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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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きょうの散歩 - 千本釈迦堂の大根だき - 2013.12.8





千本釈迦堂の大根だき

 前回、聖護院大根のことについて書いたので、今日は上京区の千本釈迦堂(大報恩寺)の「大根(だいこ)だき」に行ってきました。
 毎年12月7日、8日に行われます。

 千本釈迦堂の大根だき

 表に着くと、ぷんと大根のいい匂いが漂ってきます。
 まず、1000円で券を買い求めます。

 千本釈迦堂の大根だき 千本釈迦堂の大根だき

 そして列に並びますが、今日は門の外まで……

 千本釈迦堂の大根だき

 千本釈迦堂の大根だき
  本堂から望む

 大根を授与してもらうまで、約20分かかりました。
 テントが張ってあり、そこでいただくことにします。

 千本釈迦堂の大根だき

 お椀の中に、3きれの大根とお揚げ。

 千本釈迦堂の大根だき
 千本釈迦堂の大根だき

 いただくと、これが意外に(失礼)おいしい! あつあつで、食べるのに10分位はかかるのですが、ちょうどいい味付けになっていて、出汁まで全部飲んでしましました(笑)
 揚げは、きつねうどんなどに入っている甘辛いものでしたが、元来は味の付いていないものだったでしょうか。

 そのあと、順序が逆になりましたが、御本尊・釈迦如来坐像の御開帳へ。

 千本釈迦堂の大根だき

 参拝後、ご奉仕の奥さんたちが大根を炊く様子を見学。

 千本釈迦堂の大根だき

 千本釈迦堂の大根だき
  直径1mほどの大鍋で炊く

 大量に提供するので、仕事は手際がよいです。

 この大根が、前回紹介した「聖護院大根」。

 千本釈迦堂の大根だき

 千本釈迦堂の大根だき

 「生大根」として1000円で売られています。
 たぶん、これが最後の2本ですけれども、私が帰る時には売り切れていました。

 千本釈迦堂の大根だき

 クローズアップすると、墨で梵字が書いてあるのが分かります。
 釈迦を意味する種字の「バク」です。後で述べるように、この行事がお釈迦さまに関係あることが示されています。
 
 そして、シールを見ると、久御山の「淀大根」とあります。

 千本釈迦堂の大根だき
 「聖護院大根」のケース

 箱には、JA京都やましろ・東一口(いもあらい)出荷組合とあります。久御山町では、淀大根として、大正末頃から生産されているそうです。

 ということで、たいへんおいしく大根だきを食べて満足、無病息災を祈願したのですが、ちょっとだけ考え事をしてから終わりましょう。

 千本釈迦堂の大根だき 「中風諸病除 大根だき授与」

 この行事が、なぜ12月7日、8日に行われるのでしょうか?
 
 看板にもあるように、12月8日は成道会です。
 「成道」は「成仏得道」のことで、悟りを開くという意味。特にお釈迦さまが悟りを開くことを指し、日本ではその日が12月8日とされています。
 日本では、というのは、お釈迦さまの成道の日は諸説あるからで、例えば南方仏教では5月のこととしており、ウェーサーカ祭と言っています。他にも、2月8日、4月8日など、さまざまです。
 旧暦12月は「臘月(ろうげつ)」と呼びますので、この日をまた「臘八」といい、成道会を「臘八会」とも呼んでいます。
 中国では、この日に「臘八粥(かゆ)」という雑穀や豆類を入れたお粥を食べる習慣があるそうです。仏教的には、宋の時代から仏さまにお粥を供えることが行われ始めたといいます。

 この臘八粥の由来なのですが、お釈迦さまが山中で6年間苦行した後に山を下り、そこで一人の女性から乳粥(牛乳で煮た粥)を供されます。その後、菩提樹の下で瞑想に入ったお釈迦さまは悟りを開かれたのです。中国や日本では12月8日のことと考えられていて、臘八粥はこの故事に因んでいます。
 この女性の名をスジャータといいました。そう、あのコーヒーフレッシュの「スジャータ」は、ここから来ているのですね。

 そんなことから、12月8日は粥を食べる日となりました。ちなみに、仏教系の幼稚園や学校では、牛乳を飲むところもあるそうです。

 ぜんぜん大根が出てきません(笑) 回り道しました。
 私の推測ですが、<成道会=お粥>という慣習が、大根をよく食する一部の地域では<成道会=大根だき>と形を変えて行われているのではないでしょうか?

 年が明けると、1月にも七草粥や小豆粥を食する風習があります。
 また、冬至にカボチャを食べるのも似た習慣ですね。大根もカボチャも中風封じになるのも、おもしろいです。
 厳冬の時期に、からだが温まる粥などを食し、健康を祈念する慣習なのでしょう。大根だきを食べて、ほんとうに温まったものですから、そんなことを考えました。

 と、ここまで書いた後、五来重先生の『宗教歳時記』を見ていると、12月9日、10日に行われる「鳴滝の大根だき」についての考察が記されていました。
 氏は、大根だきを「お火焚き」であると捉えておられます。お火焚き(おひたき)は11月に行われる祭事ですが、鳴滝の大根だきも元々は11月9日に行われていたのではと考えられています。
 なるほど。
 大根が、収穫祭であり祖霊祭である霜月祭の大切な供物である点も、縷々指摘されています。同書には、大根についての興味深い考察も書かれています。

 そうすると、<11月=お火焚き> → <12月=成道会>にスライドしたということになりますね。
 ひとつの行事の解釈も、なかなか難しいです。




 千本釈迦堂(大報恩寺) 大根だき

 12月7日、8日(大根だき授与 1000円)
 所在 京都市上京区今出川七本松上ル溝前町
 交通 市バス「上七軒」下車、徒歩約3分



 【参考文献】
 五来重『宗教歳時記』角川ソフィア文庫、2010年(原著1982年)


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