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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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古書店めぐりも愉しい冬の京都





寺町通の古書店(大書堂)


 本屋の街、京都

 本が好きで、学生の頃は週に何度も本屋さんに行って種々買い込み、書物の中で古今東西に伸びていく世界に接して心を躍らせていました。あの当時、インターネットはなかったけれど、知の世界は際限なく広がっていたのでした。
 私に限らず、いつの時代も、多くの人たちが書物によって知的好奇心を満たし、拡大していました。京都は、そんな書物の世界の中心地として聳え立っていたのです。

 京都には、古書や新刊書を扱う本屋さんがたくさんあって、その理由に大学の街だからというのがあります。間違ってはいないのですが、大学の歴史は150年程度なのですから、起源は別のはずです。

 書店誕生前の歴史にさかのぼってみると、かつて本を作ってきたのは寺院でした。例えば、京都では、臨済宗寺院が経典をはじめとする仏書や、儒書、医書などを出版していました(五山版)。
 江戸初期には、橋口侯之介氏によれば、日蓮宗の諸寺(要法寺、本能寺、本圀寺)や浄土宗の誓願寺などが、出版活動を行いました。版木を彫り、刷って、製本するという一連の技術は、寺の外にも移植され、仏書以外の書物の出版につながっていったといいます(『和本入門』)。
 今田洋三氏によると、元禄9年(1696)に刊行された『増益書籍目録大全』には、7,800冊にのぼる書物がリストアップされ、約400名の出版者が記載されているそうです。そして、400名余のうち約90%が京都の人だといいます(『江戸の本屋さん』)。
 中世の五山版の伝統を引き継ぎ、元禄時代になっても出版の中心は京都だったのです。
 また、各々の書物屋にも得意分野があり、「法華書」(日蓮宗関係書)は平楽寺、中野五郎左衛門、一向宗(浄土真宗)は西村九郎右衛門、真言書は前川権兵衛、中野小左衛門、禅書は田原仁左衛門、儒医書は風月などと、『京羽二重』に記されています。


 寺町通に集まる書肆

 寺町通(寺町御池)
  寺町通

 文化11年(1814)の記録によると、京都の本屋は200軒ほどありましたが、その所在地をたずねると、寺町通に33軒、二条通に14軒、三条通に11軒、四条通と烏丸通はそれぞれ7軒などとなっています(『東西書肆街考』)。およそ、北は二条通、東は寺町通、南は四条通、西は烏丸通に囲まれた一角に京都の書店は集中していて、その他、東西の本願寺近辺に所在している程度でした。

 江戸後期に最も書肆が集中していた寺町通には、今でも何軒もの書店があります。
 昭和54年(1979)に岩波新書から出た脇村義太郎『東西書肆街考』56-57ページには、「京都の古書店」という地図が掲載されています。それによると、寺町通には北から、彙文堂、文苑堂、芸林荘書店、尚学堂書店、竹苞楼書店、文栄堂書店、其中堂書店、西村春版画店、北川白州堂、マキムラ書店、大書堂書店、と続き、四条通以南には、冨山房書店、三密堂書店、大観堂書店と続いています。

 大書堂
  寺町通の古書店(大書堂)

 すでになくなったところや移転した店もありますが、多くは現在も店舗を構えておられます。
 最近も何度かぶらぶらしましたが、文苑堂書店(寺町通夷川上ル)は書の古書が充実していて嬉しかったですね。この並びには、古梅園や龍枝堂といった書道具店がありますから、相乗効果がありそうです。
 市役所北側の尚学堂書店も、古い店構えですけれど、意外な古書があって、なかなかおもしろかったりします。
 竹苞書楼は、先日も通りがかったら、外国人の男女が並べられた本をのぞいていました。私は、其中堂に入ったのですが、本を見ていると、その二人がやってきて表の台を物色し始め、どうやら鎌倉仏教の本らしきものを1冊、買い求めていきました。結構、紳士淑女的なお二人でした。

  其中堂
  其中堂(寺町通姉小路下ル)

 其中堂(きちゅうどう)は仏教書専門ですが、向いの文栄堂も同様の品揃えです。私は、其中堂などに入っていると、つくづく京都に生まれた幸せを感じます。仏教書がこんなに充実している書店が何軒もある都市なんて、他にないでしょう。
 先日も、東本願寺前の法蔵館書店に行きましたが、こちらも浄土真宗関係書を中心とした仏教書の専門店(出版社)です。今年で創立400周年! だそうです。「法蔵館ニュース」12月号というのをもらったのですが、2013年の新刊リストが掲載されていました。50冊近く刊行されていて敬意を表しますが、私がとても興味を持った書籍が金子貴昭『近世出版の板木研究』。ちょっと高価なので、まず図書館で見たいと思います。

 河原町界隈の新刊書店は、ここ20、30年ほどの間に軒並みなくなってしまったのですが、寺町、河原町の古書店はみな頑張っておられます。
 学問や文化は、先人が積み上げてきたものを継承していくことが大切です。その意味で、古書店が顕在である京都は優れた文化都市といえるでしょう。

 昔は、書物が都のお土産という時代もありました。ちょっと気分転換して、古書店めぐりを観光に取り入れてみてはどうでしょうか。




 寺町通の古書店

 所在 京都市中京区の寺町通(丸太町通~五条通あたり)
 営業 各店による
 交通 地下鉄「市役所前」ほか



 【参考文献】
 脇村義太郎『東西書肆街』岩波新書(黄87)、1979年
 今田洋三『江戸の本屋さん』NHKブックス、1986年(平凡社ライブラリー所収)
 橋口侯之介『和本入門』平凡社ライブラリー、2011年
 中野三敏『和本のすすめ』岩波新書(赤1336)、2011年


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