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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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京都府立総合資料館は、2013年11月、開館50周年を迎えた





京都府立総合資料館


 30年間の記憶が詰まった資料館

 地下鉄・北山駅のすぐ上にある京都府立総合資料館。
 地図で見ると、京都府立植物園の北東角の位置にあり、南には京都コンサートホールや京都府立大学があります。

 京都府立総合資料館
  京都府立総合資料館

 私にとっては、この総合資料館は懐かしく、愛着のある特別の施設です。なんといっても、30年余りも利用しているのですから。
 おそらく最初は、友人に誘われて、1階の北東隅にある自習室を使い始めたのだと思います。受験浪人時代、下鴨の予備校に通っていた私は、自宅と予備校の間にあった総合資料館を仲間とよく利用していたのでした。

 京都府立総合資料館
  自習室

 あの、そっけのない大机と粗末な椅子。まわりは、若者も大人も自習している人ばかり。その雰囲気を余り好きになれませんでした(笑) でも、友達と一緒にちょくちょく通っていたのです。

 無事に大学合格してからは、上階にある閲覧室を利用し始めました。

 京都府立総合資料館
  3階ホール

 写真奥が閲覧室。
 その手前、この廊下状のホールの左右と右側の張出し部に、ずらっとカードボックスが並んでいました。私はいつも、片手にノートとシャープペンシルを持って、延々とカードを繰っていたのです。
 どの図書館でも、昔の思い出で最も色濃く残っているのはカードボックスの記憶です。大学図書館のメインカウンター前に並べられていた木製のカードボックス、大阪府立中之島図書館の円い階段室の壁際に設えられていたカードボックス。地方の図書館を訪れても、まず向かうところはカードボックスでした。
 いまでも、勉強するには端末検索を叩くよりカードボックスを繰る方が優れていると思う私ですが、それを備えている図書館は、もうありません。
 
 
 1963年11月に開館

 京都府立総合資料館が開館したのは、昭和38年(1963)11月15日だったそうです。正面玄関にある石製の銘板の裏をのぞくと、その年月日と当時の知事・蜷川虎三氏の名前が記されています。

 2013年は、総合資料館の開館50周年にあたります。秋には、さまざまな記念行事が開催されているのですが、11月28日にバックヤード見学会があったので、参加してきました。職員の方の解説付きで、ふだん入れないスペースも含めて、館の内外を拝見できました。
 どちらかというと地味な催しですが、約20名の参加者があり、いつもながら知的関心の高さがうかがえます。
 配布された資料「総合資料館の建物探訪」も参照しながら、この施設をめぐっていきたいと思います(以下、< >は同資料からの引用です)。

 京都府立総合資料館
  バックヤードツアー

 総合資料館は、北を北山通、東を下鴨中通、南を府立大学、西を植物園に囲まれています。
 開館前、現・資料館の敷地は府立大学農場の北端で、鶏舎などがあったそうです。私の学生時代(1980年代)も、資料館の南にはまだ農場が広がっており、作物が植えられ、牛も飼われていました。
 東の下鴨中通は、深泥池の脇を経て北に通じる鞍馬街道で、これが当時のメインストリート。資料館も、東向きメインで設計されました。
 北山通は整備中で、<当時の資料には十二間道路とも書かれて>いたそうです。
 少し注釈しますと、私の子供の頃も、北山通は「十二間」と通称していました。特に、北山橋より西(堀川通や大宮通のあたり)をそう呼んだのです。おそらく道幅が12間(約22m)だからでしょう。それに対し、今宮通(北大路駅の北側の道路)を「六間」と呼んでいました。これらは市街北郊に新たに開通させた街路なので、このような通称ができたのでしょう。

 上の写真で参加者が集まっているのが、東側の前庭です。この広いスペースには、石が敷かれています。

 京都府立総合資料館
  前庭の敷石

 これは、市電北野線の敷石を転用したものだそうです。
 建物北側も含めて、すべてに市電の敷石を敷く計画だったのですが、数量が不足して、北側はコンクリートになり、東側にも花壇を作ってゴマかした!(失礼)のだそうです。


