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PROFILE

船越幹央

Author:船越幹央
博物館で学芸員をしています。また、京都市内の大学で非常勤講師を務めています。
生れ育った京都の魅力を歴史・文化財・史跡を中心にお伝えします!
やっぱり、京都は奥深い。知れば知るほど、味わい深い。このブログを読んで、京都を歩いてみてください!

[主な取材等]
テレビ:NHK「ブラタモリ~京都~」、BS朝日「京都ぶらり歴史探訪」、BS-TBS「高島礼子・日本の古都」、BS日テレ「片岡愛之助の解明!歴史捜査」ほか
新聞・雑誌:小学館「サライ」、朝日新聞、日本経済新聞ほか
見学会:「まいまい京都」ほか

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【新聞から】鎮守の森の喪失から考える、伝統的なものを支える社会のあり方とは?





木立とマンション


 世界遺産周辺の景観規制強化へ
 京都市、最大61地域対象
 京都 2015年5月21日付


 最近、京都で話題になっていることのひとつに、下鴨神社のマンション建設計画があります。
 左京区にある下鴨神社(賀茂御祖神社)。その境内にひろがる社叢・糺の森(ただすのもり)の南方に、マンションを建設するという計画です。間近に迫った式年遷宮のための資金捻出が理由です。

 これまでの報道によると、式年遷宮には約30億円の経費が必要で、国の補助8億円に加えて寄付を募ってきたものの目標額に達せず、50年の定期借地権を設定して分譲マンションを建設させ、資金を調達しようというものです。敷地は、神社南端の約9,600㎡で、地上3階建8棟(約100戸)を建設。2015年11月着工、2017年2月竣工の予定です。
 神社は年間8,000万円を得るということですので、50年では40億円になる計算です。単純に考えれば、今回の式年遷宮はもちろん、次回(21年後)の遷宮費用も賄える勘定になるでしょう。

 ところが、下鴨神社は世界遺産で、建設地はそれに隣接するバッファゾーン(緩衝地帯)に当たるため、その当否が議論となっています。

 下鴨神社
  下鴨神社

 京都市内では、それ以前にも、京都御所に隣接する梨木神社(上京区)のマンション建設が問題になりました。本殿や拝殿などの修復費捻出が目的です。
 市議会でも取沙汰されましたが(後述)、現在、工事は進行中で、まもなく竣工します。「イーグルコート京都御所東 梨木の杜」というマンション(30戸余り)です。
 こちらも、60年間の定期借地権が設定され、梨木神社は地代を得ることになっています。気になって計算してみると、年間800~900万円程度になるようです。戸数が少ないので、下鴨神社よりはかなり少額です。

 梨木神社
  梨木神社(工事前の様子)

 梨木神社は、御所に沿って南北に長い境内を持っています。その南端に写真の一の鳥居があります。
 マンションは、この鳥居の内側に建てられます。つまり、一の鳥居と二の鳥居の間の参道だったところ(実際には駐車場化していましたが)にマンションが出来るわけです。
 マンションのウェブサイトを見ると、「京の憧憬、御所東の地に かつてない邸宅を。」「緑深き神聖なる領域、鎮守の杜に棲む。」「他に類を見ない、御苑に隣接した立地。」と、御所の脇にあることや、神社の境内にあることが強調されています。
 販売が進められており、2015年6月から入居も始まる予定だそうです。

 このような状況を踏まえて、冒頭の京都新聞の記事になります。
 京都市では、世界遺産に隣接するバッファゾーン(緩衝地帯)を含んだ景観規制を強化する方針を固めたそうです。
 2017年度を目途に、条例制定も含めて検討し、建物の高さやデザインの規制、森林の保全などを図ります。
 世界遺産のバッファゾーンに加え、京都御所や伏見稲荷周辺にも及ぶ模様です。

 バッファゾーンの開発については、すでに醍醐寺や慈照寺(銀閣寺)周辺でも問題になってきました。
 梨木神社のマンション建設については、2013年10月2日に京都市議会で、中止を含めて事業者と協議するよう市に求める決議案が可決されています。与野党の多数が賛成して緊急決議されたわけですが、法的拘束力はないため、結果的にはマンションは建てられました。
 2017年というと2年後なのですが、市によって規制化が薦められることになるわけです。
 
 もともと神社は、拝観料を取るでもなく、墓地経営もありません。そのため、私の学生の頃(30年ほど前)でも、鎮守の森を伐採して駐車場にする(している)ところがありました。月々の収入を得るためです。
 しかし、社殿の造替や修理は、ふつう億単位のお金がかかります。国や地方自治体の補助もありますが、神社自身も経費を工面しなければなりません。市内では、社殿が著しく痛んでも修復の目途が立たないところも見受けられます。
 中京区の由緒ある神社では、痛みの激しい京都市指定の本殿などを修復する計画ですが、総額3億円ほどが必要といいます。寄付などで所有者負担分を賄う必要がありますが、景気がよいとは言えない今日、簡単な金額ではないでしょう。

 神社が人々の信仰的紐帯の要であった時代、修復や造替の費用は氏子たちが負担したり、場合によっては時の為政者が拠出してきました。
 今日では、その社殿などは「文化財」として、市民や国民の財産となったわけですが、所有者の負担はいまだ莫大なものがあります。
 鎮守の森は伐らず、マンションや駐車場は建設しない方がよい、と考える方がほとんどでしょう。けれども、神社とてカスミを喰って生きていくわけにはいきません。社会として、どのように支援していくのか、新たな援助の形を考えるべきときに来ています。


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