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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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寺院の近代建築にスポットをあてた好著 - 『京の近代仏堂』 -

京都本




  『京の近代仏堂』


 公的施設で買える本も、おもしろい

 ふつう、歴史や文化財の本は書店で買うケースがほとんどです。しかし意外にも、公的施設で買えるものも多く、なかなか好著が目白押しです。

 たとえば、京都文化博物館の1階にあるショップ(便利堂)。
 私がかつて、ここで買った本が、『京都府文化財総目録 平成18年度版』(京都府教育委員会)。値段は3,000円でしたが、京都に所在する国、府、市町村の指定文化財を網羅している、たいへん重宝な目録です。
 一般書店には置いていないようで、それまで職場の書庫で見ていたのですが、購入して座右に置くと非常に便利です。

 また、京都市刊行の本をよく買うのが、京都市考古資料館。堀川今出川西入ルにあります。
 展示を見に行ったついでに、本を見ます。
 ここで買えるのが、<京都市文化財ブックス>。もう20数冊出ています。たとえば、第23集『京都の五山寺院』など役立てていますが、今年刊行された第27集が『京の近代仏堂-近代京都の堂宮系和風建築の成立と展開-』です。
 執筆は、京都市文化財保護課の清水一徳氏が当たられています。

 ※京都市文化財ブックスは、京都市役所などでも購入できます。


 古いだけが文化財じゃない

 日本における建築文化財の保護は、「古建築」と呼ぶにふさわしい古代の建築物から始まり、徐々に時代と領域を拡大してきました。1970年代後半には近代建築(主に洋風建築)の全国調査が行われ、1980年代になると近世社寺建築が網羅的に調査研究されました。さらには近代和風建築へと広がり、1996年には「登録有形文化財」が導入されて、近代建築の保護が急速に進みました(もちろん、その裏で破壊も進んだわけですが……)。
 たとえば、登録有形文化財については、『京の国登録文化財』(2011年)などで手軽に見ることができます。
 
 このように、文化財といっても、古代、中世のものだけが優れていて保存に値するわけではなく、近世から近代、そして現代のものまで、価値評価と保護の対象になって久しいのです。

 そんな中で刊行された『京の近代仏堂』は、“お寺の建物といったら、きっと古いんでしょう”という先入観を振り払う好著で、12件の近代寺院建築を紹介しています。

 六角堂
  六角堂


 『京の近代仏堂』の構成

 目次は、次の通りです。

 第1章 近世の継承と昇華
     頂法寺六角堂
     東本願寺御影堂
     佛光寺本堂(阿弥陀堂)
     法輪寺多宝塔
 第2章 復古主義
     正法寺遍照塔
     心城院岸駒堂
     東福寺本堂(法堂)
     天龍寺多宝殿
 第3章 近代的様式の摸索
     鞍馬寺寝殿
     知恩院納骨堂
     日野誕生院
     神護寺金堂
 第4章 近代社寺を支えた大工道具
 主な近代社寺建築の造営事例

 なかなかすごいラインアップです。
 私も、以前この清水氏の記述のウェブ版を参照させていただきながら、正法寺遍照塔(西京区)を紹介させてもらいました。 *記事はこちら ⇒ <亀岡末吉の独自世界は、正法寺「遍照塔」からスタートした>

  正法寺遍照塔
   正法寺遍照塔

 この塔は、近年移築されてお色直ししているのですが、もとは高台寺の境内にあったものです。

 ちなみに、本書に登場する仏堂に携わった建築家や棟梁は、次のような人たちです。

  伊藤平左衛門(東本願寺御影堂)
  市田重郎兵衛(佛光寺本堂)
  三上吉兵衛(法輪寺多宝塔)
  亀岡末吉(正法寺遍照塔)
  阪谷良之進(心城院岸駒堂、知恩院納骨堂)
  天沼俊一(東福寺本堂)
  稲垣啓二(同上)
  岸 熊吉(鞍馬寺寝殿)
  笹川新太郎(日野誕生院)
  安井楢次郎(神護寺金堂)

 本書での紹介事例以外にも、多くの建築を手がけた人たちが取り上げられています。

 巻末の年表形式でまとめられた<造営事例>には、150件近い建築があげられており、たいへんな労作といえます。

 図版も豊富、これで1,500円ですから、ぜひ手許に置いて勉強したい一冊です。



 書 名:『京の近代仏堂-近代京都の堂宮系和風建築の成立と展開-』
     (京都市文化財ブックス第27集)
 著 者:清水一徳
 出版者:京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課
 刊行年:2013年


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