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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【大学の窓】新学期に提案する2冊の本

大学の窓




キャンパス


 提示してきた「歴史書」

 非常勤講師で行っている上京大学(仮称)の授業も、先週から始まりました。
 今年も、65名の学生たちが日本史コースに入って来て、私たちと1年間、学ぶことになります。

 毎年、2回目の授業では、教員の自己紹介とともに、学生に読んでもらう歴史研究書をリストアップしています(主に文庫、新書による)。この研究書などのことを授業では「歴史書」と呼んでいます。
 5人の教員が1人2冊ずつ、計10冊が推薦され、それをもとに授業で討論したり、レポートを書いたりします。

 私が従来取り上げてきた書物は、例えば、今和次郎『考現学入門』、木下直之『美術という見世物』、田中優子『江戸の想像力』、前田愛『都市空間のなかの文学』といったもの。
 これを見て分かるように、やっぱり私は歴史研究の世界では “アウトサイダー” なんですね(笑)

 どれも、歴史学ではないわけです。
 今和次郎(こん・わじろう)は民俗学だし、木下さんは美術史だし、田中さんや前田さんは国文学だし……。 そのうえ、それらのジャンルの中でも、ちょっとはみ出し気味の方々です(失礼)。
 それをあえて選んで、1回生=初学者に薦めるとは、やはりどうかしているのでしょうか?


 今年の2冊は?

 これらの本は、数年間、変えないことも多かったのです。
 でも、今年は2冊とも変えます。

 1冊目。

 『苦海浄土』 石牟礼道子『苦海浄土』(講談社文庫)

 石牟礼(いしむれ)道子『苦海浄土(くがいじょうど)』。
 水俣病について書いた文学です。

 これはもちろん、研究書ではありません。
 お読みいただくと分かるのですが、体裁はルポルタージュ、聞き書きのようになっています。でも、これがほんとうにルポルタージュなのか、聞き書きなのか、それすら定かに分からない、そのような問い掛けさえ退けてしまう--そんな作品世界がひろがっています。

 著者自身の言葉で言えば、「白状すればこの作品は、誰よりも自分自身に語り聞かせる、浄瑠璃のごときもの、である」ということです。
 この作品は、ひとつの「物語」なのですが、物語と歴史はどう違うのか、どう同じなのか。事実とは何で、真実とはどのようなものなのか。そして、それらはどのような表現、文体によって書かれるのか。
 「歴史」をめぐるさまざまな問題を『苦海浄土』から考えることができます。

 2冊目。

 『超芸術トマソン』 赤瀬川原平『超芸術トマソン』
                      (ちくま文庫)

 赤瀬川原平『超芸術トマソン』。
 我ながら脈略がないですね……

 この本は、私が大学生の頃(1985年)出版されたもので、当時は大判でした。
 タイトルの「トマソン」は、プロ野球・読売巨人軍にいた助っ人外国人選手の名前。大リーグから招いたものの三振の山を築くだけの無用の長物。
 そんなトマソンと同じような、街角にある無用の存在に気付き、超芸術「トマソン」というカテゴリーを発見した著者たちの報告集です。

 記念すべきトマソン第1号として報告されたのは「純粋階段」。
 ただ上って下りるだけの階段が、この世の中に存在したのです。

 当時読んで、いまでも記憶している衝撃的名称の物件は「高田のババ・トライアングル」!
 口では説明できないので、ぜひご一読ください。

 『超芸術トマソン』には、新しい学問、あるいは研究領域が誕生する瞬間が、興奮冷めやらぬ文体で綴られています。
 学問って初めから出来上がっているものなんだ、と思い込んでいる学生たちに、ぜひ読んでみてもらいたいと思います。
 
 あわてて付け加えると、これがなぜ歴史書かと言えば、うつろいゆく都市と止まることのない人間の営みが生み出したアダ花が「トマソン」だからなのです。すなわち、都市の歴史がトマソンを生み出すのだ、と(無理やり)。
 
 蛇足ながら付言すると、「トマソン」は、著者の前歴、すなわちハイレッドセンターなどの前衛芸術活動から自ずと生み出され、その後「路上観察」につながっていく領域と言え、また並行して存在した藤森照信らの「建築探偵」の活動(=近代建築の発見)に刺激を与えたとも言えるでしょう。

 ということで。
 今年は、この2冊を薦めてみましょう。
 歴史書というには余りに変化球な本ですが、あくまでアウトサイダー的なオススメということで、ご勘弁ください。


 【お知らせ】
 まいまい京都で、5月1日に「東寺」ツアーを開催します。
 内容は、以前一度行ったものと同じです。
 詳しくは、<まいまい京都>のウェブサイトをご覧ください。



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