 建物の構成

 京都府立総合資料館

 建物の設計は富家建築設計事務所(富家宏泰)、施工は清水建設、総工費4億5千万円で、昭和38年(1963)竣工。玄関棟、北棟、南棟、西棟からなっています。
 玄関棟は3階まで吹き抜けで、左右に分かれながら昇って行く階段が印象的です。
 そことつながって、南棟の3階は当初から大閲覧室でした。ここは今も閲覧室のままで、南側に窓を備えた明るい空間です。
 西棟の2階には、昭和63年(1988)まで展示室がありました。北玄関から入ります。

 京都府立総合資料館
  北玄関

 当初は、写真の左側の壁に階段があったそうです。今でも、階上には階段が……

 京都府立総合資料館
  閉鎖され“無用階段”に

 私も、この展示室は見ているはずなのですが、まったく思い出せません。

 北玄関の東側は、現在は休憩室になっています。私の学生の頃も、同じでした。

 京都府立総合資料館
  休憩室

 しかし、開館当初、ここは食堂だったそうです。
 その名も「スナック国際」! インターナショナルなスナック? ではもちろんなくて、京都国際ホテルが入っていた軽食(=スナック)を出す食堂でした。
 <先輩方から聞いたところによると、カレーライス、ハヤシライス、チャーハン、親子丼、本日の定食などがあったようです。定食には、スープ、コーヒーが付いていました>。昭和50年(1975)9月に休業しました。


 定礎には「タイムカプセル」も

 玄関脇の定礎もおもしろそうです。
 <当時の新聞記事によると、定礎(正面玄関の左側に有)には設計図、硬貨(1円、5円、10円、50円)、京都新聞などが埋められ、100年後に開かれることになっていると記されて>いるそうです。 
 タイムカプセル! 
 これまた注釈しますと、定礎石に関係遺物を埋め込むことは欧米にある習慣で、日本でも戦前から行われていましたから、ここだけが珍しいのではありません。
 百円玉がまだなかったところが時代ですね。
 それにしても、百年後まで誰が覚えているのか!! まだ50年、いまから心配です。

 京都府立総合資料館
  南棟の玄関

 南棟の職員用玄関は、ドアを入ってすぐ5段ほどの階段が付いています。
 これは、南棟の1階にも書庫があるため、地面からかさ上げして湿気を防ぐ目的だそうです。

 京都府立総合資料館
  南棟

 総合資料館は、その名の通り、開館当初は展示施設でもあったわけですが、昭和63年(1988)に京都文化博物館がオープンしたため、資料収蔵と展示の機能をそちらへ移譲しました。
 また、平成13年(2001)に府立図書館が増床リニューアルした関係で、総合資料館は京都に関する専門資料館となり、蔵書の約半分が府立図書館へ移されました。このことは、私にとっては不便なところで、同じ分野の図書でも「京都関係」と「京都関係以外」がバラバラに所蔵されるようになったので、2館をハシゴする必要が生じるからです。

 今回はバックヤードを含む館内を見学、説明いただく機会を得て、これまで総合資料館のことを全然知らなかったことを知りました。30年間、まったく無意識に使っていた自分が恥ずかしい。でも、無意識に使わせてくれていたところが、すばらしい。
 昔も今も家から自転車圏内で、私にとって単に「資料館」といえば、京都府立総合資料館。何の変哲もない施設のように見えますが、「ふつう」を続けることが一番むずかしい。府立図書館も新しくなってからしばしば利用しますが、やっぱり総合資料館の3階閲覧室の開放的な空間は優れています。30年前から全く雰囲気が変わっていないし、これからもまだまだ使えそうです。

 ……といいながら、実は総合資料館は、新しい建物にリニューアルされるのです!
 南側の府立大学農場跡に、府大などとの複合施設が建設され、そこに移る予定です。建物の工事は今年始まっていて、引っ越しも時間の問題ですね。

 私自身、「リニューアルする」側も経験しているのですが、「リニューアルされる」側としては、やっぱりせつない。
 「知」にかかわる営みは、単なる利便性、快適性のみに依拠するのではなく、思考環境の安定性を求めます。いまの資料館から新資料館へ、上手な形でリレーを行っていただければと願っています。


  京都府立総合資料館 50年目の秋景



 京都府立総合資料館

 所在 京都市左京区下鴨半木町
 利用 無料(第2水曜日、祝日、年末年始は休み)
 交通 地下鉄「北山」下車、すぐ



 【参考文献】
 「資料館の建物探訪」京都府立総合資料館、2013年

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