカタログ都市』 -

京都本






   『モダンシティーKYOTO』


 近代建築“発見”の1980年代

 近年、街角にある<近代建築>を見る楽しみは、広く共有されるようになってきました。また、旅行のひとこまにも建物探訪が組み込まれるのはごく自然ですね。
 私自身も、今週来週は仕事で建物見学です。そんなとき、いつも思うのは、このような<近代建築ウォッチング>の歩みなのです。

 私が学生だった1980年代、このような“趣味”?は、ぼちぼち始まっていたと思います。

 1970年代に、全国の建築史研究者らが津々浦々に散在する近代建築について悉皆調査を行いました。その成果は、日本建築学会が編纂した『日本近代建築総覧』として刊行されました。昭和55年(1980)のことです。
 また、鹿島出版会から、地域別の『近代建築ガイドブック』シリーズが出版され始め、その関西編は昭和59年(1984)に出されています。
 さらに、建築を見る楽しさを普及したのが、建築史学者の藤森照信氏でした。藤森氏は、同好の士である堀勇良氏らとともに東京の近代建築を探訪、その過程を『建築探偵の冒険・東京編』として昭和61年(1986)に刊行されました。この書は大きな反響を呼んで間もなく文庫化され、藤森氏の名前と“建築探偵”という愛称は瞬く間に広まったのです。
 これらはすべて、1980年代の出来事で、この国で近代建築というものが“発見”された瞬間でした。


 関西、そして京都の近代建築を探る

 大学院生になった私は、折にふれて街角の近代建築を見るようになっていきました。
 そのとき、ガイドブックとして常に携行していたのが、上記の『近代建築ガイドブック 関西編』でした。この本は、今から見ると「間違い」も散見されるし、写真も余り綺麗ではないけれど、当時の関西の研究者らが熱意をもってまとめた案内書で、たいへん重要な本でした。なにしろ、近代建築を見る際のガイドブックは、これ以外になかったのですから。

 そんな中で、一般には余り知られていないと思われるのですが、京都の近代建築に特化した案内書が刊行されました。それが、平成元年(1989)に出た『モダンシティーKYOTO-建築文化のカタログ都市-』です。編者は、京都建築倶楽部となっています。

 タイトルに「モダンシティー」と入っていますが、この言葉から私が連想するのは、海野弘氏の『モダン・シティふたたび 1920年代の大阪へ』です。昭和62年(1987)に大阪の創元社から発行されたものですが、もとは産経新聞の夕刊に連載されたものです。
 この連載は、私も読んでいたのですが、取り上げている対象は大阪の近代建築で、そこに海野氏らしい文化史的な視点を織り込み、古書渉猟を交えつつ、現地探訪して書かれています。
 『モダン・シティふたたび』は、今もって近代建築探訪の絶品であり、建築史研究者が書いたものではない建築史的な書物として、ぜひ読まれるべき一書です。
 『モダンシティーKYOTO』は、その書名におそらく影響されているのではないかなと、漠然と想像するのです。


 4つの分類

 編者は京都建築倶楽部となっていますが、実のところは、建築史家の山形政昭、石田潤一郎、中川理の3氏が執筆されています。当時、最も年配の山形先生が40歳ですから、みなさんお若い。今では関西を代表する研究者です。

 この本の視点は、序章「京都のもう一つの読み方」にしっかりと書かれています。
 京都=古都という見方は脇に置いて、「奇跡的に残っ」た「各種の時代様式の建築」を玩味しようというのです。

 そこで述べられる大事な点は、「京都におけるその近代建築の最も大きな特徴は、バリエーションが圧倒的に豊富なことである」という点。
 さらに、「[京都は]他都市と比較して贅を尽くした建築が多いのである。近年の日本建築学会の近代洋風建築の調査を見ると、残っている洋風建築の中でレンガ造の割合が一番多いのが京都であることがわかる。明治・大正期の建築では、大雑把にいって、工場などを除けば木造よりレンガ造の方が格上であるから、この調査結果をもってしても、京都の建築に格式の高いものが多いということが窺える」

 なるほど。確かに、京都に残っている近代建築は意外に多様だし、煉瓦造が目立ち、重文指定されているものも多いですね。

 そして、これらの建築の楽しみ方を4つに分けて見てみよう、というのです。

 1つめは、様式建築の魅力をめぐって。建築の模範は、古くギリシア・ローマ建築にさかのぼりますが、オーダー(列柱の構成ですね)に見られるような建築の“文法”にしっかり則った建築群があります。これが様式建築(古典主義建築)で、重厚な銀行などはこの代表です。
 具体的には、片山東熊の京都国立博物館、辰野金吾の日銀京都支店(現・京都文化博物館)、松室重光の京都府庁舎などです。

 2つめは、モダン・デザインをめぐって。20世紀になって、様式建築から自由になろうとする動きが建築界でも出てきます。その代表が分離派(ゼツェッション、セセッション)。たとえば、オーダーの頭の部分(柱頭)にはイオニア式とかコリント式といったパターンがありますが、その有機的な意匠を幾何学的にデザイン化してしまうのです。また、扉や窓の枠に取り付けられているペディメント(三角形の破風)を幾何学的にしたり、用いなかったりします。こういう、無機的なスッキリしたデザインが分離派の特徴。
 他にも、表現派やインターナショナルスタイルも、ここに入ってきます。
 武田五一の京都府立図書館、本野精吾の西陣織物館(現・京都市考古資料館)、岩本禄の西陣電話局などがあります。

 3つめは、大衆的なB級デザインの建物。つまり、文法的でもなく、反文法的でもない、いわば非文法の建物ですね。街中の商業建築などによく見られます。
 七条通の富士ラビットスクーター、船岡温泉、大原楽園(焼失)などが、この例です。

 4つめは、ポストモダンの建築。主に1980年代に一世を風靡した建築群で、本書の同時代の建物ということになります。これは、いうなれば脱文法の建築。特に京都では、高松伸や若林幸広に注目が集まりました。これらが最終章で紹介されています。

 この4分類は、なかなか明快ですね。2010年代になると、第4分類(ポストモダン)の退潮と取り壊しがみられますが、京都の近代建築めぐりには役立つ視点です。

 本書に見られる実例については、近いうちに改めて紹介することにしましょう。

 なお、本書は現在品切れのようなので、図書館等でご覧ください。




 書 名  『モダンシティーKYOTO-建築文化のカタログ都市-』
 編 者  京都建築倶楽部(石田潤一郎、中川理、山形政昭)
 出版社  淡交社
 刊行年  1989年


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