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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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相国寺の浴室は、排水システムが見られる優れもの





相国寺浴室


 京の禅寺の浴室

 足利義満によって創建され、室町幕府と密接な関係を持ちながら発展した相国寺。
 現在は、往時に比べれば寺地も狭くなり、度重なる火災で伽藍も寂しくなりましたが、重要文化財の法堂は存在感を示しています。春と秋の公開時には、法堂の内部などとあわせて、浴室も拝観できます。

 私は、ウン十年前、よく自転車で相国寺の中を通り抜けていました(失礼)。法堂の西側の道もよく通ったのですが、そこに浴室があったとは、まったく気付きませんでした。おそらく当時は、建物の回りが囲われていて見えなかったのでしょう。近年(2002年)改修されて、その雄姿を現しました。

 その前に、江戸時代の「都名所図会」の相国寺(部分)。

 「都名所図会」より相国寺
  「都名所図会」巻1

 大きなお堂が法堂です(図には「仏殿」とあります)。
 その上の方(西側)に、塀に囲まれた入母屋造の建物が見えます。おそらく、これが浴室です。

 「都名所図会」より相国寺

 江戸中期の絵では、こんな感じでした。

 現状です。

 相国寺浴室
  相国寺浴室(宣明)

 屋根が切妻造なんですが…… まあ、「都名所図会」は絵だし、仕方ないですか。よく見ると、柱間も2間ですしね。2間の建物では扉が付けられないし、そこそこに画いた絵なんでしょう……

 この浴室は、慶長元年(1596)に建てられたものといいます。天明の大火(1788)でも焼け残った堂宇です。
 京都の禅宗寺院の浴室では、重要文化財である東福寺浴室が長禄3年(1459)と古いのですが、ここも結構古いです。
 参考までに、主な浴室を掲げておきましょう。東福寺のもの以外は、江戸時代(17世紀)です。

 東福寺浴室
  東福寺浴室(重文)

 大徳寺浴室
  大徳寺浴室(重文)

 建仁寺浴室
  建仁寺浴室

 妙心寺浴室(明智風呂)
  妙心寺浴室(明智風呂)
 
 ずらっと並べてみました。
 こう見ると、浴室の屋根のスタイルは切妻造だと分かります。最も古い東福寺浴室だけが入母屋造ですが、これも実は(おそらく江戸時代は)切妻造でした。大正時代の写真に、切妻造の姿が写されています。昭和初期の改修で入母屋造に復元されました。
 浴室は、格子窓からも湯気を抜くため、入母屋造だと軒端に湯気がかかって朽ちやすくなるのでしょう。ただ、出入りの便をはかって、妙心寺の明智風呂のように、扉上に庇を付ける場合もあります。東福寺も、庇を持っていました。


 公開時に内部が見られる浴室
 
 相国寺の浴室も、春と秋の特別公開では内部が拝観できます。
 修復時に、内装をかなり復元していますので、風呂の仕組みがよく分かります。

 相国寺浴室

 中に入ると、まず跋陀婆羅(ばっだばら)菩薩がお出迎え。浴室に祀られる仏さまです。禅寺では、庫裏に祀られる韋駄天とともに知られる仏さまです。このお像は新しく造られたようですが、よく見ると、右手に湯を混ぜる櫂を持っていますね。

 内部は、おなじみの光景です。

 相国寺浴室

 相国寺浴室

 唐破風を持つ風呂屋形があり、その中をのぞくと入浴スペース。現在のように湯船に浸かるスタイルではなく、蒸し風呂に加え、ひしゃくで汲んで身体に湯を掛ける程度です。

 背後では、湯を沸かします。

 相国寺浴室

 ひしゃくが置いてある部分が釜。ここで湯を沸かし、左手の樋から流します。

 相国寺浴室

 すると、右の樋から湯が流れ出てくる、という仕組みです。


 排水システムも完備
 
 使って流れた湯は、床に出てきます。
 床の中央には溝があり、そこに向かって傾斜が付いてます。

 相国寺浴室

 この溝(いつもは左半分のように覆い蓋が付いている)へ、湯が流れてきます。
 その湯の行き先は……

 相国寺浴室

 床下に立ててある板を伝って、下へ。

 相国寺浴室

 床下には、こんな石の樋が!
 これで建物外へ流します。

 素晴らしい工夫ですね。


 煙出しの工夫も

 浴室では、ふつう蒸気は屋根から逃がすとともに、前面や側面、背面に格子窓を付けて逃がします。

 相国寺浴室
 
 相国寺浴室にもあるけれど、少し控えめです。
 実は、建物の背後にすごいものがあるのです。

 相国寺浴室
  浴室背面

 相国寺浴室
  煙出し

 上部に漆喰の煙出しがあります。
 これは、屋根が湯気で朽ちない工夫でしょう。驚かされます。

 浴室については、妙心寺の明智風呂について書いた記事もご覧ください。 こちら! ⇒ <妙心寺の浴室は「明智風呂」> 

 禅寺の浴室は、いろいろ工夫が見られて興味が尽きない存在です。
 各寺院とも、折にふれて公開されますので、ぜひ拝観してみてください。




 相国寺 浴室(京都府指定有形文化財)

 所在 京都市上京区相国寺門前町
 拝観 境内自由 浴室は特別拝観時のみ(開山堂、法堂とも大人800円ほか)
 交通 地下鉄「今出川」下車、徒歩約5分



 【参考文献】
 「都名所図会」1780年
 芳賀幸四郎ほか『京の禅寺』淡交社、1960年


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