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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【大学の窓】給付型奨学金が、もうすぐ始まる

大学の窓




京都大学


 ひとり月2万円~4万円

 大学時代に借りた奨学金を返せない若者が増えている、という状況をうけて、国は新年度から給付型奨学金、つまり返さなくてもよい奨学金を導入することになりました。

 もちろん、すべての学生に給付されるわけではありません。
 住民税非課税世帯の学生に限られるということで、比較的所得の低い世帯を救済する制度になっています。

 また、そのすべてに給付されるのでもなく、各学年2万人に限定。金額も、国公立か私立か、自宅生か非自宅生かで給付額が異なり、2万円から4万円の幅があります。
 仮に月4万円もらっても、年額48万円ですから国公立大学でさえ学費の全額はまかなえないことになります。


 5割が大学に行く時代だが……

 いま日本の大学進学率は約5割です。
 しかし、60年ほど前の昭和30年(1955)は、約8%にすぎませんでした。
 この半世紀で、飛躍的に進学率が上がりました。

 OECD加盟国の大学進学率の平均は、62%(2010年)。日本よりも10ポイントほど高くなっています。
 世界の中で最も高い国は、オーストラリアで96%。次いでアイスランド93%、ポルトガル89%、ポーランド84%、ニュージーランド80%となっています。スウェーデンやノルウェーは76%、アメリカは74%、イギリスは63%です。
 
 日本も50%を超えて “増えたなぁ” と思ったのですが、国際比較すると、まだまだといったところかも知れません。
 日本では、大学進学と親の収入との間に相関関係があることが知られています。俗っぽく言えば、お金持ちほど子供を大学に進学させやすい、というわけです。
 つまり、大学へ行くには(入学前の段階も含めて)大変お金がかかる、ということなのです。

 ところで、義務教育はもちろん無償なわけで、いまではほぼ100%の人たちが小中学校で学んでいます。
 ところが、戦前、あるいはもっとさかのぼって明治時代などでは、子供を小学校にやることは必ずしも好まれていませんでした。学校に行かすよりも働かせる方がよいと思っていた親が多数いたのです。

 よく知られた話ですが、明治27年(1894)和歌山県に生まれた松下幸之助(パナソニック創業者)は、小学校中退でした。幼くして、大阪に丁稚奉公に出されたのです。松下さんは大変すぐれた経営者なので、自伝などを読むと若い時分から優秀だったと思いますが、必ずしも小学校に行ける家庭状況ではなかったわけです。
 もっとも、松下さんの時代でも就学率は9割を超えています。その一方で、卒業できない児童も数割存在したようで、松下さんもその一人でした。

 また、現在の高校進学率は約95%もありますが、昭和30年(1955)は約5割にすぎませんでした。それが、半世紀の間に100%近くになったのです。


 50%の「ガラスの天井」 

 では、大学もこの先100%の進学率に近付くかというと、そうは考えられていないようです。
 吉川徹氏によると、大学進学率には50%で頭打ちになるという「ガラスの天井」があるそうです。
 なぜ50%で頭打ちになるかというと、「何が主たる原因なのか、いまのところ確定的なことはわかっていません」(『学歴分断社会』)。

 私は正直言って “頭打ちになるのかぁ” という、残念な感想です。
 ちょこっとですが大学教育にかかわっている一人として、やはり大学で教育を受けることには意義があると思っています。だから、できれば多くの高校生が大学に進んでほしいと願っているのです。

 かつて、大学レジャーランド論さえ唱えられましたが、やはり4年間「知的トレーニング」することは意味があると信じたい。だから、できれば大学でさまざまな専門分野に触れ、その知識を学び、学問的なものの見方や考え方を身につけてほしい--そう思うのでした。

 ただ、それをスムーズに行うために、少なくとも本人や家庭の経済的な負担は軽減してあげたい。できれば、社会がその面倒をみる、つまり公的に負担していく方向にしたい、と考えるのです。
 けれども、その際、<半分の人は大学に行って利益を得るのに、半分の人は大学進学せず直接利益を得ない>というのでは、不公平感が増しそう(もちろん間接的には利益を受けると思うのですが)。それを解消するため、大学進学率を7割、8割へとアップしていければ……と思うわけです。

 現在、公立の図書館は無料で利用できます。図書館法でそう定められているからです。国民が等しく本に接して教養をつけることは無料でできる--ここには国民的なコンセンサスがあるわけです。
 ついでに言えば、博物館も本来は無料で利用できるべきというのが、博物館法の精神です。有料のところが多いのは、やむを得ない事情(つまり財政事情)から徴収しているわけです。

 これと同じ考え方で、誰もが大学等で高等教育を受けられる社会を作れないものでしょうか。

 というと、結局は財政の問題だよねぇ、という話になりそうです。
 ん~、無理なんでしょうか、大学進学率の上昇は。
 ムズカシイ問題ですね。




 【参考文献】
 吉川徹『学歴分断社会』ちくま新書、2009年
 本田由紀『教育の職業的意義』ちくま新書、2009年


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