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船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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建築の言葉の海は広大なり (2) -エビ・タコ・カメ -

京都本




海老虹梁


 『日本建築辞彙』の「エビ」

 前回取り上げた中村達太郎『日本建築辞彙』(明治39年=1906年)。

 愉しい建築語彙があふれているので、もう1回見てみましょう。

 この辞書は至って真面目なのですが、読んでいると何かと興味深いのです。例えば、動物の名が付く語彙が結構あります。

 例えば、エビ。

 そこには、「蝦梁(えびばり)」「蝦鎹(えびかすがい)」「蝦束(えびづか)」「蝦の腰(えびのこし)」「蝦虹梁(えびこうりょう)」「蝦錠(えびじょう)」と並んでいます。
 いずれも、エビのように(腰が)曲がった形態の物品を指しているようです。

 このなかで、最も有名な言葉が「蝦虹梁」でしょう。ふつう「海老虹梁」と書きます。

 冒頭の写真のものが海老虹梁です(写真は上善寺地蔵堂)。
 中村博士の語釈は、次のようになっています。

 彎曲[わんきょく]セル虹梁ヲイフ。縋破風[すがるはふ]ノ下方ニアリテ本柱ト向拝柱トノ間ノ位置ニ用ヒル」

 そして、向拝の図を見よと指示しています。その向拝の図。

向拝

 文章では分かりづらいのですが、図を見ると一目瞭然です。

 下の写真は、京丹波町の阿上三所神社の向拝に付けられた海老虹梁です。

 海老虹梁

 時代が下って江戸時代以降の寺社建築に好んで用いられます。
 

 では、「タコ」はいるのか?


 そこで、まったく下世話なのですが、タコが登場するのだろうかと探してみました。

 すると……、文字通りの「蛸」、そして「蛸胴突(たこどうづき)」「蛸突(たこづき)」と3つありました。
 では、「蛸」とはいったい何なのか?

 基礎ヲ突固ムルタメノ道具ナリ。円柱形ノ木ニ二本ノ角ヲ附シ、且[かつ]縄ヲ取付ケ、以テ人足ヲシテ之ヲ上下セシムルナリ。

 とあります。
 その図は、
 
  蛸

 たしかに、時代劇なんかで見たことがあるかも。
 地面を突き固める道具ですね。

 さらに中村博士の曰く、

 人ニヨリ之ヲ「かめ」トモ称ス。

 カメ?

 たしかに、なぜタコかも分からないし、カメかも分かりません。モノの呼び名とは不思議なものです。

 さらに、まだいるタコ。

  逆蛸

 「逆蛸」。“さかだこ”。

 説明です。

 長キ遣形[やりかた]杭ナドヲ打込ム場合ニ、杭頭上方ニアルトキ此種類ノ道具ヲ用フルコトアリ。其形ハ平蛸[ひらだこ]ヲ倒[さか]サニシタルモノニ異ナラズ。其足ハ四本トナスヲ普通トス。依リテ二人ニテ之ヲ使用スルナリ。

 杭の頭が高い所にある場合、これを使って下に引くように打ち込むわけですね。
 この「逆蛸」を見ると、タコの頭に足が付いているようで、「蛸」という名称も何となく理解できる気がします。


 「カメ」はいるのか?

 じゃあ、タコをカメとも呼ぶのなら、カメも掲載されているのでしょうか?
 カメの付く語は、よく知られた「亀腹(かめばら)」や、「亀の尾(かめのお)」「亀の甲流(かめのこながし)」「亀甲当」と並んでいます。

 問題は、最後の「亀甲当」で「かめのこあて」と読みます。

 挽臼[ひきうす]状ノ石ニ縄ヲ巻キツケ、三、四人ノ人足ニテ揚下ケ[あげさげ]シテ、地固ヲナスニ用フルモノ。之ヲ平蛸[ひらたこ]又ハ平亀[ひらかめ]トモイフ。

 そして、図です。

 亀甲当

 これなら、カメと言われても、うなずける形です。
 平たいから「平亀」と言ってもよさそう。
 そして、突き固める道具を「タコ」と呼ぶのだから、平たいタコで「平蛸」。納得ですね。

 やはり、建築の言葉の海は広いです。




 書 名:『日本建築辞彙』
 著 者:中村達太郎
 出版社:丸善
 刊行年:1906年



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